同盟の八三年賃闘方針の基本は、前にふれた「賃金白書」に述べられている。また同盟は八三年一月一一日、第一回中闘戦術会議をひらき、八三賃闘にあたっての具体的活動要綱を決定するとともに、七%要求基準の完全獲得に向けた体制を確立するため、八三賃闘でも従来までの先行組合方式を継続すること、経営側の賃上げ抑制攻撃には、ストをふくみ、あらゆる手段でこれを打破していくことなどを確認した。
また二月二四日の第三回中央闘争委員会では、先行組合は三月末、遅くとも四月二日までに回答を引き出し、高水準の先行相場を形成すること、八三賃闘最大のヤマ場を四月上・中旬に設定することを確認した。ついで三月一〇日、第四回中闘をひらき、同盟全体で約五〇〇の先行組合選定が完了したことを確認、八三賃闘全体の戦術的枠組みを検討し、以下の七項目確認にわたる方針を決定した。
【第四回中闘確認事項】三・二五中央総決起集会
1 八三賃闘は本格的団体交渉の時期を迎えつつある。傘下各組合は、同盟および当該産別の要求基準を実現することこそが不況を克服してわが国経済の活力を取りもどし、経営基盤を安定させる唯一の道であることを経営側に理解せしめるよう最善の努力をする。
2 八三賃闘の突破口を切り開く先行約五〇〇組合の役割は従来にも増して重要である。先行組合第一陣は三月末遅くとも四月二日、第二陣は四月五日までに妥結するにたる高額回答を引出す。回答が不満足な場合は、強力な闘争を組み、四月第三週の最大の山場前までに妥結水準に向けて回答を積みあげる。
3 最大の山場を四月第三週とし、できるだけ多くの産別・単組が集中して第一次回答を引出す。この集中決戦の場に参加する産別・単組は先行相場を踏まえ互に相乗効果を高めながら高水準の相場を形成する。
4 後段に位置する産別単組は形成された相場を踏まえながら、原則として連休前結着に向けて最大限の努力を傾注する。
5 回答に不満な組合は断固たる実力行使を背景に闘争を継続し目標を貫徹する。実力行使に突入した組合に対しては、同盟全組織をあげて万全の支援を行う。
6所得税減税、人勧問題については三月二日の労働四団体、全民労協声明にもとづいて、引続きその早期実施を迫るべく強力な闘いを継続する。
7 八三賃闘の賃上げ要求基準七%は一兆円所得税減税の実施を織り込んだものである。われわれは、新たな決意をもって財界、経営側の賃上げ抑制を打破し、要求の完全獲得を目指して闘う。
同盟は三月二五日、東京・明治公園に二万五〇〇〇人の組合員を結集し、「八三賃闘要求貫徹中央総決起集会」をひらいた。集会では、賃上げ抑制を貫こうとする日経連、経団連等の主張に反論し、七%賃上げ要求基準および一兆円所得税減税をはじめとする政策諸要求の実現へむけ、ストをも辞さずたたかう決意を明らかにした「賃闘宣言」を満場一致で確認した。
集会は、この「賃闘宣言」とあわせ、減税の規模、実施時期を今国会中に明示することを求める「一兆四千億減税を要求する決議」そして「人事院勧告と仲裁裁定の完全実施を実現する決議」、「統一地方選挙、参議院選挙必勝に関する決議」を採択した。
第六回中闘戦術会議、ヤマ場への方針確定先行組合は、四月六日の第二陣の回答期限をむかえ、同盟全体で二九二組合が、平均一万一七六円(五・五二%)の回答を引き出し、うち三〇組合が、平均一万二一一八円(六・四四%)の水準で妥結した。同盟は七日、第六回中闘戦術会議をひらき、この先行組合の成果をふまえ、第三週のヤマ場を全力でたたかいぬく方針をつぎのとおり確認した。
また経営者のきびしい態度にかんがみ、闘争体制をいっそう強化する必要から、ストライキ組合にたいする同盟としての支援活動について、五項目にわたり確認した。【八三賃闘における争議支援活動について】賃闘、四月第三週のヤマ場へ
