OISR.ORG へようこそ 法政大学大原社会問題研究所

アメリカ便り番外編(その5)−「旅」の総括(後編:ホテル)
OISR-Watch2001年4月23日号

五十嵐 仁


旅と宿

 少し間隔が開いて、気の抜けたビールのようになってしまいました。味は今ひとつかもしれませんが、一応、完結させるということで後編を書きました。今回は、ホテルについてです。

 旅に宿は付き物です。旅の半分前後は、宿にいます。どれくらいの料金で、どのような宿に泊まり、どのようなサービスを受けるかによって、旅の印象はガラリと変わってしまいます。

 料金の安い宿でサービスが悪くても納得できます。高い宿でよいサービスを受けても、当然だと思います。安い料金でよいサービスであれば感激し、高い料金でサービスが悪ければ、ガッカリします。

 また、泊まる場所がどのような所に位置しているかによって、行動範囲がかなり変わってきます。駅の近くか、街の中心部か、自分が行こうとしている場所の近くか遠くか、という問題も重要でしょう。したがって、事前のホテルの選定は大切です。

 このホテル選びの状況と実際の施設やサービスはどうだったのか。今回の私の「ニューイングランド一人旅」で、検証してみましょう。皆さんのこれからの旅の参考にしていただければ幸いです。

私のホテル選び

 今回の私のホテル選びは、基本的に旅行社にお願いしました。旅行社は、ボストン・インターナショナル・トラベルという、日系の旅行社です。ここを知ったのは、偶然に過ぎません。こちらでたまたま目にした日本字新聞に宣伝が出ていたからです。

 ポイントはまず料金、次に場所です。料金は90〜100ドル位。場所はアムトラックの駅の近くか、街の中心部に近いところ。アムトラック駅からも街の中心部からも遠い、たとえば空港の近くのホテルなどは対象外です。

このホテル選びは、旅行社に完全にまかせたわけではありません。最終的には、一緒に探しました。パソコンでホテルの場所や条件を検索するとき、私は横にいて、料金の面で良さそうなホテルについて場所などを質問します。良く分からないとき、担当者はその場から電話して聞いてくれました。これで大体の場所の見当が付きました。

 料金の面でも、結果的には予定よりも安くなり、満足のいくものでした。偶然にも、最初のデトロイトのホテルが99ドル、次のクリーブランドのホテルが89ドルで、順にこの値段が繰り返されるという形になりました。以下に、ホテルの名前と電話番号、値段の一覧を掲げておきましょう。

 Best Western Detroit Downtown(313ー887-7000)    $99 ○
 Residence Inn Cleaveland Downtown(216-443-9043) $89 ◎
 Hampton Inns Pittsburg(412-681-1000) $99 ○
 Wyndham City Center Hotel(202-775-0800) $89
 Best Western Center City Hotel(215-568-8300) $99
 Comfort Inns Midtown(212-221-2600)         $89 ○

 最後の三つは場所が入っていませんが、ワシントン、フィラデルフィア、ニューヨークの順です。Best Westernが二つはいっていますが、全くの偶然で、結果的にそうなっただけです。最後の印は、○印が朝食付き、◎印が朝食だけでなく「夜食」も付いた所です。無印は、宿泊だけです。

素晴らしかったクリーブランドのホテル

 先に掲げた一覧を見ると、一目でどこが一番良かったかが分かります。値段の割にサービスが良く、部屋もダントツだったのは、クリーブランドのResidence Inn Cleaveland Downtownでした。ここは、季候の良い頃に長期滞在で泊まりたいようなホテルです。このホテルについて、本編のHPで私は次のように書きました。

 「この部屋は良い。すごく良い。ここに住んでも良いくらいです。アメリカのホテルを見直しました。今までのホテルで、こんな部屋に泊まったことはありません。我が生涯、最高の部屋だと言っても良いでしょう。

 広さは20畳もあるでしょうか。まず、入ったところに、立派な事務机と椅子があり、仕事ができるようになっています。今、この椅子と机でこれを書いていますが、座り心地は今ひとつです。

 その前には4人くらいは座れるコーナー型のソファーがあります。ソファーの前にテーブルがあり、その上に飴の入ったガラスの入れ物が置かれています。日本の旅館のようなサービスです。

 入って直ぐ右には、二人用のテーブルと椅子があります。テーブルの上にはお皿やコップ、コーヒーカップ、ワイングラスにナプキン、ナイフやフォーク、スプーンなどが用意されていて、直ぐにも食事ができるようになっています。塩や胡椒まであります。

 そして、その前が何と、キッチンです。大きな冷蔵庫があります。中には、何もありません。これが残念です。でも、製氷器と水入れがあります。

 キッチンにはガス台2つにオーブンが付いています。コーヒーメーカーもあって、挽いたコーヒー豆もあります。これは嬉しいですね。煎れたてが飲めます。そして今、その煎れたてを飲んでいます。

 暖炉まであります。とは言っても薪ではありません。ガスの火が点いていて、タイマーのスイッチで大きくすることができます。暖房は別に調節できるようになっていて、設定温度と現在の室温が、摂氏と華氏で示されています。

 ベッドはキング・サイズ(いわゆるダブルベッド)で、テレビの横には観葉植物の鉢植えが置かれています。窓は二つもあります。クロークも、大きいのと小さいのと二つあります。」

