老人保健法案は、さきの第九四通常国会の八一年五月一五日に衆議院に提出され、同国会では一度も審議されることなく継続審議とされた(本年鑑一九八二年版五一四ページ参照)。同法案の第九五臨時国会における審議は、一〇月一五日の衆議院本会議の趣旨説明からはじまり、社会労働委員会の審議に移った。この中で、修正の話し合いが活発化し、自民党は、老人保健法案要綱に対する修正案を一一月五日に提示した。この修正案は、野党、日本医師会、健康保険組合連合会の修正要求をかなり受け入れたもので、一一月一二日の社会労働委員会において、自民、公明、民社の三党共同提案というかたちで可決された。さらに、翌一三日の衆議院本会議でも可決され参議院に送付された。同修正案は、支払方式の中医協審議、一部負担金の軽減、保険者拠出金の按分率の法定化などの七項目からなっており、その要旨はつぎのとおりである。
【老人保健法案に対する修正要旨】
一、老人保健審議会は、厚生大臣の諮問に応じ、保険者の拠出金等に関する重要事項を調査審議するものとすること。
二、医療の取扱い及び担当に関する基準並びに医療に要する費用の額の算定に関する基準については、厚生大臣が中央社会保険医療協議会の意見を聴いて定めるものとすること。
三、医療は、健康保険法及び国民健康保険法による保険医療機関等が取り扱うものとすること。
四、医療の対象者に、六五歳以上七〇歳未満の者であって政令で定める程度の障害の状態にあるものを加えるものとすること。
五、一部負担金について、つぎの修正を行うこと。
(1) 外来時一部負担金の額を五〇〇円から四〇〇円に改める。
(2) 入院時一部負担金を支払わなければならない期間を四ヵ月から二ヵ月に改める。
(3) 市町村長は、厚生省令で定めるところにより、特別の理由により一部負担金を支払うことが困難であると認められる者に対し、一部負担金を減免することができるものとする。
六、老人の医療に要する費用の額と加入者の総数による保険者拠出金の按分率を二分の一と法定すること。
七、保険者拠出金に対する国庫補助率は健康保険法、国民健康保険法等に基づく療養の給付等に要する費用に対する国庫補助率と同率と法定すること。
八、その他所要の修正を行うこと。
なお、今回の修正による財政影響は、一般会計予算(八一年度ベース)で約一〇〇億円の支出増と予想されている。これは、一部負担が原案より軽減されたことおよび六五歳以上のねたきり老人を新たに対象としたことによる支出増であり、これに連動して保険者負担も増えることになる。
参議院での審議経過参議院では、一一月二〇日の本会議で趣旨説明と質疑がおこなわれ、二四日に社会労働委員会で提案理由説明がおこなわれたが、審議日程の関係から二七日の参議院本会議で継続審議とされた。
第九六通常国会の四月六日から審議が開始されたが、延長国会をめぐる混乱で審議が中断され、国会再開後七月六日に約二ヵ月ぶりに審議が再開された。同法案については、参議院においても修正が予想されており、また、同法案が継続審議とされた法案で、再修正がなくても、参議院で採決後、衆議院でも採決されることとなっているため、老人保健法案の成立は八月に入るものと予想され、一〇月実施は困難な情勢となった。
日本労働年鑑 第53集 1983年版
発行 1982年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月4日公開開始