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日本労働年鑑 第57集 1987年版
The Labour Year Book of Japan 1987

第四部 労働組合と政治・社会運動

II 社会運動の動向


1 平和・社会運動

6 国家秘密法反対運動
八五年秋のたたかい

 自民党が議員立法として八五年六月の第一○二国会に提出し、継続審議となっていた「国家秘密にかかわるスパイ行為等の防止に関する法律案」は、秋の第一〇三臨時国会での大きな焦点となり、反対運動が急速に盛り上がった。

 マスコミ・出版界では、マスコミ文化共闘に結集する労組をはじめ、新聞協会、民放連、出版協会、雑誌協会、日本書店組合連合会などの業界団体も反対を表明、一一月二七日には井手孫六、緑川岩波書店社長らのよびかけで「国家秘密法に反対する出版人の会」が旗上げされた。日弁連や各地の弁護士会、日本ペンクラブ、日本映画ペンクラブ、日本映画監督協会、歴史学者七六八氏、法学者五二一氏など、法曹界、言論界、知識人らの間での反対表明も相次いだ。一一月二六日には家永三郎、松浦総三ら一七氏とマスコミ文化共闘のよびかけで秘密法の廃案をめざす集会がおこなわれたほか、国会終盤には、国民大運動実行委、国家機密法阻止各界連などの一二・一〇集会(三六〇〇人)、総評、社会党などの一二・ 一一集会などが開催された。なお、国家機密法阻止各界連は六月二日、共産党、統一労組懇など六七団体で発足、八五年末で四六都道府県二〇〇余地区に結成された。統一労組懇がよびかけた二月二八日のストライキを含む統一行動には一八〇万人以上が参加した。

 こうした運動の結果、法案は一二月二〇日審議未了で廃案となったが、この時点での地方議会の反対議決は一三五にのぼった。

秘密法再提出反対運動

廃棄直後の「抜本的に検討し直して再提出したい」(記者会見)と修正再提出への意欲を表明し、八六年二月二五日には「スパイ防止法制定に関する特別委員会」(松永光委員長)を党内に発足させた。同委員会は旧法律案の見直し作業をすすめ、名称の「国家秘密」を「防衛秘密」にいいかえ、最高刑を「死刑」から「無期懲役」に引き下げるなどの部分的手直しをほどこした「修正案」をまとめた。しかし、五月二〇日の自民党総務会では討議せず、今国会への再提出を見送り、今後の扱いを政調会長に一任した。ところが、同日選挙で自民党が圧勝したことから、再び国会提出が懸念される事態となった。

 日弁連は、五月八日、会長を本部長とする対策本部を設け再提出反対運動の態勢をととのえるとともに、一一月一八日、「修正案は(廃案になった)旧法律案と本質的に同一」とする意見書を発表した。また、全国五二の単位弁護士会のうち四七の単位弁護士会が反対を表明している(八七年二月二八日現在)。

 総評は第七五回定期大会で再提出反対運動にとりくむことを確認し、一二月四日には東京地評と共催で緊急集会を開催、以後毎木曜日に「国家秘密法反対―市民の広場」を定期開催するとともに、社会党、中立労連など八団体で「国家秘密法阻止連絡会」を結成し、八七年一月から請願署名運動を開始した。

 市民団体や草の根からの反対運動もとくに秋以降活発化し、一〇月三一日にはYWCA、主婦連、日本生協連、日青協など一七の市民団体が「国家秘密法に反対する緊急市民団体連合」を結成、八五年六月に発足した草の根組織「国家秘密法に反対する市民ネットワーク」と共同で集会や署名にとりくんでいる。「国家秘密法案の廃案を求める女性たち」四七四七人、映画・演劇人の会、日本統計学会・経済統計学会会員有志二〇〇余人、憲法理論研究会有志九七人などが新たに反対表明や集会などをおこなったりした。

 『朝日新聞』は、一一月二五日、国家秘密法をめぐる地方議会での攻防についての全国調査の結果を発表したが、調査時点での反対議決は八二市区九三町三五村の計二一〇議会で、「促進」から「反対」への逆転議決は三〇市町村であった。『赤旗』は一二月二八日までの調べで、反対議決が二二四、うち逆転議決が三四と報じている(一二月二九日付)。

