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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第二部 経営労務と労使関係

IV 産業動向と合理化の実態


5 その他の産業

エチレン生産五〇〇万トン―好況つづく石油化学
 八八年の石油化学産業は合成樹脂の需要増大を反映して好況を謳歌しており、五大汎用樹脂の生産量は七六〇万トン、基礎原料であるエチレンの生産量は五〇〇万トン台に達すると予想されている。

 石油化学産業では七九年に四七八万トンのエチレン生産量を記録して以来石油危機後の不況に直面、また過剰生産能力をかかえてきた。この情況を打開すべく八三年六月から八八年六月まで実施された特定産業構造改善臨時措置法(産構法)による設備削減によって供給力が削減され、欧米諸国の過剰設備の処理もあって八三年以降業績を回復してきた。このような状況のもとで前年以来の好況に遭遇したが、これには休止設備の再稼働、定期修理の一時延期などで対応、設備稼働率は九八%に達しているとされる。

 他方、原料ナフサ価格は原油価格の低下を背景に第二次石油危機以来の最安値圏にあり、世界的な需給逼迫による中間製品の価格上昇も寄与して、利益をおしあげているとされる。ここでは、石油化学産業でかつてみられたシェア競争意識にもとづく設備投資競争は抑制され、利益指向へと変わっていることが注目されている(『エコノミスト』八八年一二月一九日号参照)。

合理化つづく石炭産業

 石炭産業では第八次石炭政策(八六年一一月)にもとづく閉山や、生産縮小があいついできたが(『日本労働年鑑』第58集参照)、八八年四月、三井石炭鉱業は八八年度の合理化計画をまとめ、臨時中央労使協議会で一部を労働組合側に提示した。

 それによると、生産規模は、三池鉱業所で年産三五三万トンを三一五万トンに、芦別鉱で七七万トンを五一万トンに削減する。これにともなう人員削減は三池七三〇人(二八〇〇人体制)、芦別三七〇人(五〇〇人体制)、合計一一〇〇人に達し、大牟田市、芦別市など地域経済にいままで以上の打撃をあたえるとみられる。

 この合理化案は前年その概略が発表されていた(『日本労働年鑑』第58集参照)。会社側は、この合理化の理由として、販売不振により貯炭量が二九四万トン(八八年三月末)に達し、また、北海道電力が火力発電所をつぎつぎに廃止していることから需要の減少がさけられず、三池だけでなく芦別の合理化をも進めるとしている(『日本経済新聞』八八年四月二二日付、『毎日新聞』八八年四月二八日付による)。

繊維製品輸入一〇〇億ドル突破、日韓ニット製品貿易問題深刻化

 大蔵省の貿易統計によると、一九八八年の繊維製品の輸入額が一〇〇億ドルを初めて突破、一〇六億ドル、前年比三九%増に達した。輸出額は六九億ドルにとどまったことから、羊毛・綿花などの繊維原料の輸入額をふくめると、繊維貿易全体では七〇億ドルの入超となった。この輸入額は原油につぐ規模である。日本の繊維貿易は八六年に初めて入超に転じたが、その後の円レートの急騰と国際化に拍車がかかった結果とみられる。製品の六割強は韓国・中国・台湾からの輸入品で、労働力の安いこれら諸国からの輸入がふえている。韓国製ニット製品の輸入は前年、セーターなど外衣で六二%も増え、八八年も前年同期比六〇〜七〇%の増加率であった。

 前記の状況のもとで日韓間の繊維製品貿易摩擦が深刻化しつつある。八八年五月下旬、日本ニット工業組合連合会と日本繊維産業連盟が、韓国製ニット製品にたいするダンピング提訴の準備を進めていることを明らかにしたが、八八年一〇月二一日にいたり、提訴に踏み切った(『朝日新聞』八八年五月三一、六月一一日、八九年一月二一日付)。

海運集約と船員合理化すすむ

 石油危機および円レートの高騰以来、日本の海運業は長期の不況と、ドル表示船員コストの上昇に悩み、大規模な合理化を進めてきた。八八年にはいってからも、この四月、海運造船合理化審議会の北米定期航路問題作業部会は、北米航路での営業を二〜三グループに集約するという運輸省試案にたいする合意をまとめた。これにより、今後、過当競争の緩和・業界再編成への動きが強まるとみられる。

 前記の動きを受けて、八八年五月、日本郵船と大阪商船三井船舶のトップ二社は、系列会社一五社程度を八八年度中にも一〜二社に整理・統合する方針を明らかにした。この一年余の合理化で各社とも単独では営業を継続できないと判断したことによる。これには、従来、系列会社が親会社より安い船員コストで労務を提供してきたが、日本人船員コストが外国人のそれを大幅に上回っている現在、存続のメリットがなくなったことが背景にあるとされる。

 このような企業間の集約化が進められる一方で、各社での人員合理化にも前年にひきつづき拍車がかかり、中核六社のうち、ジャパンライン、山下新日本汽船、昭和海運の下位三社が人員整理の通告をおこなった。

 まず、ジャパンラインでは、五月、人員管理会社のジェイ・エルシッピング(JLS)に所属している全社員一四五〇人に解雇予告通知を出した。会社の提案は、JLSの陸上部門四○○人のうち二〇〇人をジャパンライン本体に吸収し、残りは希望退職か関連会社へ移籍、海上部門一〇五〇人については四〇〇人を本体に、一〇〇人を関連会社に吸収、残り五〇〇人は希望退職か期間雇用の新会社「ジラインフリート」で雇うというもの。これにたいし全日本海員組合は事実上の指名解雇だと強硬に反発している。

 六月に提案された山下新日本の合理化案は、七〇〇人の船員を、陸上での待機中は給料を支払わない期間雇用者や陸上要員にし、人件費の節約をはかると同時に、この船員を受け皿会社・関連会社に吸収するというものである。

 昭和の合理化案は、船員五二〇人の一部を翌春就航する客船部門に移し、残りは山下と同様な処理で人件費削減をはかるというもの。両社とも移籍人員数を明示していないが、人件費半減という枠を示すことで本社残留人数の限界を示している。

 このような船員合理化の急進展で日本海運業の外航船員数は減少の一途をたどり、八八年には一万人を下回ると予想されている(八三年では約三万人弱)。同時に低賃金を利用するための外国への移籍で日本籍船数も減る一方で、これに対処するために海運造船合理化審議会は一二月、低賃金の外国人船員の混乗を進めることで移籍を防止すべきとの報告書をまとめた。具体的には、「海外貸し渡し方式」(船をいったん海外に貸し出し、外国人船員を必要数乗せたうえで再び日本企業が用船する)を、東南アジア航路だけでなく北米航路など外航船全体に広げるという提言で、これによって生じる問題については労使間での合意を追求することを求めている。しかし、海員組合は強く反発しており、問題が今後に残されている(『朝日新聞』八八年四月一〇日、一六日、二八日、五月一二日、二一日、六月一九日、一二月一七日、二三日付、『東京新聞』八八年一二月二四日付参照)。

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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