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社会・労働関係サイト探検(11)
OISR-Watch2000年3月13日号

二村 一夫


海外の学会サイト

                   
                               

 ご承知の方も多いと思いますが、私はここ3年余り社会政策学会のサイト http://oisr.org/sssp/ を担当してきました。

 社会科学関係の学会のサイトのなかでは比較的早く発足したこともあり、わ りあい内容豊富だと自画自賛しているのですが、皆さまからご覧になっていか がでしょうか?

 昨年3月までは大原社研のサイトも担当していましたから、学会の方は手を 抜いていたというわけでもありませんが、実際上あまり時間がとれませんでし た。とくにリンク集は、研究所の「社会・労働関係リンク集」と競合するの で、学会関係者中心のごく小規模なものにとどめていました。しかし研究所サ イト、とくに「社会・労働関係リンク集」が私の手を離れたこともあって、最 近になって「社会政策学会リンク集」に力をいれ始めました。

 そこで、今回の探検は「社会政策学会リンク集」の材料集めを兼ねて海外の 学会サイトを見て回り、「学会サイト」はどのような活動をしているのか、何 かヒントを得たいと思っています。実は、前号の「社会・労働関係の国際会議 情報」も、それを基にして社会政策学会のサイト内に「内外関連学会大会・研 究会情報」欄を設けました。ここでは海外だけでなく、国内の学会大会や研究 会などについても、随時新しい情報を追加しています。URLはつぎの通りです ので、ご参照いただければ幸いです。

http://oisr.org/sssp/sssplinks2.html

 また、本稿では国内の学会サイトについてはまったくふれず、海外の学会サ イトについてもあまり多くの事例はあげていません。これについては、つぎの 社会政策学会リンク集をご参照ください。

http://oisr.org/sssp/sssplinksbroad.html

 まず全般的な印象から言うと、学会サイトは研究機関のサイトにくらべ、内 容量は少なく、更新頻度もそれほど多くないなど、かなり見劣りするものが多 いように思います。学会の場合、日常的にメンテナンスする人がいないのが普 通でしょうから、当然と言えば当然です。また、事務局の交代にともないURL の変更もほかのサイトより頻繁です。そのこともあってか、学会サイトにある リンク集は繋がらない場合が少なくありません。

 しかしアメリカの巨大学会、たとえばアメリカ社会学会やアメリカ政治学 会、アメリカ歴史学会のような会員数1万数千人といった大組織になると、そ のサイトはかなり充実しています。もっとも、これらの組織は日本の人文社会 科学系の学会とは違って、専門職団体的性格を兼ね備えているからでもありま す。

 それらすべてについて探検する余裕はないので、今回はつぎの2学会を見る ことにします。

 アメリカ社会学会(The American Sociological Association=ASA) http://www.asanet.org/
 アメリカ政治学会(American Political Science Association=APSA) http://www.apsanet.org/

 私の独断と偏見で両者を評価すればもうこれは文句なしにASAに軍配をあげ ます。

 それというのも、APSAは、どことなく企業サイトと似た印象があるのです。つ まり、あえていえば「無意味な画像」を多く用い、見栄えを重視しているので す。これに対し、ASAはテキスト中心、内容中心で、とても分かりやすく、使 いやすく出来ているのです。

 両学会とも、会員数は1万3000人台の大学会で、会費は収入に比例した累進 制をとっていますから、財政的にも豊かなのでしょう。どちらも、ホームペー ジはおそらく専任スタッフによって維持されていると思われます。ASAを評価 するのは、まず第1にオンライン機能が充実しているからです。ニューズレ ターをはじめ、入会申し込み、出版物の購入、大会への参加登録などが、いず れもオンラインで使えます。このほかにも会員限定のページがあり、そこでは もっといろいろなサービスが提供されているようです。