 なお、国家秘密法反対運動の詳細は、つぎの日誌を参照。
【国家秘密法反対運動の日誌】
八五・六・二五 国家秘密法案、第一〇二国会で継続審議となる。
   九・一一 司法の独立と民主主義を守る国民会議の主催で「国家機密法と司法を考えるシンポジウム」。
   九・二四 歴史学研究会など歴史三団体、反対集会。
   九・二四 全国一五〇〇人の弁護士、共同反対声明。
   九・二八 「ふたたび暗黒の時代を復活させるな!国家秘密に関する法律案粉砕トークマラソン」。マスコミ文化共闘、総評など。四五〇人。
   一一・一三 新聞協会、国家秘密法に反対声明。
   一一・一四 国家秘密法に反対する法学者五二一人の声明発表。
   一一・二一 民放連、国家秘密注に反対声明。
   一一・二六 家永三郎ら一七人とマスコミ文化共闘のよびかけで秘密法の廃案をめざす集会とデモ。五〇〇〇人。
   一一・二七 井手孫六、緑川岩波書店社長らのよびかけで「国家秘密法(案)に反対する出版人の会」発足。
   一一・二八 統一労組懇、国家機密法阻止統一行動。
   一二・ 六 日青協など一一の市民団体が緊急集会。
   一二・一〇 国民大運動実行委、国家機密法阻止各界連など中央行動。三六〇〇人。
   一二・一一 総評、社会党など「『国民総スパイ法』の廃案を要求する集会」。
   一二・一六 住井すゑら一七人のよびかけによる「国家秘密法に反対する婦人のアピール」、各界二八五人の賛同で発表。
   一二・二〇 第一〇三臨時国会で廃案となる。この時点で自治体の反対決議一三五。
八六・一・二八 総評など労働三団体、「『国民総スパイ法』の国会再提出に反対する集 会」。四〇〇人。
   二・ 三 政府、自民党、国家秘密法案を手直しして通常国会提出の方針を決定。
   三・ 六 「出版人の会」が修正再提出に反対集会。
   三・ 七 市民ネットワークがシンポジウム。
   三・一三 司法の独立を守る連絡会議、再提出に反対声明。
   三・二五 「国家秘密法案の廃案を求める女性たち」、四七四七人連名の声明文を衆参議長に提出。
   四・五 自民党スパイ防止法制定特別委員会、総会で修正案を了承。
   四・一七 千田是也、新藤兼人ら一四〇人のよびかけで「国家秘密法は許さない映画・演劇人の会」発足。
   五・八 日弁連、国家秘密法対策本部を設置。
   九・二六 「出版人の会」が集会。
   一〇・一六 「映画・演劇人の会」が集会。
   一〇・二一 YWCA、有権者同盟など婦人四団体、法案上程に反対の要望書を首相に提出。
   一〇・三一 主婦連、生協連など一七の市民団体、「国家秘密法に反対する緊急市民団体連絡会」を結成。
   一一・一八 日弁連、秘密法修正案の国会再提出に反対する声明発表。
   一一・一八 国民大運動実行委、統一労組懇など五団体、国家機密法反対などで集会。五六〇〇人。
   一一・二〇 家永三郎、沢村貞子らを代表よびかけ人として「国家秘密法の国会再提出を許さない大集会」。五〇〇〇人。
   一一・二〇 総評弁護団、自由法曹団など在野の法律家六団体、秘密法再提出反対の共同声明発表。
   一一・二〇 「緊急市民団体連絡会」が集会。
   一一・二五 『朝日新聞』、地方議会の秘密法反対議決は二一〇と報道。
   一一・二五 日本統計学会・経済統計学会会員有志二〇〇余人が国家秘密法反対の要望書。
   一一・二八 児童図書館研究会など三団体、「図書館も危ない!国家機密法に反対する図書館関係者大集会」。
   一二・上旬 日本映画ペンクラブ、反対声明発表。
   一二・ 四 総評、東京地評が緊急集会。以後、毎木曜日に「市民の広場」を定期開催。
   一二・ 六 日市連、「ぶっつぶせ、国家秘密法!文学と映像でみる―国家とスパイ」。
   一二・一〇 日本書籍出版協会、反対声明発表。
   一二・一三 国家秘密法に反対する市民ネットワーク、「歌い飛ばそう! 国家秘密法、市民コンサートとパレード」。市民団体との統一署名開始。
   一二・一七 憲法理論研究会の有志九七人が反対声明発表。
   一二・一八 自民党伊東政調会長、今国会提出見送りを表明。
   一二・二六 日本ペンクラブ、反対声明発表。
   一二・二九 『赤旗』、秘密法反対議決は二二四と報道。

日本労働年鑑 第57集 1987年版
発行 1987年6月25日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年8月1日公開開始


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