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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第四部 労働組合と政治・.社会運動

I 社会保障闘争


1 国保改定等をめぐるたたかい

 「国民健康保険法の一部を改正する法律」は、八八年二月九日、法案が国会に提出され、五月一八日、参議院で可決・成立。六月一日公布、施行となった。

 この法律は、(1)高額医療市町村が国保事業の運営の安定化に関する計画を策定し、給付費の適正化等の措置をこうずる、(2)低所得者にたいする保険料軽減分について公費で補填する、(3)国と都道府県が助成することにより共同事業の強化・拡充をはかる、というものであった。

 国保にたいする国庫補助率の大幅な引き下げが市町村国保の財政を悪化させ、保険料(税)の引き上げが滞納世帯をふやし、その結果、各地で保険証不交付問題を生じさせているという批判、国庫負担削減のために実施してきた最近の医療保険・医療制度の改悪は、とりわけ低所得層や、老人にきびしく犠牲と負担をしわ寄せしている、という不満が強い。

 今回の国保改定の中心は、「平均医療費」をベースに、これを上回る市町村を「指定市町村」として、都道府県の監督・指導のもとに「安定化計画」を作成させることになっているが、その内容は、医療以外の要因で医療を抑制し、しかも行政がもっている権力にモノをいわせ、きわめて強権的に実施しようとしていることから、社会保障としての国保・医療保障制度に大きな転機をもたらすものであるという危機感が、医療機関や被保険者に高まることになった。このことは、反対闘争に立ち上がった共闘組織にあらわれている。その主要な構成メンバーは、以下のとおりである。

 日本生活協同組合連合会医療部会、全日本民主医療機関連合会、日本医療労働組合連合会、全国保険医療連合会、新日本医師協会、日本患者同盟、障害者の生活と権利を守る会全国連絡協議会、全国生活と健康を守る会連合会、全国商工団体連合会、全日本医学生自治会連合、全国老後保障地域団体連合会、新日本婦人の会。

 法案は二月に国会に提出され、四月一五日に衆議院で可決、ついで五月一八日、参議院で可決・成立したが、その間、「国民のいのちを削る国保法改悪反対」などの各種の抗議・要請の大衆行動が間断なく組織され、短期間に一〇〇万人の請願署名が集められた。なお、衆参両院で自民・民社が法案に賛成、付帯決議は自民・社会・公明・民社が採択した。

 国保法改定とともに医療制度に関して大きな問題となったのは、八五年の「医療法」改定と八七年六月に厚生省医療総合対策本部が発表した「中間報告」を受けて、すべての都道府県が八八年度中に「地域医療計画」を策定する問題である。これは、全国で一五〇万床ある病院のベッド数を一〇〇万床程度に大幅に削減することを軸にして、医療供給制度を縮小・再編する政策への対応であるが、厚生省がガイドラインを示し、上から推進する「計画」と、地域住民や医療機関の要求との間に各地で矛盾が生じている。上からの「計画」は、全国で四○○程度といわれる「医療圏」ごとに、必要病院ベッド数を算出することが主眼になっているのにたいし、地域住民は保健・医療・福祉の総合化された包括的保健医療体制を切実に求めているからである。また、「地域医療計画」は、住民本位、民主性、住民参加、審議の公開性、地方自治の原則によって策定されることを願っているからである。たとえば、「東京の保健・医療を考える会」の運動や、入院ベッドの不足している三多摩地区で立川相互病院の増床による医療内容の充実を要求する地域の住民運動などが、各地で展開されている。

 八八年の医療保険・医療制度をめぐるたたかいは、臨調・行革以降進められてきた医療保険・医療制度の改定をふまえ、八七年六月の「中間報告」、八八年一〇月に厚生省・労働省が連名で発表した「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」や、総務庁・大蔵省が連名で発表した「行政改革の推進について」にもとづき、九〇年度に予定されている医療保険の「一元化」を展望して討議され、とりくまれている。

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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