八三年春闘における賃上げ妥結状況を、各種調査(労働省、国民春闘共闘、同盟、全民労協、日経連)別に掲げ、主として労働省調査(第92表)を中心にしつつ、いくつかの特徴を指摘することにしよう。
賃上げ要求・妥結状況要求額一万五〇〇二円、要求賃上げ率七・四二%となり、前年(一万八〇八〇円、九・四二%)にくらべ額で三〇七八円、率で二・〇〇ポイント下回った。要求賃上げ率七・四二%は、労働省調査が開始された一九五六年以来もっとも低いものである。妥結額は八九六四円、賃上げ率四・四〇%(前年一万三六一三円、七・〇一%)となり、春闘史上もっとも低い伸びにとどまった。昨年にくらべ要求額が低下したものの、妥結額がさらに大きく低下したため、妥結率(要求額にたいする妥結額の割合)は昨年の七五%から六〇%まで大幅低下している。
また、賃上げ額の企業間のバラツキは、ここ数年縮小する傾向をみせていたが、今年はそれが拡大し、最近では一九七八年、七五年につぐ大きなものとなった。賃上げ額が低いなかで、なおかつ企業間格差が拡大したといえる。賃上げ額の企業間分散を四分位分散係数でみると、過去三年間は○・○六と小さなものであったが、今年は〇・一五と増大した。一九七五年の分散係数が〇・一六であったが、今年はそれに近い賃上げ額の企業間格差が生じたことを示している。
他の調査によって妥結額と妥結率をみると、労働省調査とほぼ一致しており、日経連八八五五円、四・三六%、国民春闘共闘会議九一九五円、四・五%、同盟八四二一円、四・四五%、全民労協八七三三円、四・四五%、国民春闘共闘会議・同盟共同集計八八九九円、四・六%である。
つぎに、賃上げ妥結状況を産業別にみると(労働省調べ)、妥結額の高い産業は、新聞・放送一万四七二七円、水産・食料品一万一〇五九円、証券一万四五九円、卸・小売一万二〇九円で、低い産業は、鉱山六二六八円、造船六八〇〇円、鉄鋼六八二二円、車両七一〇〇円、繊維七五九五円であり、その他は八〇〇〇円台と九〇〇〇円台に二分している。
賃上げ率を産業別にみると(第92表)、高い産業は、証券五・七六%、新聞・放送五・四九%、水産・食料品四・九九%、自動車四・九七%、卸・小売四・九六%などで、逆に低い産業は、鉄鋼三・一七%、造船三・二一%、鉱山三・二二%、車両三・五三%などとなっており、バラツキが大きい。鉄鋼と造船の賃上げ率がきわめて低かったことが今年の特徴といえる。
規模別妥結状況企業規模別の妥結状況を春闘共闘、同盟調べによってみておこう。加重平均で賃上げ率をみると一〇〇〇人以上(春闘共闘四・五%、同盟四・三七%)、三〇〇〜九九九人(四・六%、四・七三%)、二九九人以下(四・九%、四・六四%)となっている。妥結額では、一〇〇〇人以上(春闘共闘九〇九三円、同盟八五八〇円)、三〇〇〜九九九人(九四一二円、八二一七円)、二九九人以下(一万一三四円、七七二〇円)である。このように企業規模別にみた賃上げ率は、一〇〇〇人以上規模の大企業にくらべ、三〇〇〜九九九人規模と二九九人以下規模のほうがいくぷん高めの水準となっており、今年の特徴といえる。
日本労働年鑑 第54集 1984年版
発行 1983年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 ●
2001年8月28日公開開始