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「紙の弾丸」から「電子の弾丸」へ
OISR-Watch2000年11月20日号

鈴木玲


 

先日、ある大手鉄鋼会社製鉄所の3人の元労働者とインタビューした。彼らは、労使協 調的執行部に反対した「左派少数派」の活動家で、賃金や昇進差別を受けながら、自分達 の主張を曲げずに労働運動に関わった人達である。彼らは、組合執行部に対する批判を、 工場の門前で配るビラによって一般組合員に伝えた。60年代末には、10日に1回ビラを1万 部ぐらい配布したそうである。しかし、活動家が企業の圧力で脱落し、少数派の人数が減 少したため、財政的に苦しくなっていった。70年代前半までのビラは、印刷所で作成した ものだったが、それ以降はガリ版刷りになった。また、80年代初めには、近郊の農村で野 菜を買いそれを製鉄所のある町で売ることで、ビラの費用をまかなったそうである。しか し、労働者の車での通勤が増加して、ビラを手渡しできなくなったので、80年代半ばにビ ラをまくのを止めたそうである。

私がこの話しを聞いて思ったのは、彼らが活動した時代にインターネットがあれば、彼 らの主張を伝えるのにそれほど苦労しなかったのではないかということである。紙のビラ を工場の門前で配らなくても、少額の費用でWEBサイトを設置して、そこで組合執行部の 批判などの主張を広く伝えることができたはずなのである。野菜を売る苦労をしなくても よかったはずなのである。

OISR.ORGの社会・労働関係リンク集のなかにも、労働組合の少数派のWEBサイトがいく つかある。しかも、組合本体がWEBサイトを持っていないのに、組合内部の少数派がサイ トを持っている場合がほとんどである。また、コミュニティ・ユニオン、管理職ユニオン、 女性ユニオンの多くがWEBサイトを持っている。これらの組合は、企業を超えた組織を持 つが、まだ小規模のため財政は潤沢ではない。このような、組合内少数派や新たな組織形 態の組合がインターネットを活用して、「紙の弾丸」であるビラのかわりに「電子の弾丸」 であるWEBサイトによって、主張を伝えられる時代になったのである。もちろん、WEBサイ トを設置したことで、主張が広く伝わり労働運動が変わる保証はないが、少なくともビラ を作成して配るより主張の伝達方法は効率的である。

今回のインタビューで、インターネットが社会・労働運動が動員できる重要な「資源」 の1つであることを実感した。

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