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日本労働年鑑 第55集 1985年版
The Labour Year Book of Japan 1985

第一部 労働者状態

IV 労働者の生活構造


6 労働者の転勤、単身赴任

 労働者の持家比率の増加や子弟の教育を背景として、転勤にともなう単身赴任の増加がみられ、社会問題化している。

転勤者の別居状況

 行政管理庁が、一〇都道府県内に所在する事業所を通じて、八一年四月以降に転勤した者(一五二〇人を対象にし、回収数は一一一一人)を対象に、八三年五月から六月にかけて転勤者の状況を調べた結果はつぎのようになる(行政管理庁「転居者の子弟に対する高等学校の受け入れ措置に関する地方監査の結果」一九八四年)。

 転勤者の年齢構成は、四〇歳代が八二・一%でもっとも多く、ついで五〇歳代が一四・七%、三〇歳代三・一%となる。転勤者の子弟の同伴・別居の状況をみると、全体では、子弟同伴が四三・六%、別居(子供のうち一人でも別居しているもの)が五六・四%となる。とくに高校生をもつ転勤者では、七五・九%の高い別居率となる。また、子供だけを別居させている転勤者は、一〇・八%にすぎず、別居の九〇%は、子供が母親と居住地に残り、父親が単身赴任していることになる。高校生との別居理由として、「教育水準の相違」(三一・七%)、「授業進度と必須科目の違い」(一八・六%)、「時間的に転学試験に間に合わない」(一二・七%)、「希望校等で転学試験を実施せず」(一〇・七%)などが指摘されている(複数回答)。

 また、ゼンセン同盟が、傘下七二組合の四〇二五人の妻帯者の転勤者(組合員と非組合員)を対象に八三年三月に実施した単身赴任者に関する実態調査(産業政策局「単身赴任および出向の実態」一九八三年一一月)によると、単身赴任者の年齢構成は、四〇歳代四九・〇%、五〇歳代二九・九%、三〇歳代一六・六%となり、転勤者の単身赴任率は、全体で一三・八%、五〇歳代四六・六%、四〇歳代三二・七%となる。中高年者や管理職ほど単身赴任率が高い。単身赴任の理由は、「子供の教育・進学のため」(四六・六%)と「住宅取得ずみのため」(三九・七%)が主たるものである。労働省の「雇用動向調査」(八二年)によると、一〇〇〇人以上企業の有配偶者で居所を移転した配転者に占める単身赴任者比率は、年齢計で一九・二%、五〇歳代では三六・二%、四〇歳代二六・〇%、三〇歳代一〇・九%となる(『労働白書』昭和五九年)。

 両調査によれば、子弟の教育と持家取得が単身赴任を増加させているといえる。なお、文部省は、行政管理庁の調査結果をうけ、公立高校の転学者受け入れ円滑化を指示した。

単身赴任にたいする妻の意識

 労働省婦人少年局調査(「勤労者家庭の妻の意識に関するアンケート調査」一九八三年九月実施)によると、夫の単身赴任経験者のうち、留守家庭で「困ったことがある(あった)」ものが九二%にものぼり、その内容は、「経済的負担が多くなる」が六四%、「子供のしつけ、勉強、進路など」四〇%、「夫の生活が分からず不安」二五%などがあげられている。単身赴任は、留守家庭の妻にも負担を強いているといえる。

転勤者対策の実態

 企業の転勤者対策をみると(生産性労使会議調査、一部・二部上場企業一一三社の結果、八三年九月調査)、転勤者の持家借上げ制度あり(五八・四%)、転勤者持家借り手斡旋制度あり(三〇・一%)、転勤者の子女の転校費用補助あり(四二・五%)、単身赴任者にたいする帰家手当あり(三二・七%)が、また、ゼンセン同盟の単身赴任者の労働条件調査(前記調査)では、別居手当支給(六九・四%)、一時帰省にたいする交通費支給(五〇・〇%)、赴任後に家族が赴任地へ行く場合の交通費支給(一・三%)、単身赴任者の食事対策がとくにないもの(四五・八%)、健康面の配慮あり(八・三%)となっている。

日本労働年鑑 第55集 1985年版
発行 1984年12月15日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年8月21日公開開始


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