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日本労働年鑑 第59集 1989年版
The Labour Year Book of Japan 1989

第一部 労働経済と労働者生活

I 労働経済の動向


1 景気動向と労働力需給

高度成長期以来の好景気に突入

 日本経済は、八六年末を底にして八七年に入ると上昇に転じ、外需が減少するなかで内需を中心として急速な景気拡大を示した。八七年に入ってから堅調な個人消費と住宅投資の増加などにより内需が拡大し、実質経済成長率は四・五%と景気回復軌道にのり、八八年になると個人消費と設備投資を中心に拡大をつづけ、実質経済成長率五・七%と高度経済成長期の「いざなぎ景気」以来といわれる好景気となった。

 各需要項目別の推移をみると、八五年秋以降、急激な円高によって減少をみせた輸出は八七年に再び増加に転じ、八八年には対前年比七・九%増となった。一方、輸入も国内景気の拡大のため増加をつづけ、八七年八・七%増、八八年には二一・二%増と大編な伸びをみせた。

 これにたいして国内需要は物価の安定や外国製品の価格低下もあり、堅調に増加をつづけた。民間住宅投資は、八七年に二二・二%増と高い伸びを示したが、八八年にはいると一三・四%増とその伸びが鈍化した。かわって民間設備投資が内需拡大を背景に急激な回復の動きをみせ、八七年の対前年比八・○%から八八年には一五・九%となった。また、民間最終消費支出も八七年四・二%増、八八年五・〇%増と堅調に推移した。

 景気拡大にともない、鉱工業生産指数も、八六年の対前年比○・二%減、八七年の三・四%増から八八年には九・四%という大幅な増加を記録した。

 また、八八年の企業収益を、大蔵省「法人企業統計季報」でみると、非製造業では個人消費など内需が堅調であることによって高い伸びを示し、製造業でも化学、窯業・土石など内需型業種で高水準である一方、鉄鋼、機械などの輸出型業種でもいちじるしい回復をみせた。

一般職業紹介状況、求人超過に転じる

 新規学卒を除く一般の労働力需給を労働省「職業安定業務統計」の有効求人倍率でみると、景気拡大を反映して、八七年の〇・七〇倍から八八年に入ってもひきつづき毎月上昇し、八八年六月には七四年以来はじめて一倍をこえ求人超過基調で推移し、八八年平均で一・〇一倍となった。

 八六年に〇・九一倍と落ち込んだ新規求人倍率も、八七年には再び一・〇八倍と求人超過に転じ、八八年には一・五三倍と非常に高い水準となった(第6表)。
技能労働者需給状況、好況を反映して不足数増加

 労働省「技能労働者需給状況調査」によると、八七年一一月現在の技能労働者の不足数は一〇三万人で、好景気を反映して五二万人の不足数が増加した。在職技能労働者(一七二万二○○○人)にたいする不足率は六・一%で、前年の四・二%を一・九ポイント上回った。

 技能労働者の不足率は企業規模が小さいほど高い。

 事業所規模別では、一〇〇〇人以上規模一・六%、五〇〇〜九九九人規模二・二%、三〇〇〜四九九人規模三・一%と不足率が低いのにたいして、三〇〜九九人規模では六・九%、五〜二九人規模では九・三%と高くなる。不足数の九一・〇%が二九九人以下の中小規模事業所によるものである。
 産業別にみた技能労働者の不足率は、建設業一三・五%、サービス業九・一%、製造業五・二%、卸・小売業四・六%で相対的に高くなっている。

新規学卒者の需給状況、高卒求人も好転

 八八年三月の新規学卒者にたいする求人倍率は、「職業安定業務統計」によれば、高校卒の場合一・六一倍であった。八七年には、一・五三倍であったことから、八八年は○・○八ポイント前年を上回った。八六年、八七年と二年連続して低下した高校卒の求人倍率も景気拡大を反映して改善した。

