前述した労働省一九八七年労使関係総合調査によれば、過去三年間に「労働争議があった」組合は二二・一%、そのうち「争議行為があった」組合は八一・二%となっている。「労働争議があった」のは運輸・通信業が、また、組合員規模では四九九人以下の各規模で二〇%を超えている。
「争議行為があった」組合の紛争事項は賃金関係が圧倒的であるが、高齢化や時短という近年の問題をふまえて、「定年制」「休日」「所定労働時間」なども紛争事項として上位に指摘されている(第37表)。また、「争議行為があった」組合の争議行為の態様をみると、「時間外・休日労働拒否」と「同盟罷業」が二大態様といえる。
争議行為がなかった理由争議行為がなかった理由としては、労使関係の成熟化・安定化のもとで、労使が自主的に解決をはかっていることが指摘されている。すなわち、過去三年間に「労働争議があった」が「争議行為がなかった」組合は、自主交渉による解決見込みを指摘するものが多く、争議行為開始以前に自主交渉による解決という枠組みが一部においてはできあがっているように思われる。しかし、なかには、成果があげられないとの自主的判断や、組合財政を理由として争議行為をおこなわなかった組合があることにも注意を要する(第38表)。
争議行為の手続き全般的には、争議行為の開始に際して「予告」などをはじめとした一定のルールがある組合が多い。「予告」以外では、「団体交渉を経たあと」や「労使協議機関を経たあと」という自主的解決へむけての努力をおこなうことが要件とされている。
また、争議行為不参加者の範囲を定めている組合も大規模組合を中心として半数近くあり、「保安・保全・警備要員(職種)」などを不参加者と定めている。以上のように、労働争議の一般的傾向としては、成熟化・安定化した労使関係のもとで、労働争議があっても自主的交渉を中心にその解決をはかり、かりに争議行為が開始されるにしても一定のルールにしたがって実施されているといえよう。しかし、争議行為をバックに紛争事項の解決をはかろうとしてもなんらかの理由により争議行為を実施できない組合もあることには注意を要する。
日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始