OISR.ORG へようこそ 法政大学大原社会問題研究所

企業別組合はインターネット上でもっと積極的に発信すべき
OISR-Watch2000年12月30日号

鈴木玲


 最近、企業別組合の機能・役割について問題提起をしている新聞記事を見かける。例えば、『朝日新聞』2000年10月17日朝刊「4人の乱 大手バス労組をなぜ飛び出したか」、12月12日朝刊「労組は役に立っているか(上)相次ぐ不祥事チェック不在」、12月13日「労組は役に立っているか(下)過労死・減員 社員守れず」などである。これらの記事は、企業別組合が雇用や労働条件の悪化に対する規制力が弱く、また企業不祥事に対する「チェック機能の欠如」を指摘している。また、ほとんどの企業別組合が、過労死した社員の家族が起こした労災認定裁判を支援せず、中立的または傍観的立場をとっているとしている。これらの記事から、全ての企業別組合について一般化することが出来ない。しかし、90年代の「平成不況」(一部の産業では80年代半ばのプラザ合意以降の円高不況)以降の厳しい経済的状況のなかで、企業と運命共同体的立場に立って、企業合理化で労使協調を強めている企業別組合が多くなっているという印象を個人的に受ける。

 もちろん、企業別組合の役員からの「反論」もある。雪印乳業労組の委員長は、「会社の言いなり」ではないかという批判に対して、「『外には見えないだろうが、会社にはけっこうキツイことも言っている」と反論する(朝日、12月12日朝刊)。また、『週刊労働ニュース』2001年1月の「座談会 企業別組合は機能しているか」は、新日鉄、トヨタなどの大企業労組の役員が労使協議の現状について議論しているが、基本的に企業へのチェック機能は形骸化していないという主張をする。例えば、新日鉄労連書記長は、労使協議で合理化・人員削減の条件を「ぎりぎりまで詰めて」いると主張する。しかし、このような交渉は外には見えづらいため、「組合執行部から距離がある人ほど、組合は会社が提案することをそのまま呑んでいるだけじゃないか」と見てしまう傾向にあると指摘している。すなわち、企業別組合が日常どのように機能しているのか「外から見えにくい」ために、一般組合員や世間一般は組合が「企業のいいなり」になっているという「誤解」をしているというのが「反論」の要旨である。

 私は、もし世間一般から「誤解」を受けているというのなら、企業別組合はインタ−ネット上で、リストラや合理化についての立場や、組合員の利益を守るためにどのような努力をしているのかを、企業利益を損ねない範囲で、積極的に発信すべきではないかと考える。OISR.ORGの社会・労働関係リンク集で、民間大企業の企業別組合をみると、自動車、造船、電機、商業・サービス業などの産業の企業別組合のサイトにリンクされている。これらのサイトのなかには、内容が充実したものもあるが、公式見解の列挙やパンフレットのWEB版の域を出ていないものも多い。

 また、独自のサイトを持つ民間大企業の企業別組合の数もそれほど多くない。例えば、鉄鋼産業については、産業別組織の鉄鋼労連だけでなく、傘下の大企業組合(新日鉄、日本鋼管、住友金属など)のサイトは設置されていない。また、電機産業をみると、産業別組織の電機連合は充実したサイトを持っているものの、日立、東芝、富士通、日電など大手傘下組合のサイトは設置されていない(ソニーや松下のサイトはある)。IT産業の組合がWEBサイトを持たないのは、いかがなものだろうか。また、今年不祥事でメディアの注目をあびた企業の組合も、サイトを設置していない。

 大企業の組合は外部から見ることができない「イントラ・ネット」持っていて、外部に開いたインターネット・サイトは必要ないという方針をとっているのかもしれない。しかし、企業別組合は企業に「こもって」しまって良いのだろうか。どんな組織形態をとるにしても、労働組合は国家や企業から独立した市民社会の構成をする一組織(アソシエーション)であり、公共的側面を(少なくとも建前上は)持っている。また、これらの企業別組合の上部団体である連合も、企業中心主義を克服して、企業外の社会運動との連携の必要性を強調している。不況とリストラが続き企業別組合の役割が問われているなか、企業別組合はインターネットを通じてもっとその機能を積極的に世間一般に「主張」し、その過程で組合リーダーと組合員の関係や組合の市民社会での位置・役割を再構築・再評価することを望みたい。

   since 1999.7.24  

OISR-Watch Columns(Table of Contents)  次のページへ

法政大学大原社会問題研究所(http://oisr.org)