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日本労働年鑑 第56集 1986年版
The Labour Year Book of Japan 1986

第二部 労働運動

XI 労働組合と平和・社会運動


1 第五六回メーデー

概況

「働くものの団結で生活と権利を守り、安心して暮せる平和で自由な日本をつくろう」のメインスローガンのもと、第五六回メーデーは、八五年五月一日、全国一一三六ヵ所に合計四二三万人が参加しておこなわれた。

 統一集会が開かれたのは、東京をはじめ北海道、福島、群馬、栃木、埼玉、神奈川、富山、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、奈良、和歌山、兵庫、広島、香川、愛媛、高知、大分の二三都道県で、これまで最高だった昨年の二一都道県に新たに長野、愛媛の二県が加わり、史上最多となった。また、参加者も前年を三五万人ほど上回った。

 中央集会は二六万人が参加して、代々木公園で開催された。議長団を代表して宇佐美同盟会長が「労働組合の社会的責任を果たすためには、自由にして民主的な労働組合の統一と団結が急務」とあいさつ。主催者を代表してあいさつに立った黒川総評議長は、「戦後四〇年という節目にあたり、新しい経済中成長の見通しをもって、生活向上のために積極的に賃上げ、時短、諸権利の拡大をはかり、平和・軍縮・反核運動の前進から壮大な労働運動の統一を展望する」と強調した。今春闘については、「賃上げを五%台に乗せたものの、生活の向上という側面からみれば、力不足を率直に認めなければならない」と述べた。また、新たにスポーツ祭典を開催することにしたのは、「幅広いメーデーとするためで、いずれは都民参加のメーデーにしたいと考えたからだ」と説明した。

 つづいて、昨年は中止となった政党代表のあいさつが二年ぶりに復活した。社会、公明、民社、共産、新自ク、社民連の各党と労働福祉団体の代表が来賓あいさつをおこなった。式典は最後に、「メーデーの祝日化」と「太陽と緑の週」の法制化を要求する特別決議と「メーデー宣言」を採択。参加者は六コースにわかれて都内デモ行進に移った。

 本年の新しい試みは、式典後に国立競技場で「スポーツ祭典」が開かれたことであった。広島から送られた「平和の灯」の聖火台点火で祭典が始まり、メーデー行事に労働大臣として初めて出席した山口労相が祝辞を述べた。参加者は約四万人であったが、同盟側スタンドがほぼ満席であったのにたいし、総評側スタンドは閑散としており、両組織の新企画へのとりくみ方の違いを浮き彫りにするものとなった。

メーデーの特徴

八四年の第五五回メーデーは、メーデーの「近代化」にむけて、従来の「あり方」をいくつかの重要な点で変更した。この点は、第五六回メーデー実行委員会においてもひきつづき議論され、(1)サブスローガンの簡素化、(2)全民労協の主催団体への参加の二点は、本メーデーも引き継ぐこととなったが、(1)メインスローガンに「生活と権利を守る」を復活させたこと、(2)祝賀会の中止、(3)政党代表のあいさつの復活の三点が変更された。

 同時に、新たに「スポーツ祭典」を開催することとしたが、これにたいしても社会党の一部や共産党、日高教などいくつかの労組から反対や再検討を求める意見が実行委員会によせられた。

 「時短元年」と位置づけられた八五年のメーデーらしく、サブスローガンでは、週四〇時間制、「太陽と緑の週」の法制化など、時短の実現が筆頭に掲げられた。また、二年後に捕鯨が禁止されることから、新しく「秩序ある捕鯨と北洋漁業の確保」が登場したほか、久しぶりに「公害絶滅、水と空気と緑の保全」が復活した。

 咋年にひきつづき、本年も四月二六日に、軍拡、臨調路線反対、右翼労戦反対首都労働組合連絡会(国労東京地本、都労連、全印総連東京など一〇労組)主催で「メーデー前夜祭」がおこなわれ、六〇〇人が参加。共産党代表のあいさつをうけたあと、「メーデーを戦闘的に闘おう」とのアピールを発表した。

【第五六回メーデー宣言(要旨)】

 一八八六年五月一日、アメリカの労働者が八時間労働制を求めて立ち上がったのがメーデーの発端である。以来、幾多の困難を乗り越え、来年は一〇〇周年を迎えようとしている。われわれは改めてメーデーの持つ歴史的意義の重大さを認識し、さらに幅広く国民の間に定着するようよりいっそうの努力を傾注していく。

  われわれの生活は、きびしい状況のもとにおかれており、緊急に解決されなければならない課題が山積している。賃上げ闘争で、なお苦闘を強いられている組織もあり、さらに、減税や時短などは今後に決着を持越しており、これらの要求を実現するため闘いを強化する。

  「太陽と緑の週」の休暇法制化を柱に、週四〇時間労働制、週休二日制の要求実現にむけて、われわれは全力をあげていく。また、減税の即時実施、実質賃金の向上を中心とした国民生活の向上、福祉型経済の実現を強く求める。

  福祉後退の政策をおしすすめる一方、防衛費のみ突出を続けている中曽根政権に、国政を委ねることは出来ない。

 国際青年年の今年、われわれは世界の青年との連帯で社会の進歩に貢献するとともに、世界平和の実現にむけて粘り強く闘いをおしすすめる。被爆四〇周年を迎えて核兵器の完全禁止をひろく世界にもとめ、同時に一日も早い被爆者援護法の制定を要求する。

 今日、われわれ労働者と労働組合活動が課せられている社会的役割と責任は重く大きい。これに応えるためにも労働戦線の統一を実現していく。
 第五六回メーデーに結集した労働者と労働組合は、今次メーデースローガンで掲げた諸課題の実現にむけて総力をあげて闘うことを宣言する。

【サブスローガン】
1 労働時間の短縮・有給休暇の完全取得、週四〇時間、週休二日制の労働基準法改正、「太陽と緑の週」の法制化・正月三ヵ日の休業化実現
2 賃上げ完全獲得で生活向上、最低賃金制の確立、人事院勧告・仲裁裁定の即時完全実施
3 完全雇用の実現、失業対策の強化、職業訓練制度の充実、定年延長と六〇歳定年の法制化、中高年労働者の雇用確保、先端技術・ME等に対応する安全と雇用対策の促進、障害者の雇用拡大
4 労働基本権確立、労働基準法の全面改正、ILO条約の早期批准
5 働く婦人の地位向上、雇用における男女平等の実現、優生保護法改悪反対、婦人差別撤廃条約の批准
6 一兆五〇〇億円減税の早期実現、不公平税制是正、大衆増税・大型間接税導入反対
7 年金・医療保障の抜本改善、高齢者福祉対策の充実、社会保障制度の大幅拡充
8 平和憲法擁護、核兵器の完全禁止、全面軍縮の早期実現、非核三原則の堅持、被爆者援護法の制定
9 労働戦線統一の拡大強化、未組織労働者との連帯、国際労働組織との連帯、発展途上国との連帯
10 公害絶滅、水と空気と緑の保全、環境保護・災害対策の強化
11 秩序ある捕鯨と北洋漁業の確保

日本労働年鑑 第56集 1986年版
発行 1985年12月5日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年8月15日公開開始


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