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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第五部 労働・社会政策

III 社会保障政策


5 社会保障財政

 ここでは、一九八八年度厚生省予算の概要と八九年度予算の概算要求を紹介する。なお、消費税の導入等を柱とする税制改革関連六法案は、八八年一二月二四日に成立し、同三〇日に公布された。新しい税制は、八九年四月一日から施行されるが、社会保障制度との関連についても、今後、厳密な詰めがおこなわれることとなろう。

八八年度厚生省予算の概要と特徴

 八八年度予算は、八七年一二月二八日に閣議決定され、八八年一月二五日、国会に提出された。八八年度の厚生省予算額は、一〇兆三二一一億円で前年度に比し二九四六億円(二・九%)の増加となっている。この増加額は一般歳出の増加額の七割強を占め、また厚生省予算の一般会計に占める割合は、過去最高の三一・三%となった。厚生省予算の内訳のうち、生活保護費、社会福祉費、社会保険費などの社会保障関係費が九兆九二二一億円と厚生省予算の九六・一%を占めている。また、失業対策費等を加えた社会保障関係費の全体は、一〇兆三八四五億円で、前年度に比し二九四九億円(二・九%)の増加となっている。

 厚生省によると、八八年度予算の特徴は、(1)長寿社会対策の推進、(2)疾病対策の推進、(3)障害者対策の推進、(4)医療保険制度の安定化、にあるとされている。

 なお、社会手当・年金等に関しては、「児童扶養手当法等の一部を改正する法律」が八八年五月に国会を通過し(昭和六三年五月二四日法律第五六号)、同年四月一日にさかのぼって適用されており、給付額等の改善がおこなわれた。八八年四月分からの改正の概要は、左記のとおりである。

 (1) 児童扶養手当の額の引き上げ……月額三万三九〇〇円を三万四〇〇〇円に。
 (2) 特別児童扶養手当の額の引き上げ……重度障害児月額四万一一〇〇円を四万一三〇〇円に、障害児月額二万七四〇〇円を二万七五〇〇円に。
 (3) 障害児福祉手当の額の引き上げ……月額一万一六五〇円を一万一七〇〇円に。
 (4) 特別障害者手当の額の引き上げ……月額二万九〇〇円を二万九五〇円に。
 (5) 拠出制年金に物価スライドの特別措置……拠出制国民年金、厚生年金等の拠出制年金の額について、特例として昭和六二年暦年の対前年物価上昇率(〇・一%)に応じて八八年四月分から改定。
 (6) 老齢福祉年金の額の引き上げ……月額二万七四〇〇円を二万七五〇〇円に。
 (7) 年金の支払期月の変更……旧国民年金法による障害年金等について、
 八九年二月支払いから、現行の年四回支払いを、二月、四月、六月、八月、一〇月及び一二月の年六回支払いに変更。

 (8) 親子助け合い住宅融資制度を創設……年金福祉事業団の住宅融資制度を拡充し、被保険者の直系血族等の居住の用に供するための住宅を融資の対象とする親子助け合い住宅融資制度を創設。

八九年度予算の概算要求、一〇兆七八一三億円
 厚生省の八九年度概算要求は、一〇兆七八一三億円であり、八八年度予算額と比べると四・五%の伸びとなっている。概算要求にあたっての基本的な視点としては、つぎの三項目をあげることができる。
 (1) 明るいイメージをもった長寿社会を実現するための施策への積極的とりくみ
 (2)高齢者対策と車の両輪をなす児童の健全育成対策の強化
 (3) 厚生行政の分野における国際協力の推進
 これらの柱に沿って、以下の主要項目ごとに、積極的な新規施策を盛り込んだものとなっている。
(a) 明るい長寿社会の実現……「長寿社会開発センター」の整備、
 「痴呆疾患センター」の整備、「ナイトケア事業」の創設、「シルバー一一〇番」の全県実施、高齢者に配慮したコミュニティー・プランなど。
(b) 心豊かな子どもの育成と家庭基盤の充実……「子ども・家庭一一〇番」の創設、保育事業の改善など。
(c) 疾病対策と健康づくりの推進……糖尿病対策、エイズ対策、「ナースバンクセンター」の設置(全国四ヵ所)などのほか、健康増進施策など。
(d) 食生活の安全確保対策……ポスト・ハーベスト処理問題への対策、輸入食品監視体制の強化など。
(e) 清潔で住みよいまちづくり……生活排水クリーン作戦(合併処理浄化槽の普及)の展開、「リサイクル・プラザ事業」の創設など。
(f) 障害者対策の推進……小人数のグループホームづくり(精神薄弱者地域生活援助事業)の創設、重症心身障害児施設および救護施設における通所事業の創設など。
(g) 厚生科学技術の振興・活用……非A非B型肝炎研究に着手するほか、「長寿科学研究センター」の基本計画の策定など。
(h) 国際協力の推進……「国際医療協力センター」の整備、「国際医療協力人材バンク」の設置、WHO拠出金の充実など。

【参考資料】 (1)『昭和六二年版厚生白書』、(2)『厚生』、(3)『健康保険』、(4)『月刊福祉』、(5)『週刊社会保障』、(6)『総合社会保障』

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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