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ウェッブ・スタイリストの生活と意見[21]
OISR-Watch2000年11月20日号

野村一夫


■健康文化を内破する!

 実りの秋と思いきや、そろそろ冬支度の季節です。今回は私の周辺における「秋の実り」をご紹介したいと思います。

 10月末に現代医療文化研究会の研究合宿を東京でおこないました。この研究会は科研費の研究プロジェクトですが、その前から民間の研究助成を二つ受けてきました。もともとは1995年にインターネットで知り合った人類学者とのメール交換から始まったものですが、徐々に規模を拡大して現在は6人編成になっています。

 10月にこれまでの研究成果をまとめた『健康論の誘惑』(文化書房博文社)が刊行されまして、今回はその反省会とパブリシティがひとつの課題です。うち一日は当研究所に集まっていただいて、この本を中心に座談会をしました。この座談会は「健康文化を内破する!――医療社会学の最前線」として、ビーケーワンの社会学棚(愛称bk1/socs)で連載を開始したところです。

 この座談会の前に当研究所コレクションの見学会をしましたが、戦前の保健衛生にかかわる原資料がポスターをはじめとしてけっこうあることを再認識しました。たとえば産業福利協会のポスターです。おそらく協調会関連の資料だと思いますが、このあたりについては、これまであまり研究されていないようですね。ただし大原所蔵の避妊具コレクション(?)についてはすでに立派な研究書があります。うむうむ、ヘルス・プロモーションとは露骨なモンですねえ。

 また、もうひとつの本が昨日、出来(しゅったい)しました。佐藤純一編『文化現象としての癒し――民間医療の現在』(メディカ出版)です。これは『健康論の誘惑』執筆者の3人をふくんだ5人の共著です。私以外は医療社会学で有名な研究者ばかりです。新参の私はもちろん人一倍呻吟しながら暗中模索状態で書きました。このあたり、ほとんど前例となる研究がないんですね。私のは「メディア仕掛けの民間医療――プロポリス言説圏の知識社会学」という100枚ぐらいの論文です。こんなものを書いてしまったので、そのうちプロポリス評論家としてデビューするかもしれません。(^^)まあ、私の(あてにならない)予想では、数年以内にクロレラかプロポリスの副作用被害が社会問題化します。そのときにお役に立てるでしょう。

 プライベート・サイトの「ソキウス」(http://socius.org)では、大原デジタルライブラリーの下支えをしていただいているリブロ電子工房と共同で「リブラリア・プロジェクト」を始めました。これは著者自身による電子復刻支援システムです。私自身、インターネットのコンテンツについていろいろ発言してきましたが、結局インターネット上にはもっとも大事なコンテンツが欠けていて、それが大きな問題だと考えます。欠けているのは、市販されている著作です。もちろん現役の著作は版元に迷惑をかけるにしても、品切れで放置された著作とか絶版書は、どんどんネットワーク上に公開してもいいでしょう。それができるのは著作権者の著者自身しかなく、あとは著者に具体的なツールを提供支援すればいいのです。もちろん経費は著者自身が負担します。これが私なりの具体的構想です。くわしくはhttp://www.libraria.orgをご覧ください。

 こういうふうに書きますと「たんなる商売じゃないか」と感想を持たれるかもしれませんね。かつて、メジャーレーベルに移籍しコマーシャルソングを歌った吉田拓郎を非難して石を投げた聴衆たちがいましたが、それと同じ反応が未だにあります。経営的基盤がなければ持続可能な運動は成立しないというのが最近の私の持論で、手弁当はむしろ害悪であるとさえ考えています。まずは労働のインセンティブを構築することですね。

 ところで、このコラムでもご紹介したことのある柳瀬正夢生誕百年を記念した展覧会がおこなわれています。当研究所からも雑誌を2点出展しています。愛媛・福岡ときて、あとは宮城での開催が残っていますので、お近くの方はどうぞご覧ください。
宮城美術館(http://www.pref.miyagi.jp/syougaku/Art.htm)

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