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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第一部 労働経済と労働者生活

I 労働経済の動向


3 賃金と労働時間

名目賃金、月平均三四万一一六〇円

 八八年の名目賃金の水準は、労働省「毎月勤労統計調査」の現金給与総額によれば、調査産業計で月平均三四万一一六〇円、製造業で三一万八六六三円であった。対前年上昇率は調査産業計で三・八%、製造業で四・五%となった(第13表)。名目賃金の上昇率は、八七年には調査産集計で一・九%、製造業で一・七%と低水準にとどまったが、八八年にはいって大幅な回復がみられたことがわかる。
 名目賃金の上昇の要因としては、景気拡大を反映して春季賃上げ率が前年を上回り、加えて、所定外労働時間の増加による所定外給与の伸びが前年を上回ったことなどがあげられる。

春季賃上げ額と率

 八八年の労働組合の春季賃金闘争の妥結結果を、主要企業の賃上げ額と賃上げ率についてみると(労働省労政局調べ、加重平均、第49表参照)、賃上げ額は一万五七三円、賃上げ率では四・四三%であった。額では八七年の八二七五円を二二九八円上回り、率では八七年の三・五六%を〇・八七%ポイント上回った(詳しくは第3部「III 賃金要求と賃金闘争」参照)。

実質賃金の伸び、一二・三%の増加

 労働省「毎月動労統計調査」によって、実質賃金の推移を八五年を一〇〇とした実質賃金指数によってみると(第B表)、調査産業計で、八七年は一〇四・五で対前年比二・二%の増加、八八年は一〇七・九で三・三%の増加となった。製造業では八七年は一〇三.○で一・九%の増加、八八年は一〇七・一で四・一%の増加であった。八八年にはいって実質賃金の伸びが増大したことがわかる。これは名目賃金の伸びが前年を上回り、消費者物価が〇・七%という低い伸びにとどまったことによっている。

労働生産性と労働分配率
日本生産性本部の統計によって労働生産性の動向をみると、八五年を一〇〇とした労働生産性指数は、八六年平均の一〇一・八から八七年平均の一〇七・七へと推移している。対前年上昇率では、八六年一・八%、八七年五・八%と伸び率が上昇した。

 他方、労働分配率の動向を日本銀行「主要企業経営分析」によってみると、労働分配率は全産業計で八六年度四五・七%、八七年度四四・七%、製造業で八六年度五二・二%、八七年度四九・八%となっている。八七年には前年よりも全産業計で一・〇ポイント、製造業で二・四ポイント下回つたことになる。

産業別賃金格差、金融 保険と電気・ガス・水道業は製造業の一・五倍

 八八年の賃金構造を、まず産業別賃金格差からみると(第14表製造業を100として、金融・保険業149.2(前年139.7)と電気・ガス・水道業148.2(同148.0)の2産業が他産業を大きく引き離し、もっとも賃金が高くなっている。ついで、不動産業119.9(同115.5)、運輸・通信業118.4(同118.1)、サービス業113.2(同114.1)、建設業109.3(同105.8)、鉱業108.1(同110.6)という順になり、卸・小売業だけが89.3(同93.1)と製造業を下回つている。

規模別賃金格差、拡大傾向変わらず

 八八年の製造業における企業規模別賃金格差をみると(第D表)、500人以上規模の賃金を100とすると、100〜499人規模は76.7(前年78.5)、30〜99人規模は61.8(同65.7)、5〜29人規模は55.9(同56.6)となった。前年とくらべて、500人以上規模とその他の規模との間の格差が拡大している。

地域別賃金格差拡大、最低は東京の半分以下

 八八年の地域別賃金格差を、東京を一〇〇とした指数でみると(第16表)、調査産業計の場合、東京の一〇〇にたいして、もっとも低いのは山形の五九・四、ついで秋田の六〇・七、青森の六一・一とつづく。逆にもっとも高いのは東京だが、それについで高いのは大阪八九・二、神奈川八八・一、京都八七・二、愛知八四・七という順になる。

