OISR.ORG へようこそ 法政大学大原社会問題研究所

日本労働年鑑 第55集 1985年版
The Labour Year Book of Japan 1985

第二部 労働運動

XIII 農民運動


2 主要な農民運動

4 成田空港廃港闘争とその他の運動
二期工事実力阻止廃港闘争

 三里塚芝山連合空港反対同盟は、千葉県成田市の空港建設計画決定以来一八年余にわたり反対闘争を展開している。七八年五月、成田空港は四〇〇〇m級のA滑走路だけの横風用滑走路のない欠陥空港として開港したものの、いぜんとしてB・C滑走路建設工事(二期工事)は凍結状態にある。二期工事費一二〇億円余は七七年度に予算化されて以来、毎年繰り越されているだけである。八三年三月以来、反対同盟は成田用水問題、(坪共有化運動など路線上の内部対立を契機に分裂状態(北原派と熱田派)にあるが、両派とも二期工事実力阻止の構えをくずしていない。二期工事予定地内反対派農民一二人が話し合いを拒否しているかぎり反対同盟と全国の労・農・学の支援共闘も強固で二期工事の具体的展望はない。以下、反対同盟の主要な動きをみる。

 八三年八月八日、成田空港ジェット燃料輸送パイプラインが計画発表以来一二年ぶりに完成したが、これにたいし、反対同盟熱田派は、七日、パイプライン阻止の集会とデモを、反対同盟北原派も八日、総決起集会とデモによって抗議行動を展開した。ついで反対同盟熱田派は九月一五日、芝山町の二期工事予定地内の横堀共同墓地で二期工事阻止「空港反対全国決起集会」(三二五〇人)を、同日、反対同盟北原派も中核派などの支援のもとに、成田市三里塚第一公園で集会をひらき、二期着工実力阻止、話し合い交渉断固粉砕、熱田派集会の粉砕行動を展開した。また、反対同盟北原派は一〇月九日、「話し合い策動粉砕・収用法弾劾、二期阻止・空港廃港全国総決起集会」(八四〇〇人)を三里塚公園でひらき、「実力闘争だけが三里塚闘争の唯一の勝利の道であること」を確認、集会宣言を採択し抗議デモを展開した。

 反対同盟の二期工事阻止廃港闘争のつづけられるなかで、成田空港周辺市町村で、相次いで成田空港二期工事促進決議がなされた。二期工事予定地の芝山町議会も八四年三月一七日、「二期工事着工促進決議案」を県警機動隊の厳戒体制のもとで強行採決した。当日、反対同盟は緊急動員をかけ抗議行動を展開した。また、反対派農家を無視した無効決議であるとの署名運動をおこなった。

 反対同盟の管制塔襲撃事件六周年記念の総決起集会が三月二五日、開催された。熱田派は芝山町横堀共同墓地に三九五〇人(県警調べ二〇〇〇人)を結集し、二期工事実力阻止を訴え、反対同盟の統一を呼びかけた。他方、北原派は成田市三里塚第一公園に一万二一五〇人(同三四〇〇人)を結集し、二期工事着工粉砕を確認した。反対同盟の分裂と軋れきは両派の支援グループ間のゲバルトにもあらわれ三里塚闘争にとってさまざまな問題を投げかけているが、二期工事実力阻止廃港闘争は一貫してつづけられている。

成田用水阻止闘争

 反対同盟の分裂要因に成田用水問題をめぐる路線上の対立があったことはすでに指摘した(本年鑑一九八四年版三七六頁参照)。両派ともに成田用水阻止闘争をつづけているが、北原派は、成田用水問題を認めることは即空港を認めることである、と絶対反対を表明、実力で阻止する行動を展開した。その主要なものをみると、つぎのとおりである。

 四月一五日、第一波成田用水着工実力阻止行動として工事予定地の菱田地区で集会とデモ、五月六日、成田用水着工阻止第二波決起集会、辺田地区に監視ヤグラ建設、五月二〇日、「今秋二期工事強行粉砕、成田用水実力阻止、収用法弾劾、脱落派粉砕・一掃全国総決起集会」とデモ、七月一日、「成田用水実力阻止、七・六土地収用法反動判決策動粉砕、脱落派粉砕一掃、二期決戦勝利現地総決起集会集会」(反対同盟参加協力)と成田用水予定地区のデモ等々である。

