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日本労働年鑑 特集版 太平洋戦争下の労働運動
The Labour Year Book of Japan special ed.

第六編 朝鮮民族独立運動

第一章 一九一〇〜二○年代における反日独立運動の概略


一九一〇年代の独立運動
 日本帝国主義の植民地統冶下の朝鮮には、いわゆる「武断政治」の憲兵・警察制度が布かれ、学校教師・官吏・役員をとわず腰に帯剣する暴圧統治のもとで、朝鮮人民は反日・排日感情を累積していた。ロシアにおける十月大社会主義革命の成功は、耐えがたい民族的抑圧と収奪、横領に呻吟していた朝鮮人民にかぎりない勇気と民族独立運動の決起を鼓舞した。一方アメリカのウィルソン大統領は植民地民族に影響力を与え植民地再分割のための外交政策を有利に展開し発言力を強めるため、「民族自決」を提唱した。朝鮮においても民族主義者たちはこれに共鳴し、民族独立運動に加担する契機となった。この二つの社会的潮流が合流し、一九一九年三月一日を期して独立闘争が全国的にもえあがり、数ヵ月にわたって闘争の火はもえつづけた。しかし日本帝国主義の弾圧により七、五〇〇名の虐殺者と一万六〇〇〇名の負傷者、四万七〇〇〇名の被検挙者などの多大な犠牲者をだして結局鎮圧されてしまった。だが、日本帝国主義者も朝鮮の統治形態を「武断政治」から「文化政治」へとより巧妙な方法に改正した。

 朝鮮人民の民族独立運動は三・一人民蜂起を契機として民族主義者の影響力の衰退とマルクス・レーニン主義で武装された労働者階級の台頭によって新しい段階へ移行した。

一九二○年代の独立運動
 一階級として形成された労働者は、一九二〇年四月には、労働者相互間の扶助や啓蒙事業を推進する目的で京城に「朝鮮労働共済会」を結成した。

 二一年九月には朝鮮における最初の大規模な労働運動として釜山埠頭労働者をはじめ五〇〇〇余名の労働者が一五%の賃上げ要求を掲げて一五日間にわたる頑強な労働運動を展開した。労働運動も盛んになり二〇年から二二年の三ヵ年間に一六三件の労働争議がおこった。労働運動のかたわら、マルクス・レーニン主義も輸入されはじめ、中国、ソ連、日本などで出版された「共産党宣言」「資本論」「帝国主義論」などが紹介されるようになった。

 一九二二年一〇月には「朝鮮労働共済会」を発展的に解消し、「朝鮮労働連盟会」を「朝鮮労働大会」に改編して労働運動の指導にあたった。農民運動も労働運動と同じく各地で盛んにおこり、小作争議をはじめいろいろな闘争がくりひろげられた。一九二五年四月一七日に労働者階級を代表する朝鮮共産党と高麗共産青年同盟が創建され、民族解放闘争の先頭にたった。しかし日本帝国主義もさっそく五月に悪名高い「治安維持法」を公布して弾圧を加えた。このような弾圧にもかかわらず、二六年六月一〇日京城において数万の愛国人民を結集し「朝鮮独立万才!」「日帝を追出せ!」のスローガンを掲げて示威運動が展開された。二〇〇余名の共産党員が逮捕されるなどの犠牲者をだしたが、独立運動の先頭に共産党がいることが全人民に知れわたり、共産党の影響力を強めた。だが、共産党も利己主義者や個人英雄主義者がふくまれ、「ソウル派」「火曜派」「北風派」「上海派」等の多数の派閥があって、内部の派閥争いが絶えず、主導権を掌握するためには手段を選ばず日帝の官警すらも利用した。こうして四次にわたる大検挙事件をうけて、二八年にはみずから党を解散せねばならなかった。

 労働・農民運動はふたたび盛んに起こり、二九年の大恐慌は労働者、農民の生活を一層窮乏に追い込んだ。二九年一月に元山地方の労働者二〇〇〇余名は「外来資本の搾取を破壊せよ!」などのスローガンを掲げて八二日間にわたる長期闘争をおこない、ヨーロッパ諸国から声援を受けるなど有名なストライキとなった。

 一九二九年一一月光州において日本人学生が朝鮮人女子学生にたいし民族的蔑視から侮辱したことに端を発した反日闘争は半年も続き、それは一九四校から六万名の学生が参加した反日感情爆発の象徴的な闘争であった。

 恐慌下における労働者、農民の闘争はしだいに激化して行く傾向にあり、日本帝国主義は「満洲」を侵略するために朝鮮を安定化しなければならなかった。弾圧も強化され、二九年から三一年の三ヵ年間に「思想犯」の名目で検挙された人は実に一万五〇〇〇名に達した。この中で半数以上は暴動に参加した人たちであった。

 朝鮮の独立運動も朝鮮内で展開するには条件が制限され、困難をきわめた。共産主義者は「満洲」などにのがれなければならず、日本帝国主義のもとでの独立運動も勝利をうるためには武装闘争を展開せねばならなかった。

日本労働年鑑 特集版 太平洋戦争下の労働運動
発行 1965年10月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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