 まあ、「すごい」の一言につきます。しかも料金は89ドル。この他、朝には地元の新聞が入り、帰るときにはホテルの車で送ってくれました。朝食も、ここが一番豪華で、かゆい所に手が届くような完璧なサービスでした。

他のホテルの寸評

 他のホテルは、それほど大きな違いがありません。一カ所だけ、バスタブがなく、シャワーだけというところがありました。ニューヨクのComfort Inns Midtownです。でも、簡単な朝食が付きました。

 それに、ニューヨクのブロードウェーの近くで、89ドルですから、一概に「悪い」とはいえないでしょう。100ドル以下で中心部に泊まれたことだけで、良しとしなければならないかもしれません。

 大きな違いはありませんでしたが、細かなところでは、かなりの違いがあります。たとえば、朝食が付いたり、付かなかったりとか……。同じ値段でもこのような違いはありますし、値段が高いからといって朝食付きだというわけでもありません。この辺はバラバラですので、気になる方は、予約するときに確認した方がよいでしょう。

 バラバラといえば、お風呂のお湯の入れ方、つまり湯船の蛇口が全て違っていたのには驚きました。6つのホテルが別々の方式だったわけです。栓を右にひねるもの、左にひねるもの、引くもの、押すもの、上に上げるもの、下に降ろすものでしたか。もう記憶は定かではありませんが、ホテルに着いてお風呂に入るたびに、どうやったらお湯が出るのか分からず、悪戦苦闘しました。

 おまけに、同じ、「Best Western」の名を冠したホテルでも、デトロイトとフィラデルフィアでは、共通しているのは名前だけで、設備やサービスにはほとんど共通性はありません。メモ用紙やボールペン、洗面所の水道の蛇口まで違います。アメリカの多様性を評価してはいますが、この辺まできますと、私などには理解できなくなります。同じホテル・グループなのであれば、どうして同じにしないのでしょうか。メモ用紙やボールペンなどは共通企画にして大量生産し、各ホテルに配った方がコストが安くなると思うのですが……。

「観光立国」の提唱

 私は以前、サンクスギヴィング・デイの休みを使用した「プロビンスタウンへの旅」の経験を下に、「五十嵐仁のアメリカ便り」11月25日付で「私的日米比較観光論」を試みました。そこでは、観光地として整備されている点や街路の美しさ、住居の分かりやすさなどをアメリカの良さとして評価しました。今回の私の旅でも、この点は確認できたと思います。

 各地には立派な美術館や博物館がありますし、入場料はそれほど高くありません。ワシントンなどは、ほとんど無料でした。フィラデルフィアでは、アメリカ建国に関わる歴史的な建造物がきちんと保存されていました。タクシーの運転手がホテルを知らなくても、住所を書いたカードを渡せば、間違いなく送ってくれました。これらは、アメリカの旅の良さです。

 しかし、他方でやはり、前回と同様の不満を感じました。たとえば、自家用車中心に組み立てられているアクセスの不便さ、冷え切った体を十分に温められない小さなバスタブ、いちいちホテルから出て夕食に出かけなければならない不便さ、日本旅館などの超豪華な夕食とは比較にならないつましい食事、部屋に入っても靴を脱いでくつろげないという不満などは、今回の旅でも強く感じた問題点です。

 「総合点でいえば、やはり日本の勝ちということになるでしょう。これはつまり、観光地における施設と接客のシステムにおいて、日本の方が優れているということを意味しています」という、先の「私的日米比較観光論」の結論を変更する必要はないように思いました。したがって、次のような私の主張は、今回の「ニューイングランド一人旅」でも裏付けられたように思います。

 「これまで、日本の『観光資源』として言及されるのは、豊かな四季と自然であり、独特の歴史と文化でした。しかし、それと同様に、いやそれ以上に、観光地における日本的な施設と接客システムもまた、大きな『観光資源』なのではないでしょうか。

 日本は、観光におけるハードウェアだけでなく、ソフトウェアにおいても世界の人々を引きつけることのできる『資源』を持っており、『観光立国』を目指すことができるのではないか。これが、今回のささやかな体験を通じての私の発見でした。

 それは、あまりにも『私好みのバイアス』に満ちたものかもしれません。しかし、外国の人にも受けると思いますよ、畳の部屋に温泉や綺麗で美味しい料理は……。」

結論

 最近の日本旅館やホテルの伝統的な接客システムは、若い人にはあまり好まれないと聞いています。不況の中で集客に頭を悩ませている旅館の中には、今までのやり方を改める動きもあるようです。

 しかし、それによって日本旅館の良さまで失ってもらっては困ります。若い人に媚びる必要はありません。私などのような、中高年者や外国人を相手にすれば良いと思います。きっと、これからの高齢社会、国際化時代の中で、日本の旅館システムの良さを見直す人が増えていくにちがいありません。

 日本旅館には、「観光立国」を目指して奮闘してもらいたい。アメリカのホテルも、日本の旅館やホテルの接客システムを学んで、もっと宿泊客のくつろげる場になってもらいたい(せめて、部屋にはスリッパをおいて欲しい)。これが、今回の旅の教訓であり、結論です。

   since 2000.4.18  

OISR-Watch Columns(Table of Contents)  

法政大学大原社会問題研究所(http://oisr.org)