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日本労働年鑑 第57集 1987年版
The Labour Year Book of Japan 1987

特集 国鉄分割・民営化問題

IV 国鉄分割・民営化関連諸法の成立と新会社への移行準備


2 新会社への移行準備と職員の選別

新会社への採用数と採用基準

 政府は国鉄分割・民営化八法が成立したのにともない、新会社の設立委員の選定をおこなった。一二月一一日に第一回の国鉄新会社設立委員会が開かれ、旅客六社・貨物一社共通の設立委員長に斎藤英四郎経団連会長、委員長代理に亀井正夫国鉄再建監理委員長が設立委員の互選で選出された。

 第一回委員会では、新会社共通の職員採用基準と労働条件の基本的な考え方をまとめた。採用対象から除外されるのは、八七年三月末で五五歳以上になる職員、退職を前提に休職中の職員、希望退職者の該当者、国鉄の斡旋で公的部門などへ再就職した職員であり、そのうえで先に示した採用基準で振り分けがおこなわれることとなった。労働条件については、「基本的には現行の国鉄の労働条件を大幅に変更しないよう配慮する。ただし、私鉄と著しく異なる部分は、私鉄の労働条件を参考に必要な修正をする」としている。一二月一九日の設立委員会で新会社の労働条件が決まったが、それによると退職金の計算方法が変更され、国鉄時代よりも減少したり、手当類が廃止または減額するなど、「私鉄並み」の基準で労働条件が低下することになった。

 国鉄では右のような設立委員会の決定にもとづき、一二月二四日から職員に「配属先希望調査表」の配布をはじめ、一月七日の期限までに提出を求めた。新会社の採用枠は表に示したとおりである。

第1表 11新法人の採用者人数
北海道旅客鉄道会社
東日本旅客鉄道会社
東海旅客鉄道会社
西日本旅客鉄道会社
四国旅客鉄道会社
九州旅客鉄道会社
日本貨物鉄道会社
新幹線鉄道保有機構
鉄道通信会社
鉄道情報システム会社
鉄道総合技術研究所
13,000人
89,540
25,200
53,400
4,900
15,000
12,500
60
570
280
550
215,000

 職員振り分けの実務作業の中心になるのは各鉄道管理局や総局であり、新会社の採用数と希望状況を照らし合わせながら作業をおこなうが、採用基準では個々の職員の勤務成績が重視されるため、各職場の管理者が作成した「職員管理調書」が重要な判断材料となる。この「職員管理調書」は、八六年四月二日現在の職員を対象に、冒頭に労働処分歴などの特記事項と「技能」「協調性」「職場の秩序維持」「勤務時間中の組合活動」などの評定事項を四〜五段階で評価した内容を持っており、この調書を職員選別に利用すること自体が参議院の付帯決議に反すると見なされる問題があった。また、「配属先希望調査表」は、就業場所や職種の希望をとっておらず、職員がどこに配属されるか、どんな仕事につくのか不明であり、すべてを選別作業従事者にゆだねる形となっている。

 国鉄当局は、八七年一月二八日に配属先希望調査の集計結果を発表した。希望調査書の配布総数は二三万四〇〇人、回収総数は二二万七六〇〇人、このうち新会社への就職を希望した総数は二一万九三四〇人であった。国鉄改革法にもとづく基本計画の要員規模二一万五〇〇〇人を四三四〇人上回る結果となった。この内容を見ると、東日本・東海・西日本の本州三旅客会社のそれぞれ第一希望者数が採用枠を下回っていた。この結果、本州三社は全員採用の条件ができただけでなく、定員割れもありうる事態となった。

 ところで、このような情況を見て鉄労・動労などの国鉄改革労組協議会の各組合が二月二日に結成した「全日本鉄道労働組合総連合会」(鉄道労連、志摩好達会長)は、結成大会においてつぎのような「新会社の採用・配属に関する特別決議」を採択した。

 「本州の三旅客会社では、定員割れといわれている。このことが事実であるとすれば、国鉄改革に反対する不良職員が採用されかねない。しかし、このようなことは許されるものではないし、われわれは断じて許さない」、「新会社は第二次労使共同宣言の趣旨に沿って、まじめに努力した者によって担われるべきである」、「われわれの仲間たちが派遣や広域異動に応じたのに対して、汗も涙も流さぬ不良職員が現地で採用される、などということは絶対に認めない」。「労働組合」による不当労働行為のすすめともいえそうな内容であった。この決議文は二月九日に杉浦国鉄総裁に手渡された。

国労組合員に集中した採用差別

 二月一二日に第三回の新会社設立委員会が開かれ、各新会社の採用職員数と組織機構を決定したが、それによると本州三旅客会社では採用数が基本計画の枠より八九一三人も少なく定員割れとなった。だが、北海道・九州では、合わせて七四○○人の職員が不採用とされた。

 国労、全動労、鉄道労連などの国鉄の各組合は、二月一九日までに採用状況を集計したが、国労組合員の不採用は北海道三四〇〇人、本州五七人、四国二人、九州一五五〇人であり、九州、北海道では不採用者全体の七割を占め、とくに人材活用センター所属の組合員は、ほとんどが採用されなかった。全動労も、北海道では七割以上が不採用であった。

 これに対し鉄道労連(鉄労・動労など)の不採用は、北海道二二人、九州四人、東日本一人、西日本二人の計二九人で、不採用者は、乗客に暴力を振るうなどハレンチ罪をおこした者や、最近になって国労から移ってきた人などが多いとしている。国労はこうした採用状況について、「差別、選別が意図的におこなわれたことは明らか。これは組合間の差別をしないよう求めた参議院の付帯決議を否定するものであり容認できない。裁判闘争などを通じて全組合員の雇用を守るたたかいを進める」との抗議声明を二月一九日に発表した。

 本州三旅客会社への採用では、明確な組合間差別の形をとらなかったが、三月一〇日に発令された新会社での配属先を決めた人事異動によつて国労組合員にたいする差別がおこなわれた。国労東京地本の調べによれば、つぎのような事例が数多く見られた。

 東京南鉄道管理局の運転関係では、国労組合員の運転士のほぼ全員を本線乗務からはずし、駅の売店の売子として働かせる事業部兼務、要員機動センター、駅の営業係など運転とまったく関係のない職場に配置した。たとえば、国労の拠点職場の一つである東神奈川電車区では国労組合員全員が他職場に配属され、運転に残れる者はゼロ。蒲田電車区では現在の職場に残れたのは六七人中二人だけで、大部分が事業部や要員機動センターヘ回された。だが、動労組合員はほぼ全員が現職に残されていた。東京北・西管理局では、分会役員や活動家を中心に配転をおこない、分会機能のマヒ状態が生まれている。

 こうした国労組合員の大規模な配置転換によって、国労では分会組織の再構築を余儀なくされており、組織の危機といえそうな状態におかれている。国労は三月一八日に北海道・九州における採用で国労組合員の採用が極端に低かったのは、国鉄当局が国労組合員を差別的に扱ったもので、不当労働行為にあたるとして公労委に救済を申し立てた。

 新会社へ採用された職員のなかでも第二希望の会社へ回されたことを不満とするなど、さまざまな理由で採用辞退者が続出しており、全国で四九三八入(三月三〇日現在)もの数にのぼった。その結果、一一の新法人すべてが定員割れで発足する見通しが強まっており、新会社に行く一般職員は二〇万人程度となった。

日本労働年鑑 第57集 1987年版
発行 1987年6月25日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年8月1日公開開始


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