漁民の原発反対運動

 青森県下北郡東通村に建設予定の東北電力「東通原子力発電所」計画は一九六五年五月に村議会で誘致決議がなされていたものであるが、福井の敦賀原発事故の影響やその後の計画変更をめぐり、当該地の白糠漁協を中心に反対の動きがではじめた。白糠漁協は、計画地がアワビ、ウニ、コンブの優良漁場であり、「漁場の放棄は死活問題であり、安全性や環境破壊につながる」として反発、八三年五月の総会で漁業補償の窓口として原発対策委員会を設置したものの、九月三〇日の漁業権補償提案をめぐり反対の動きが高まっている。なお、周辺住民により結成された「白糠の海を守る会」も反対運動を支援している。

 和歌山県日高郡日高町の関西電力「日高原発」の海上事前調査をめぐる問題で、地元の比井崎漁協は、八四年六月一七日、同町の農村環境改善センターで総会を開催したが、県当局の出席問題で紛糾、流会した。これは、原発の安全性に不信をもつ同漁協の原発反対派が「事前調査自体原発を認めること」と反発、しかも原発を誘致しなくても漁協(不正融資で経営難にある)再建は可能であるとして、事前調査を受け入れ迷惑料をとる漁協の再建案を提案、同時に県当局の出席を求める意見を提案した原発推進派に反対したもの。なお、突然流会を宣言した山本組合長は同時に組合長の辞任を表明した。

農民団体の税金対策

 全日農は各県農民組合代表とともに八四年一月一一日、国税庁交渉をおこない、農家の記帳義務導入反対を中心に収入金課税方式にたいする疑問など八三年度課税方針について交渉した。また、翌一二日、東北の各県農民組合代表と仙台国税局交渉を展開、対象品目や基準など収入金課税方式の具体的方式について交渉した。このほか各県の農民組合や労農共闘会議が農業課税の改善を要求、独自の国税局ないし税務署交渉をおこなった。

出稼連の運動

 出稼連(全国出稼組合連合会)は、八四年二月四日、東京・永田町の社会文化会館で「第一四回定期大会」を開催、八四年度運動方針を決定した。それによると、重点課題は、(1)出稼ぎしなくてもすむ諸政策の確立を前提に新年度からはじまる「新農村地域定住促進対策事業」に積極的に取り組む、(2)出稼者の労働条件、宿舎などの環境整備のための国会闘争をふくむ「出稼問題の基本対策」の確立、(3)出稼者の組織化の三点であった。大会は「賃金宣言」を確認した後、農水・労働・建設の各省および北海道開発庁、東京都にそれぞれ要請行動をおこなった。

 出稼連主催の「全国出稼者第二〇回記念大会」は翌五日、同じ社会文化会館で開催された。大会には東北・新潟・北海道からの季節労働組合の代表約六〇〇人が参加、(1)出稼者の諸要求に関する決議、(2)農林漁業政策の確立に関する決議、(3)故柴田久雄氏の労災業務上の認定をかちとる特別決議、(4)賃金宣言の実行に関する決議を採択した。また、同じ出稼連主催の「全国出稼者第二〇回記念西日本大会」(五〇人)は二月一九日、大阪・浪速区の部落解放研究教育センターで開催され、東京大会で提案された同じ諸決議を採択した。翌二〇日、大会代表団は、大阪府・市と大阪労基局に「出稼者の労働条件、雇用の改善、出稼対策連絡会の充実、元請下請関係の明確化、違法宿舎対策」などを要請した。

農村労連の運動
 農村労連(農村労働組合連合会)は「振動病対策・労災対策」や「三省協定なみ賃金」などを中心に対企業、対自治体、対労働省交渉を展開してきた。

 「農村労連第二〇回定期大会」は八四年四月七、八日の両日、東京の日本青年館で閲催され、八三年度の運動成果と八四年度運動方針が採択された。それによると、賃金・労働条件の改善として「三省協定」や「建退共済」の適用運動、林業の安全対策、賃金未払い対策などが、いのちと健康を守る運動として振動病を中心とした労災・職業病闘争の強化がそれぞれ提起された。

日本労働年鑑 第55集 1985年版
発行 1984年12月15日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年8月21日公開開始


■←前のページ 日本労働年鑑 1985年版(第55集)【目次】 次のページ→■
日本労働年鑑【総合案内】

法政大学大原社会問題研究所(http://oisr.org)