八三賃闘において平和的解決が困難となり、やむなく実力行使に突入する同盟傘下組合に対し、次の基準に基づき同盟としての支援活動を実施する。
(1) 二四時間以上の全面ストに突入する組合に対し、激励オルグの派遣、会長の檄、陣中見舞を贈る。
(2) 陣中見舞の額は八二賃闘の基準による。
(3) 実力行使が長期に及ぶときは、争議支援対策委において最も効果的な支援活動を検討のうえ、活動を展開する。
(4) 緊急を要するときは、事務局において支援対策を検討し機動的に対処する。
(5) 争議支援に要する経費は、八三賃闘終結後、集約し、連帯活動基金の支出発議を行う。
【第六回中闘戦術会議確認事項】
1 四月六日現在、先行二九二組合が平均一〇、一七六円、五・五二%の回答を引出し、うち三〇組合が一二、一一八円、六・四四%で妥結した。この結果は、きわめて厳しい情勢のなかで、今次賃闘の突破口を切り開く先行組合としての役割を十分に果したものである。われわれはこれら先行組合の奮闘に敬意を表するとともに、その成果を高く評価する。
2 四月第三週の最大の山場に参加するすべての産別・単組は、この先行組合の成果を踏まえ、それぞれの産業、業種、企業のおかれた条件のなかで最大限の回答を引出すべく全力を傾注する。
3 経営側の抵抗を排除し、目的を貫徹するため各組織段階を通じて闘争体制のより一層の強化を進める。すでに相当数の組合がスト権を確立しており、誠意のない経営者に対しては断固としてストライキを決行する。ストライキに突入した組合に対しては中央・地方を通じて十全の激励・支援活動を展開する。
四月一二日、金属労協への集中回答がおこなわれた。八三賃闘は、四月第三週の最大のヤマ場をむかえた。一二日、ゼンセン大手にも、綿紡四五〇〇円(三・〇九%)、化繊五六九〇〜六七五〇円(三・〇九%)などの回答が出された。だが、ゼンセン大手は回答を拒否、ストをふくむ闘争体制強化を決めた。海員外航も一三日の六一〇〇円回答を拒否した。また全金同盟でも、一二〜一四日の解決ゾーンに相ついで回答を引き出し、上積みを実現した。自動車労連では一二日の日産自動車、日産車体につづき、一三日には日産ディーゼル、部品関係、一四日には販売関係で相ついで回答を引き出した。また電力労連各組合は、一四日の回答日に九六〇〇円(四・二%)の回答で妥結した。全化同盟、一般同盟、紙パ総連合、全食品同盟も回答引き出しをすすめた。
一四日夕刻に中闘委事務局がおこなった集計によると、回答・妥結計七一八組合の平均は、八八三四円(四・九一%)、うち妥結一六二組合の平均は、一万五円(五・五七%)となっていた。
海員外航、三・八%で妥結へ四月一八日、海員組合外航部門交渉が妥結した。海員組合の労働協約改定交渉は、外航部門を先行としてすすめられてきたが、船主側は八日の交渉で労働時間改訂などの船主要求を撤回し、一三日には定昇込み六一〇〇円の回答をおこなってきたが組合はこれを拒否、一五日にあった第二次回答六四〇〇円も組合は白紙撤回させた。その後、外航交渉は小委員会の場に移され、一八日未明の小委員会をへて同日一四時からの第九回交渉でベースアップで二一一〇円、定昇四六四〇円、計六七五〇円、三・八〇%の回答を引き出し妥結した。先行する外航交渉の妥結をふまえ、他の中央交渉各部門の交渉が進展した。なお、八三賃闘は後半のたたかいに入って、実力行使に入る組合が増加したが、このうち、二四時間以上の全面ストライキに突入した組合は四月一九日現在、ゼンセン同盟、全金同盟の九組合(三一〇二名)である。