 製造業の場合、地域間格差はさらに大きくなり、もっとも低い青森は四六・一で東京(一〇〇・〇)の半分以下にすぎない。ついで秋田四七・四、鹿児島五一・〇、岩手五一・八、鳥取五一・九、山形五二・八とつづく。もっとも高いのは東京であり、ついで神奈川九一・二、大阪八八・六、愛知八六・六となる。

労働者種類別賃金格差、事務と生産の格差拡大

 労働者の種類別に賃金格差をみると(第17表)、八八年には、まず現金給与総額では、管理・事務・技術労働者を100とすれば、生産労働者は製造業で67.9となり、約三分の二にすぎない。同じく、管理・事務・技術労働者を100として、製造業生産労働者の「きまって支給する給与」と「特別に支私われた給与」をみると、前者は73.1、後者は54.3となり、「特別に支払われた給与」の格差のほうが大きい。

男女別賃金格差、さらに拡大

 八八年の男女別賃金格差をみると(第18表)、男子を100とした場合、女子の調査産業計は現金給与総額五〇・七、「きまって支給する給与」五二・二、「特別に支払われた給与」四六・四であった。製造業では、同じく男子を一〇〇とした場合、現金給与総額四一・八、「きまって支給する給与」四三・八、「特別に支払われた給与」三六・〇であった。調査産業計よりも製造業で男女別賃金格差は大きくなっている。

年齢別賃金格差、中小企業のピークは四五〜四九歳

 八八年の男子労働者の年齢別賃金格差をみると(第19表)、二〇〜二四歳の賃金をー〇〇とした場合、一〇〇〇人以上規模では五〇〜五四歳が一九一で頂点に達するのにたいし、一〇〇〜九九九人では四五〜四九歳が一八三、一〇〜九九人でも四五〜四九歳が一六六で頂点に達し、大企業よりも中小企業のほうが、若年層から高年齢層への賃金上昇カーブがゆるやかで、しかも相対的に低い年齢で賃金上昇が頭打ちになっており、以後、賃金上昇カーブは下降している。

労働時間、所定外時間増加
 労働省「毎月動労統計調査報告」によると、八八年の月平均総実労働時間は、調査産業計では八七年と同じく一七五・九時間であった(第20表)。これを所定内労働時間と所定外労働時間に分けてみると、所定内労働時間は一六〇・二時間で前年よりも〇・九時間減ったのにたいして、そのぶん、逆に所定外労働時間が一五・七時間で〇・九時間ふえたため、総労働時間は前年水準にとどまったことがわかる。

 製造業では、総実労働時間は一八一・一時間で前年より二・〇時間増加した。製造業の所定内労働時間は前年より〇・二時間減であったのにたいし、所定外労働時間が前年より二・二時間増加したため、総労働時間の増加となったのである。

規模別労働時間、中小ほど総実労働時間が長くなる傾向

 製造業における労働時間を企業規模別にみると(第21表)、八八年の総実労働時間は、五〇〇人以上規模では一七八・六時間で前年より三・五時間の増加、一〇〇〜四九九人規模では一七九・八時間で前年より〇・九時間の増加、三〇〜九九人規模では一八五・一時間で前年より〇・四時間の増加であった。五〇〇人以上を一〇〇とした場合、一〇〇〜四九九人で一〇〇・七、三〇〜九九人で一〇三・六と企業規模が小さくなるほど総実労働時間が長くなるという傾向は例年と変わりがない。

 所定外労働時間についてみると、五〇〇人以上規模は二三・一時間で前年より三・七時間の増加、一〇〇〜四九九人規模は一九・二時間で前年より二・〇時間の増加、三〇〜九九人規模は一七・〇時間で前年より一・五時間の増加となり、企業規模が大きいほど所定外労働時間の増加が大きくなっている。

 【参考資料」 (1)総務庁統計局「労働力調査』、(2)労働省「職業安定業務統計』、(3)同「雇用保険業務月報』、(4)同『毎月勤労統計調査報告』,(5)同『技能労働者需給状況調査』、(6)同「賃金構造基本統計調査」

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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