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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第三部 労働組合の組織と運動

V 労働者福祉運動


4 労働者住宅運動

新設住宅着工、前年にひきつづき高い水準

 一九八八年の新設住宅着工戸数は、一六八万五〇〇〇戸で前年にくらべ〇・六%増となった。その特徴は、(1)前年を超え七二年に次ぐ史上三番目の高水準、(2)六年連続して増加し住宅着工に大きく寄与してきた貸家は、対前年比○・○%以下の微減、(3)利用関係別にみると、分譲住宅が対前年比一八・八%と大きく伸長、(4)新設住宅に占める非木造住宅のシェアが五八・六%と四年連続五〇%を上回り非木造化現象がすすんだ、(5)新設住宅に占める共同住宅のシェアが五九・〇%と過去最高であった前年を上回り、さらに住宅の共同化がすすんだ、などがいえる。

 利用関係別の動向をみると、持ち家は五〇万九〇〇〇戸と三年ぶりに減少(対前年比六・九%減)した。前年に増加を示した民間資金住宅が再び減少(同六・一%減)に転じ、公的資金住宅も三年ぶりに減少(同七・五%減)となった。持ち家の着工動向を三大都市圏とその他の地域に分けてみると、三大都市圏が二四万三〇〇〇戸(同七・三%減)、その他の地域が二六万五〇〇〇戸(同六・五%減)とともに減少した。

 貸家は、八五万九〇〇〇戸と(同○・○%減)と七年ぶりに減少した。地域別にみると、三大都市圈が五六万八〇〇〇戸(同二・九%減)と七年ぶりの減、その他の地域は二九万戸(同六・二%増)と七年連続の増加を示した。

 分譲住宅は、二九万三〇〇〇戸(同一八・八%増)と二年連続の増加、地域別では三大都市圈が一九万五〇〇〇戸(同八・六%増)、その他の地域が九万八〇〇〇戸(同四六・一%増)となっている。公庫資金分譲住宅も一六・五%と四年連続の増加を示した。分譲住宅を戸建と新設マンションに区分してみると、戸建は一二万三〇〇〇戸(同二・九%増)、マンションも一六万八〇〇〇戸(同二五・五%増)と、ともに二年連続の増加となった。分譲住宅全体に占める新設マンションのシェアは、ここ六年五四〜五五%台となっていたが、八八年は五七・二%と伸長した。

 また、居住水準の指標となっている戸当たりの床面積をみると、全体平均では七九・九平方メールと前年より〇・七平方メートル上回り、水準としては六年ぶりに前年水準を上回ることとなった。また、利用関係別にみても、すべてで前年水準を上回った。

 持ち家は一三一・一平方メートルと前年より〇・二平方メートル上回ったが、これは過去最高の平均床面積であり、一四年連続で前年水準を上回ったことになる。
 貸家は四七・一平方メートルと前年水準を二・二平方メートル上回った。

 分譲住宅は八七・四平方メートルで前年より三・一平方メートル拡大した。分譲住宅は八〇年に八三・七平方メートルと最高となったあと、都市部を中心にした狭小なマンションが増加したため、面積の縮小傾向にあったものの、これまでの最高となった。

 八八年の新設住宅は、地価の高騰が潜在需要を顕在化させたこと、金利水準が低位で安定していたこと、住宅税制が優位に措置されていること、勤労者のライフステージ・ライフスタイルの変化にともなう住ニーズヘの積極的対応等により着工戸数を伸長させ、前年にひきつづき高い水準で推移させたものとみられる。

地価高騰、住宅地へ波及
 土地価格の動向を都道府県が実施する「昭和六三年基準地価調査結果」から概観すると、つぎの特徴がみられる。

 (1) 全国の地価上昇率は、全用途平均で七・四%である。用途別にみると、住宅地七・四%、宅地見込地七・〇%、商業地八・〇%、市街化調整区域内宅地六・三%と、ポイントからみれば全般的には落ち着いた動きを示したものの、宅地見込地および市街化調整区域内宅地については、前年上昇率を上回ることとなった。

 (2) 地域別にみると、東京圏は住宅地二四・一%、商業地一五・八%と前年の上昇率を大幅に下回り、前年、東京圏の上昇率が全国平均を引き上げたのとは逆に引き下げた形となった。しかし、いちじるしい地価上昇は大阪圏等へ波及し、大阪圈では住宅地二六・九%、商業地三六・四%、名古屋圏も住宅地一三・〇%、商業地二〇・一%と急激な上昇を示し、地価の上昇が中心商業地から相当広範囲の商業地、住宅地などにおよんでいることを示した。また、三都市圏とも、宅地見込地と市街化調整区域内宅地でいちじるしくポイントが上昇しており、地価の高騰が宅地見込地や市街化調整区域内宅地におよんでいることも示している。
 (3) 都道府県別に住宅地の変動率をみると、埼玉県三三・九%、千葉県三三・〇%、大阪府三〇・九%、愛知県一二・五%、兵庫県一四・一%、京都府一〇・八%、奈良県一二・五%などが顕著な上昇率を示した。

