労働省の「研究会」報告と相前後して、法務省は八八年三月二四日に「在留資格」の全面的見直しに着手することを公表した。その後、四月一五日の「第一次骨子案」を経て、五月一〇日に「入管法改正要綱案」を発表している。
改正案のおもな内容は、つぎの五点である。第一に、外国人の入国・在留目的の多様化に見合うように、また今日の国際化社会に対応できるように、在留資格の種類・範囲を全般的に見直し、新たに八種類の在留資格を新設すること、第二に、就労目的、就労目的以外、制限のないものを明確にするための大分類を設けること、第三に、入国審査手続きの簡易・迅速化と審査基準の明確化をはかること、第四に、就労できる外国人に就労証明書を交付することによって、善意の雇用主が就労できない外国人を誤って雇用しないようにすること、第五に、不法就労外国人対策として雇用主やブローカーにたいして新たな罰則を設けること、である。
この改正案による「新しい在留資格(案)」は、第4表の別表一から四に示されている。法務省によれば、この改正によって、有能な外国人労働者の受け入れは拡大し、国内企業のニーズは満たされ、わが国の経済・社会の国際化の要請に応えられることになる。また、不法就労に関しては、法改正による罰則の整備のほか、厳格な上陸審査や集中的摘発、事業主などへの指導・啓発の強化などの実施によって対応していく方向をうちだしている。
第4表 法務省「入管法改正要綱案」の「新しい在留資格(案)」| 在留資格の種類 | 在 留 資 格 に 該 当 す る 者 |
|---|---|
| 外 交 | 日本国政府が接受する外国政府の外交使節団若しくは領事館の構成員又は条約 若しくは国際慣行によりこれらの者と同様の特権及び免除を受ける者並びにその 家族の構成員でその世帯に属するもの |
| 公 用 | 日本国政府の承認した外国政府又は国際機関の公務に従事する者及びその家族 の構成員でその世帯に属するもの |
| 事業経営 | 本邦で貿易に従事し,又は企業,投資その他の営利事業の管理(専門的知識をもって 管理を補助する職務を含む)に従事する者 |
| 教授 | 本邦の学術研究機関又は教育機関において研究の指導又は教育に従事する者 (教師を除く) |
| ○教師 | 本邦の中学校,高等学校、専修学校又はこれらに準ずる教育機関において語学 その他の教育に従事する者 |
| 文化活動 | 本邦で音楽,美術,文学,科学その他の学術上又は芸術上の業務に従事する者 |
| ○研究 | 本邦の公私の機関により受け入れられて研究又は調査に従事する者 |
| 興行活動 | 本邦で演劇,演芸,演奏,スポーツその他の興行に係る活動に従事する者 |
| 宗教活動 | 外国の宗教団体により本邦に派遣されて布教その他の宗教上の活動に従事する者 |
| △報道活動 | 本邦で取材その他の報道上の活動に従事する者 |
| △専門技術 | 本邦の公私の機関により受け入れられて専門的な技術又は技能を要する業務に 従事する者 |
| ○ソフト技能 | 本邦の公私の機関により受け入れられて専門的な知識若しくは経験又は外国人 特有の感性を要する業務に従事する者 |
| ○企業内転勤 | 本邦の公私の機関の外国にある支店その他の事業所の職員で当該本邦の機関に 受け入れられて海外業務その他の専門的業務に従事するもの |
| ○法律事務 | 本邦で外国法事務弁護士・又はこれを補助する事務に従事する者 |
| ○福祉医療 | 本邦の公私の機関により受け入れられて社会福祉又は医療若しくは保健に係る 活動に従事する者 |
| 熟練労働 | 本邦でもっぱら熟練労働に従事する者 |
| 在留資格の種類 | 在留資格に該当する者 |
|---|---|
| 短期滞在 | 観光・保養,スポーツ・親族の訪問・見学、講習若しくは会合への参加又は業 務連絡その他これらに類似する目的をもって、短期間本邦に滞在する者 |
| 留 学 | 本邦の大学において学習する者 |
| ○就 学 | 本邦の専修学校・各種学校又はこれらに準ずる教育機関において学習する者 |
| 研 修 | 本邦の公私の機関により受け入れられて産業上の技術又は技能を習得する者 |
| 被扶養者 | 別表第一に掲げる在留資格(外交及び公用を除く)及び別表第二に掲げる在留 資格(短期滞在及び就学を除く)を有する者の配偶者又は20歳に満たない子 |
| 在留資格の種類 | 在留資格に該当する者 |
|---|---|
| 永 住 者 | 本邦で永住する者 |
| 法126−2−6 該当者の子 | ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基づく外務省関係諸命令の 措置に関する法律(昭和27年法律第126号)第二条第六項の規定により本邦に 在留する者の子で同法施行の日以後本邦で出生したもの |
| 日本人の配偶者 | 日本人、永住許可を受けている者(日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及 び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法 (昭和40年法律第146号に基づく永住の許可を受けている者を含む)、ポ ツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基づく外務省関係諸命令の措置 に関する法律(昭和27年法律第126号)第二条第六項の規定により本邦に在留す る者又は法126−2−6該当者の子の在留資格を有する者の配偶者又は子 |
| ○定 住 者 | その他法務大臣が本邦に定住することを認める者 |
| 在留資格の種類 | 在留資格 に 該 当 す る 者 |
|---|---|
| 特定外国人 | 法務省令で定めるところにより特に在留を認める者 |
「単純労働者の受け入れに関しては、上述の専門的な技術・知識等を有する外国人の受け入れとは異なり、国内労働市場への影響、文化的相違に由来する社会的影響、子弟の教育問題、社会保障、国内治安に及ばす影響などの諸問題について検討を要するので、国民的コンセンサスを求めつつ、これらの問題点について関係各省庁の問で慎重に検討すべきであると考えています。なお、その検討の結果として、仮りに単純労働者についての新たな方針が出されれば、改めて、その方針に見合う入国審査基準の見直し、在留資格上の調整、数量的規制などの問題を検討したいと考えています。」
日本労働年鑑 第59集
発行 1989年6月26日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2000年2月22日公開開始