賃闘終盤を迎え、妥結進む四月第四週を経過して、大手組合がほぼすべて解決へいたり、中堅組合でも解決をみるところがあいついだ。この結果、四月二五日までに同盟中闘事務局に報告のあった妥結組合数は九八七組合に達し、その平均妥結水準は、中小規模組合のひきつづく努力に支えられて八三○○円、四・八七%となっている。これを規模別にみると、一〇〇〇人以上規模組合の妥結水準が八三八四円、四・五六%であるのにたいし、三〇〇人以上一〇〇〇人未満では八三五九円、四・八六%、また三〇〇人未満規模では八二五七円、四・九四%となっており、終盤局面に入るなかでの中小規模組合がひきつづき健闘をつづけていることがわかる。この妥結組合をふくめ、回答を引き出した組合は全体で一七四七組合に達し、妥結・回答あわせた全体平均は、八三一五円、四・七一%となっていた。
ストライキ、前年を上回る四月月内決着をめざして連休前に多くの組合が追い込み交渉にはいったが、そのなかでストライキに突入する組合も急速に増えた。同盟中闘争議支援対策委が五月九日に集約したところによると、五月九日現在までに、二四時間以上のストライキを実施した組合は、同盟全体で一一六組合、参加人員は計一万四一九〇人に達した。昨年賃闘における五月一〇日時点での集計は一一一組合、一万四八一人であったので、同時点で比較すると今年は五組合三七一〇人昨年を上回っていることになる。
産別ごとのスト組合数および参加人員は、つぎのとおり。ゼンセン同盟=四八組合、五七五一人、全金同盟=八組合、七二一四人、全化同盟=二組合、四一二人、交通労連=五七組合、八〇〇人、一般同盟=一組合、一三人(なお、二四時間未満のスト実施組合はこのなかにはふくまれていない)。
八三賃闘終結へ、四・五%(加重)同盟中闘委事務局は五月二五日、八三賃闘の最終コンピュータ集計をおこなった。同日までに中闘委事務局に報告のあった妥結組合は二五四六組合で、このうち組合員数、平均賃金の明らかな二二九九組合(約一三三万人)の賃上げ結果は、単純七八五五円(四・六五%)、加重八四二一円(四・四五%)となった。この段階でなお約三〇〇組合が有額回答を引き出しつつも妥結にいたっていないが、これら回答組合を含めた集計でも妥結結果と大きな違いはみられない。八三賃闘の結果を集計面からみると、つぎのようないくつかの特徴を指摘しうる。
(1)全体の妥結結果を規模別にみると、三〇〇〜九九九人(中規模)の賃上げ率が、単純、加重とももっとも高く、次いで三〇〇人未満(小規模)、一〇〇〇人以上(大規模)の順となった。八三賃闘序盤から中盤にかけての規模別集計では小規模の賃上げ率がもっとも高かったが、後半から終盤にいたってこのような逆転が生じたのは、同盟の集計では小規模に属する組合のうち圧倒的多くが製造業に属していることと大きな関連があると考えられる。回答段階にある二八九組合のうち二六〇組合はこの小規模に属している。(2)全体で四・五%(加重)の賃上げ率のなかで、産業別にみた賃上げ率が上下に大きくバラついたことも八三賃闘の特徴である。この結果昨年からしだいに大きくなっていた分散係数は今年も昨年を上回って〇・一五となった。(3)一方、妥結の金額分布では、最多妥結金額帯が昨年の一万二〇〇〇円を大きく下回る七〇〇〇円台になったのをはじめとして、この金額帯への集中が二〇%と、昨年の最多金額帯への集中比率の一七%を上回る結果となった。また、要求金額にたいする妥結率も六二%(加重)と昨年の七四%を大きく下回った。
日本労働年鑑 第54集 1984年版
発行 1983年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 ●
2001年8月28日公開開始