政府、「総合土地対策要綱」を閣議決定
 政府は、土地高騰を中心とする土地・住宅問題について、八八年六月二八日の閣議で、「総合土地対策要綱」を決定した。

 要綱は、(1)土地の所有には利用の責務がともなうこと、(2)土地の利用にあたっては公共の福祉が優先すること、(3)土地の利用は計画的におこなわれるべきこと等の土地対策の基本認識を示し、実施施策として、(1)首都機能、都市・産業機能等の分散、(2)宅地対策等の推進、(3)住宅対策の推進、(4)土地利用計画の広域性・詳細性の確保等、(5)都市基盤施設整備の促進、(6)地価形成の適正化、(7)土地税制の活用、(8)国公有地の利活用等、(9)土地に関するデータの整備、(10)土地行政の総合的調整の推進等の一〇項目をあげている。とくに勤労者住宅について、(2)の宅地対策では、宅地開発の推進として「大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法」等の活用、市街化区域内農地の宅地化推進として土地区画整理事業・農住組合制度等の活用が、また(3)の住宅対策では、大都市圏における良質な住宅の確保を目標とし計画の策定を進める、公的住宅供給の推進として公的主体による住宅供給の推進施策および住ニーズにこたえた公的賃貸住宅の供給の多様化等がのべられている。
 しかし、これらの諸施策は従来指摘されてきたものの集約とはいえ、実施プロセスなど具体策を欠いているため、今後に課題を残しているともいえる。

勤住協・住宅生協など、土地・住宅政策について政府へ要求

 右のような動きにたいし日本勤労者住宅協会(勤住協)・住宅生協等は、「土地は公共財」という理念が住宅・土地政策のなかに十分生かされず、土地が無計画に、環境との調和を無視したまま利用されたり、投資や投機の対象となっている状況ならびに依然勤労者の住環境の向上の需要が強いことにかんがみ、(1)住宅政策を進めていくうえには国民の健康で文化的な生活の確保についての国の保障責任を基礎として、住宅政策の理念、基本的あり方等が明確にされ、その目標達成のために国または地方自治体がこうずべき諸施策を明確にすべきであること、(2)真に豊かな住宅環境を実現するため、地価高騰を再び引きおこさず、総合的で一貫性のある土地政策を推進するために、すべての国民のために有効に利用する、土地の公共的な利用を優先させる立場をとりつつ、国民生活の安定と向上に寄与する立場を明確にさせること、を基本とし、つぎの政策等をすみやかにとるべきことを労働団体とともに政府へ要求した。

 (1) すべての国民にたいし、健康で文化的な生活を営むにたる住宅を保障するため、国の住宅政策の基本目標と、その目標達成のため国・地方自治体がこうずべき施策の骨子を明記した「住宅基本法」を制定すること。

 (2) 国土をすべての国民のために有効に利用するため、土地の公共利用を優先させる原則にたった「土地基本法」を制定すること。

 (3) 首都圏で供給される住宅は、平均的勤労者の五年分の年収で確保できるようにすること。また、都市部、大都市では「公共賃貸住宅優先政策」に転換するとともに、賃貸住宅の家賃は、月収の二○%を上限とすること。

 (4) 第五期住宅建設五ヵ年計画の公共賃貸住宅の建設戸数を大幅に増加するとともに、計画が完全に達成できるよう強力な対策をこうずること。
 (5) 住宅金融公庫の貸出枠の増額、融資条件の大幅改善、住宅ローン減税の拡充など住宅建設促進策を実施すること。

 全住連の活動状況

 全国住宅生活協同組合連合会(全住連)は、地域勤労者の住宅ニーズにそって、公的融資付き分譲住宅の供給拡大をはかりつつ、年金融資、リフォーム、個人住宅の新築受注、宅地分譲、住宅機器販売、住宅等の仲介・賃貸しなど事業の多角化にとりくむ必要があるとし、大要つぎの活動に全力をあげている。

 (1)勤労者のための住宅政策の検討と提言をおこなうため、住宅政策委員会を設置する。
 (2)勤労者の要求である低家賃公営住宅の建設と入居条件緩和の運動を展開する。
 (3)住宅生協の事業を規制している各種の法改正にとりくむ。
 (4)税制・公的融資の条件の改善で勤労者が住宅を取得しやすくする運動をすすめる。
 (5)労福協、労働団体と協力して住宅シンポジウム開催の検討をする。
 (6)勤住協事業の拡充と条件の改善につとめる。

