今期の労委命令に関しては、JR関係の不当労働行為救済命令が地労委で多く出されはじめたことを特徴のひとつとすることができる。国労は、全国の各地労委に二〇九件の不当労働行為を申し立てていることから、この傾向は来年度もつづくと予測できよう。
(1)JR東日本新宿車掌区事件(都労委、八八年二月一六日)は、国労組合員への担務変更、および指導助役がおこなった組合員らへの担務変更がありうる旨の発言が、不当労働行為にあたるとした。(4)JR東日本(神奈川・運転士配属)事件(神奈川地労委、八八年一〇月二○日)は、国鉄分割・民営化直前に国鉄当局が国労所属の運転士を運転職場から異職種に配属したことにつき、JR東日本の不当労働行為と判断したが、国鉄・JRの使用者としての同一性を基礎に不当労働行為の判断をしたもので、今後の不当労働行為事件の審査に大きな影響を与えるものとみられる。
同じく(5)JR東日本(横浜・国府津)事件(神奈川地労委、八八年一一月四日)も、国鉄当局のおこなった国労組合員にたいする配属差別に関して、JR東日本の不当労働行為と認定した。 (6)JR西日本(採用拒否)事件(大阪地労委、八八年一一月二八日)は、国鉄分割・民営化に際して、国鉄当局が国労組合員を会社の採用候補者名簿に登載せず、その結果、設立委員がJR西日本の職員に採用しなかったことは、JR西日本による不当労働行為であると判断した。
(7) JR東日本(神奈川・不採用)事件(神奈川地労委、八八年一二月一六日)は、処分歴のある国労組合員五名をJR東日本が、同四名をJR貨物が採用しなかったことにつき、不当労働行為とした。
今期の地労委命令のなかで重要なものとして、JR関係以外では、(1)読売旅行事件(都労委、八八年六月七日)は、専従期間中の賃金保障慣行は経費援助に該当せず、その一方的破棄は不当労働行為にあたると判断した。
(2)日産自動車事件(都労委、八八年一月一二日)は、組合員にたいする住宅資金貸付拒否が組合活動を嫌悪してなされたもので不当労働行為であると判断した。
(3)昭和シェル石油事件(鳥取地労委、八八年五月二五日)は、広島への配転後三年を目途に東京にもどすとの労使合意を無視した、境港市への第二次配転が不当労働行為にあたると判断した。
今期における中労委命令は一四件であり、注目すべきものとして、(1)エッソ石油事件(八八年三月二日)は、コンピュータ機器導入問題に関する団体交渉に関して行き詰まり状態と認めて、会社の交渉態度につき不当労働行為ではないと判断した。
(2)日本シェーリング事件(八八年七月六日)は、会社が組合事務所の移転および業務効率協力条項を八三年各一時金協定締結の前提条件とし、その一括解決に固執して、同一時金協定の締結を困難にし一時金の支給を遅延させたことが、不当労働行為にあたるとした。
(3)ニプロ医工事件(八八年五月二五日)は、八二年度昇給および同年度夏季・年末一時金について支部組合員を低査定したことが不当労働行為とした。そのほか中労委命令として、(5)亮正会高津中央病院(雇い止め)事件(救済、八八年三月二日)、(6)亮正会高津中央病院(一時金)事件(救済、八八年三月二日)、(7)松栄運輸事件(却下、八八年五月二五日)、(8)社会保険診療報酬支払基金(一時金)事件(棄却、八八年七月二○日)、(9)社会保険診療報酬支払基金(昇格)事件(救済、八八年七月二○日)、(10)日本コンクリート工業事件(棄却、八八年八月三日)、(11)相互タクシー事件(救済、八八年九月七日)、(12)清和電器産業事件(救済、八八年一〇月一九日)、(13)富里商事事件(救済、八八年七月二〇日)、(14)文英堂事件(救済、八八年一〇月一九日)(15)新日本技術コンサルタント事件(救済、八八年一一月九日)、(16)JR東日本新宿車掌区事件(救済、八八年一二月七日)などが出されている。
* なお、今期の労働判例・命令に関しては、八九年二月末の時点で入手可能なものによった。したがって、この時点で未登載のものについては割愛している。また、今期の労働判例・命令の全容については、秋田成就監修『八九年版重要労働判例総覧/労働判例別冊増刊号』(産業労働調査所)を参照されたい。とり上げた判例・命令の掲載誌名は省略したが、この点も同書を参照されたい。
【参考資料】 (1)『労働判例』、(2)『労働関係民事裁判例集』、(3)『労働法律旬報』、(4)『労働経済判例速報』、(5)『別冊中央労働時報』日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始