 大卒者への求人倍率は不明であるが、就職者数および卒業生にたいする就職者の比率を文部省「学校基本調査」によってみると、短大・大学の合計で八八年三月卒の場合、就職者が四四万七〇〇〇人、就職率が八○・○%であり、景気拡大によって八七年の大卒者の就職状況は非常に好調であった。ちなみに、八八年三月の中学卒の就職者数は六万二〇〇〇人で就職率は三・〇%であり、高校卒の就職者数は五七万五〇〇〇人、就職率は三四・八%であった。

 八八年の新規学卒者の就職先の産業別構成は、中学卒で第二次産業五四・九%、第三次産業四〇・九%、高校卒で第二次産業三八・四%、第三次産業五九・九%、大学・短大卒で第二次産業三一・四%、第三次産業六七・七%となり、高学歴層ほど第三次産業の比重が高くなっている。

入・離職率の推移、入職超過へ転じる

 労働省「雇用動向調査」によって労働者の移動状況をみると、八八年上期の入職者数は二八二万八〇〇〇人であり、前年同期よりも一二・八%増加した。入職者数は八六年、八七年と減少したが、八八年に大きく増加に転じた。

 パートタイム労働者以外の一般労働者の入職者は二三五万二〇〇〇人(前年同期比一三・四%増)で全体の八三・二%を占め、パートタイム労働者は四七万六〇〇〇人(前年同期比九・八%増)で全体の一六・八%を占めた。入職者に占めるパートタイム労働者の割合は、景気拡大により一般労働者の入職が増加したため、前年同期の一七・三%より低下した。

 一方、八八年上期の離職者数は二一八万九〇〇〇人で、前年同期より二・三%増加した。一般労働者の離職者は一七八万人で全体の八一・三%であり、パートタイム労働者は四〇万八〇〇〇人で一八・七%であった。この結果、入職者のうちから転職入職者を差し引き離職者を加えた労働移動者数は、八八年上期には前年同期よりも四・六%増加し、三六九万二〇〇〇人となった。

 労働省『毎月勤労統計』によって常用労働者の年間の入職と離職の状況をみると、八八年の常用労働者の入職率は一・七四%、離職率は一・六三%となった。入職率は前年を〇・二一ポイント上回り、離職率も前年を○・○五ポイント上回った。製造業では、入職率は一・四八%で前年を〇・二三ポイント上回り、離職率は一・四二%で○・○三ポイント上回り、その結果、八六年、八七年と二年つづいた離職超過から〇・一一%の入職超過へと転じることとなった。

常用雇用指数、運輸・通信以外の全産業で増加

 労働省「毎月勤労統計調査」によって、非農林業の常用雇用の水準を八五年を一〇〇とした常用雇用指数によってみると(第7表)、八八年の常用雇用指数は一〇三・五で、八八年の常用雇用の伸びは一・五ポイント増加した。八八年の常用雇用指数を産業別にみると、製造業では一〇〇・三、サービス業一〇九・一、卸・小売業・飲食店一〇八・六、建設業一〇四・二、運輸・通信業九五・八となり、景気拡大を反映してほとんどの産業で増加しているが、運輸・通信業では八六年以来減少がつづいている。

完全失業者、一八万人減少の二・五%へ

 完全失業者数は、総務庁「労働力調査」によれば、円高による製造業の業況停滞のため八六年に一六七万人、八七年には一七三万人と増加したが、八八年には一五五万人と前年より一八万人減少した(第8表)。完全失業率も八七年の二・八%から八八年には二・五%へと低下した。

 八八年の完全失業者数を男女別にみると、男子は九一万人で、前年を一三万人下回った。女子の完全失業者数は六四万人で、前年を五万人下回った。完全失業率は男子が前年を〇・三ポイント下回って二・五%、女子は前年を〇・二ポイント下回って二・六%となった。

雇用保険の諸指標、受給者実人員五六万五〇〇〇人へと減少
 雇用保険制度による受給資格決定者数は、八八年に一三万件と前年より一万七〇〇〇件減少し、受給者実人員も八七年の六七万二〇〇〇人から五六万五〇〇〇人へと減少した(第9表)。
 また、基本手当受給者をふくめた被保険者に占める基本手当受給者の割合である基本受給率は、前年の二・四%から二・〇%へと低下した。

日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始


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