 ASAはつぎの41部会すべてが、独自で、あるいはASAサイトの一部としてホー ムページを設け、いずれもかなり豊富な内容をもっているようです。

Aging and the Life Course
Alcohol and Drugs
Asia and Asian America
Collective Behavior and Social Movements
Community and Urban Sociology
Comparative and Historical Sociology
Computers, Sociology and
Consumers, Commodities and Consumption
Crime, Law, and Deviance
Economic Sociology
Environment and Technology
Family
History of Sociology
International Migration
Latino/a Sociology
Marxist Sociology
Mathematical Sociology
Medical Sociology
Methodology
Organizations, Occupations, and Work
Peace, War, and Social Conflict
Political Sociology
Political Economy of the World Systems
Race, Gender, and Class
Racial and Ethnic Minorities
Rational Choice
Science, Knowledge, and Technology
Sex and Gender
Social Psychology
Sociological Practice
Sociology of Children
Sociology of Culture
Sociology of Education
Sociology of Emotions
Sociology of Law
Sociology of Mental Health
Sociology of Population
Sociology of Religion
Sociology of Sexualities
Theory
Undergraduate Education

 またASAのホームページで注目されるのは、サイト全体の構成です。会員向 け、学生向け、一般訪問者向けと、それぞれ異なった訪問者を予想し、それの 応じた情報を提供するようにしているのです。  さきほど、専門職団体的性格と言いましたが、両学会とも、研究助成金や求 人情報、さらには団体保険や提携カード、さらには提携レンタカーなど会員に 対する特典benefitsを宣伝しているのです。

 もちろん、海外の学会でもそれほど大規模ではないものは、ホームページも 日本の学会のサイトとそれほど大きな違いはないように見えます。学会の自己 紹介、規約、入会案内、会合予告、機関誌の目次や刊行物案内などといったと ころが主な内容です。

 そうした中で注目されるのはアメリカ労働経済学会が運営している
Labor and Population Economics Internet Seminarです。
http://128.100.177.36/sole.html

 これは休暇期間を除き隔週1回特定のpaperを掲載し、これに参加者がコメ ントを加え、著者はそのコメントにリプライするというもので、インターネッ トを利用した学術交流の手段として注目されます。現在討論の対象となってい るのは、トロント大学のGillian Hamilton と Aloysius Siowの "Class,Gender and Marriage" です。

 3月20日からはシカゴ大学の Victor Aguirregabiria と マドリードのカル ロス三世大学のCesar Alonso-Borregoの"Labor Contracts and Flexibility:Evidence from a Labor Market Reform in Spain" が、4月3日からは、カナダのサイモンフレーザー大学のBrian Krauthの "Social interactions, thresholds,and unemployment in neighborhoods"が討論の対象となることが予告されており、これらのpaperは すでに読むことができます。ご覧のとおり、アメリカだけでなく世界各国から paperが投稿されています。

 なお、このサイトでは、これまで掲載されたpaperの要旨を読み、PDFファイ ルでのフルテキストをダウンロードすることができ、ます。参考までにこの1 年間に掲載されたペーパーのタイトルを掲げておきましょう。なお順序は掲載 日時の逆順です。なお、この企てが始まったのは1998年の4月からです。

2000年

Feb 21: Promotion Tournament
Feb 7: Uncertainty and Labor Contract Durations
Jan 24: More on Marriage, Fertility, and the Distribution of Income
Jan 10: Earnings Growth among Young Less-Educated Business Owners


1999年

Nov 22: Role of Student Race and Ethnicity in Higher Education Admissions Since 1972
Nov 8: Inbreeding in Law School Hiring: Assessing the Performance of
Faculty Hired from Within
Oct 25: The Effect of Coauthorship on the Productivity of Academic economists
Oct 11: Education, Work, and Crime: Theory and Evidence
September 27: Unemployment as a Social Norm: Psychological Evidence from Panel Data
September 13: Piece Rates, Fixed Wages and Incentives: Evidence from a Field Experiment
May 3: The Rybczynski Theorem, Factor-Price Equalization and Immigration: Evidence from US states
April 19: The Roles of Education, Skill and Parental Income in Determining Wages
April 5: Marriage and Fertiliy in a Catholic Society: 18th century Quebec
March 22: Beyond Becker: Training in Imperfect Labor Markets
March 8: Wages, Experience and Seniority
February 22: Affirmative Action Programs and the Job Search
Outcomes of Men and Women: Actual and Perceived Effects

 なお3月10日現在、掲載されているpaperへのコメントはまだひとつもありま せん。ですから、いつでも活発に論議が展開されているというわけではないよ うです。しかし、インターネットの双方向性を利用した学会サイトのオンライ ンジャーナルのあり方の一例として参考になると思いました。

                    

(にむら かずお・名誉研究員)

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