 (7)住宅生協等の経営基盤の強化のために、(1)年金住宅の融資条件改善ととりくみの拡充、(2)隣県生協との共同化の促進、(3)共同購入、共通仕様、規格の統一、COOP住宅、等価交換などの研究開発、(4)需要者ニーズの調査等、(5)組合員拡大キャンペーン、(6)出資金の拡充等の環境整備、(7)事業遂行能力拡充の研修会。
 (8)労働金庫の融資条件改正要請。


 以上のように、社会経済の変化のなかで住宅生協等においても時代の推移を的確に把握し、全力を集中して対応していくこととしている。

多様な住ニーズに対応する勤住協事業

 勤労者の住ニーズは、高度化・多様化してきており、最近では、(1)高齢化社会への対応、夫婦共働きのライフスタイルの進行、また土地の高騰化の影響等もあって、二世帯三世代同居もしくはお互いに近くに住む「隣居・近居」型のライフスタイルのニーズ、(2)仕事のために大都市で生活をしている、さらに転勤のある就業形態であるため定住がむずかしいなどの理由により、将来は土地の価格水準が低く親もいる故郷へもどるというニーズ、(3)仕事のため大都市に生活をするものの、余暇時間のすごし方としては都会の喧噪を離れ田舎でのんびりしたいというニーズなどが顕在化してきている。

 これらのニーズに対応するため、住宅金融公庫は、子が親のために融資を受けられる制度の創設等をおこなってきていたが、勤住協においてもこれらの融資を活用しつつ勤労者が住環境整備ができるよう、首都圏を中心に、親・子が隣居するペア・マンション、高齢者対策の機能等が充実している高規格住宅(公庫特別仕様の高水準の住宅)などを供給している。

 このほか、分譲住宅の供給についても一宅地に二以上の住宅プランから選択する方式の採用、民間事業主体との共同による民間住宅付き宅地分譲事業の実施、地方公共団体の宅地分譲と勤住協の住宅分譲による一括共同分譲の実施が検討されている。

 八八年度の勤住協事業は、住宅金融公庫等の建設資金融資を受けておこなう団地開発手法による住宅供給戸数が二四八八戸(実績見込み)、勤労者の個別に存する住ニーズに対応して一戸ごと建設供給する手法(クローバー事業)による住宅供給戸数が三二二戸(実績見込み)、合計二八一〇戸となっている。

勤住協事業に関する法令改正
 土地・住宅の供給手法を拡大するため、勤住協の事業に関する法令改正が、つぎのとおりおこなわれた。
 (1)日本勤労者住宅協会法施行規則の改正

 従来、勤住協は、「勤労者が自ら居住するための住宅」を供給することとされていたが、さらに、勤労者自らは居住しなくとも「親族が居住するために住宅を必要とする場合」についても、当該勤労者に住宅を譲渡することができることとなった。

 (2)土地区画整理法の改正

 本法は土地価格の高騰にたいし、公的団体による住環境の向上に寄与する良質な宅地の供給を増加させつつ土地価格の低廉化をはかるため、当該事業手法を充実さをたものである。今次改正で、勤住協は、新たに設置された同意施行制度の実施主体として住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等とともに規定された。これにより、勤住協は、地権者から同意を得て土地区画整理事業を個人施行者として実施することができるようになった。

 (3)大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法の創設

 大都市を中心とした土地価格の高騰にたいするため、良好な宅地を供給する宅地開発事業を緊急に促進するため、特別の措置として創設されたものである。大都市においては、一の都府県の区域を越える広範な地域におよぶいちじるしい宅地需要があり、これにこたえることのできる優良宅地開発については、開発規制諸法令の解除手続きの優先的な取り扱い、住宅金融公庫の融資の特例、税制上の優遇措置などがこうじられることを定めたもので、本法に定める認定を受けることのできる事業主体として、勤住協も他の公共団体とともに規定された。

 八八年においては、政府の「土地問題に関する世論調査」(総理府)、また労働団体等においても、連合の「土地・住宅問題についての緊急アンケート」、電機労連の「電機労働者の生活白書」(住宅等に関する調査)、財団法人東京労働者福祉厚生協会の東京労福協等との協力による「首都圏勤労者の住宅需要等に関するアンケート」等が実施されたこと、またその調査内容にみられるように、勤労者・国民の土地・住宅にたいする関心は高く、これらにまとめられている土地・住宅に関する要望を概括すると、勤住協・住宅生協等は、勤労者の住ニーズの変化に対応して多様な事業手法を展開してきているものの、さらに地域社会の特性等にもとづく要請、勤労者個別のライフスタイル等による要請にこたえていく必要があり、労働団体、勤労者との連携を強めて事業展開していかなければならないとしている。

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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