八八年五月二四日、労働省は「調査会」(座長=圓城寺次郎・日本経済新聞社顧問)を発足させた。調査会は、学識経験者およぴ労使の代表の合計一八名の委員から構成され、「今後における外国人労働者の受入れの在り方と制度整備について幅広い観点から検討を行い、もってこの問題に対する政策対応の在り方についての国民的コンセンサスの形成に資することを目的」とするものであった。調査会は、その検討事項として、(1)受け入れにともなう影響と問題点、(2)受け入れをおこなう範囲、基準等、(9)受け入れに関する制度整備、(4)国民的コンセンサスの形成の方策の四点をかかげている。
九月二六日には「外国人労働者問題について」と題する「中間的整理」を公表した後、一二月九日には最終報告「外国人労働者問題への対応の在り方について」を中村労相に提出した。〔「外国人労働者問題への対応の在り方について」(要旨)〕
1、外国人労働者受入れに関する基本的な考え方
国際化の進展に対応し、人的な交流を活発化させることも重要な課題。
不法就労の増加が国内の雇用や労働条件面の諸問題を増大させることも懸念される。
早急に解決を図るべき課題。第一は、受入れ範囲を見直し、明確な基準を定めること、第二は、十分な受入れ体制の整備を図ること。
(1) 受入れ範囲の見直しの考え方
イ、我が国経済社会の発展に寄与するような受入れとなること
ロ、国内の労働者に悪影響を与えたり、労働市場の混乱、経済・雇用構造の改善の遅れを招くような受入れは行うべきでない
受入れが適当な分野
第一に、専門性と一定の水準をもつ職業
第二に、外国人ならではの能力等を活用しようとする職業
いわゆる単純労働力(不熟練労働力)については、受入れを行うべきではない
(2) 受入れ体制の整備の考え方
イ、我が国労働者の失業、賃金・労働条件の低下の防止を図ること。
ロ、不法就労の抑止、労働市場の混乱の防止を図ること。
ハ、外国人労働者が劣悪な労働条件下に置かれることを防止する、適正な雇用管理の実施について事業主に指導を行うこと。
2、受入れ範囲の拡大の方向
職業分類に沿って整理することが適当である。
(1) 受入れの具体的範囲
イ、「A専門的・技術的職業」及び「B管理的職業」
これらの職業は、専門的、技術的な職業に該当する
ロ、「C事務的職業」以下の職業分類に属する職業
専門的、技術的な性格が強いものについては、受入れ範囲に含めることが適当
(2) 受入れの判断基準
イ、労働力需給状況に照らして問題がないこと
ロ、本人の職業能力・資格上の要件が十分であること
ハ、日本人労働者と同等の待遇がなされること
ニ、雇用する企業側の要件が十分であること
ホ、雇用促進等他の雇用関係施策との調和の点で問題がないこと
(3) 外国人留学生の取扱い
3、受入れ体制の整備の方向
受入れの時点から受入れ後のフォローアップまでを含めた一貫した体制を整備していくことが極めて重要
(1) 適切な受入れのための体制
イ、受入れ審査及びフォローアップ
外国人労働者の入国審査につき労働政策の観点が十分反映されるような仕組みを整備する必要がある。
就労状況のフォローアップは、事業主を通じて行うことが最も効率的かつ効果的である。
ロ、事業主及び外国人労働者にたいする指導、援助等
事業主に対する啓発・指導を充実する必要がある。
外国人労働者自身に対して、基本的事項の周知、問題が生じた場合の相談を行う体制を整備すべきである。
ハ、労働関係諸制度の見直し
海外にわたる労働力需給調整に関すること、均等な労働条件の確保と労働環境の整備を図ること、労働保険の適用に関すること
(2) 不法就労への対応
誘発するような需要を規制すること、事業主に対する、周知・啓発、協力要請、罰則の強化等のアプローチが不可欠。法務省、警察庁との連携・協力の上、一体となった対応のための体制整備
4,具体的対応策の在り方
(1) 総合的な制度整備の方向 − 雇用許可制度〔略〕
(2) 当面の外国人労働者対策の進め方
イ、受入れ審査に当たり、労働政策の観点が十分反映されるよう関係省庁間の連携体制を確立すること
ロ、継続的かつ組織的にフォローアップを行う体制を整備する
ハ、事業主に対する啓発・指導及び相談・援助
ニ、外国人労働者に対する相談・援護
ホ、不法就労に対する実効ある防止・抑止策
へ、受入れに関する政策立案のための調査
ニーズ及び問題点の実情を把握し、関連施策立案の基礎資料とする
5,研修生受入れの拡大とシステム整備
(1) 拡大の必要性〔略〕
(2) 受入れシステムの整備の検討〔略〕
6 今後の検討課題
社会全体としての受入れ体制の整備の方向について、国民的なコンセンサスの形成を図りつつ、総合的に検討を進めていくことが不可欠である。
「調査会」の最終報告は、いくつかの具体的な対策を出しているが、基本的には三月の「研究会報告」の内容を踏襲したものである。たとえば、いわゆる「単純労働者」の受け入れについては、「受け入れを行うべきではない」として明確に拒否している。また、「雇用許可制度の導入」については、構想として提起されているが、「出入国管理及び難民認定法等関係諸制度との整合性の確保も図りつつ、更に検討を進めることとする」として、事実上棚上げにしている。
以上の内容は、八八年六月一七日の閣議で決定された「第六次雇用対策基本計画」の当該箇所「国際化の進展と外国人労働者問題への対応」において、「外国人の優秀な人材を受け入れたいとするニーズが高まると同時に、我が国での就労を希望する外国人も増加しており、こうした動きに適切に対応することが求められている。この場合、専門、技術的な能力や外国人ならではの能力に着目した人材の登用は、可能な限り受け入れる方向で対処する。不法就労への効果的な対応策も含め、慎重かつ速やかに検討を行う。いわゆる単純労働者の受入れについては、十分慎重に対応する」(要旨)というように具体化されている。
他方、最終報告は、海外からの研修生の受け入れ拡大とシステムの整備を強調している。このことは、八九年度の技能研修生受入れ事業の大幅拡大方針に具体化しているといえるであろう。それは、途上国から年間五〇〇名の若者を招き、「初めの三ヵ月間は日本語などの導入訓練、続く六ヵ月間は基礎技能訓練、研修費用と一定の生活費は労働省が負担、その後、企業の現場で一年問実務研修」というものである。同時に、七二年から推進されている「国際技能開発計画」の対象人数(八八年度、一六七人)を五〇人程度ふやす方針である。
日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始