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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第五部 労働・社会政策

I 労働政策


10 勤労者福祉に関する政策

勤労者福祉の重視

 日本の経済大国化の一方で、これが国民生活にいっこうに反映されない状況から、新経済計画でも、豊かさの実現を重点的な課題にあげている。労働政策の分野でもこれに対応し、雇用対策基本計画で「生涯を通じたゆとりある職業生活」を政策目標とし、労働時間短縮とともに勤労者福祉の増進をめざすなどとしている。
 労働省は、八八年一〇月一日より、組織変更して、賃金時間部と、勤労者福祉部を設け積極姿勢を示している。

東京集中と勤労者生活に関する研究
 労働省は、標題の研究を研究会(主査=桑原靖夫・独協大教授)に依頼していたが、その報告が、八八年六月にまとめられた。

 これによれば、雇用者の約四分の一が東京圏に集中し、持ち家取得の困難、通勤時間の増大、生活環境の悪化を生じている。対策としては、「職と住のバランスのとれた豊かさの実現」のための施策として、企業、人材、生活文化の地方分散、東京圏における住宅施策の充実(社宅・賃貸住宅重視、高速交通機関利用、セカンド・ハウス利用)、「ライフ・スタイル、ライフ・ステージに応じた職と住」の多様なあり方などがあるとした。

勤労者財産形成促進法の一部改正
 勤労者財産形成促進法については、つぎの三点を内容とする制度改正がなされた。
 (1) 財形年金貯蓄契約の払い出し制限に関する要件の緩和

 財形年金貯蓄は、元本五〇〇万円(郵便貯金等三五〇万円)までから生ずる利子等が非課税で、この非課税枠の範囲で計画的貯蓄がおこなわれるが、積立期間終了後、年金支給開始日までの間に、予期しない金利の上昇があると貯蓄額が非課税限度を超える可能性があり、以後生じる利子が課税対象となる矛盾がある。

 一方、貯蓄からの払い出しは、年金支払いのほか、かぎられた場合にしか認められていない。そこで金利の変動にともなう一定の理由にもとづく利子等の払い出しを適格なものとするものである。
 (2) 財形住宅貯蓄契約にもとづく貯蓄の用途に、一定の要件を満たす住宅の増改築等を加えること。
 財形住宅貯蓄は、一九八八年四月より発足したばかりの制度であるが、貯蓄の使途は持ち家の取得にかぎられていたものを使途を拡大するものである。

 (3) 財形給付金契約及び財形基金契約にもとづく払い込みの特例両制度は、事業主の拠出金を金融機関等で運用し七年ごとに勤労者に元利合計が給付されるものである。この満期給付金は財形貯蓄等に払い込むことができる。勤労者が中途退職した場合の中途解約給付金は財形貯蓄等に払い込むことはできないこととなっていた。財形貯蓄制度におけると同様、転職の際も継続措置を設けるものである。

中小企業勤労者福祉推進事業

 大企業と中小企業の間には、福利厚生費の格差がいちじるしく、さらに近年拡大気味である。前年度における検討を経て(『日本労働年鑑』第58集四四四ページ)、八八年度より「中小企業勤労者福祉推進事業」が労働省によりおこなわれることとなった。

 その内容をみると、中小企業の勤労者と事業主が共同して、市区町村単位に「中小企業勤労者福祉サービスセンター」を設立する。このセンターは、在職中の生活の安定に係る事業(不時の災害等に重点をおいた共済給付、低利無担保の生活資金融資斡旋)、健康の維持増進に係る事業(講習会、情報提供、スポーツ施設等の割引利用の斡旋、体育大会の実施など)、老後生活の安定に係る事業(生涯設計のための研修会、相談など)、自己啓発等に関する事業(たとえば講座等の割引利用の斡旋)などのサービスを提供し、中小企業事業主と勤労者はセンターに会費を支払う。そして国は、市区町村を介してセンターに運営費の補助を間接におこなうというものである。八八年度は、人口一○万以上の市二〇団体を補助する予算が計上された。

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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