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日本労働年鑑 第53集 1983年版
The Labour Year Book of Japan 1983

第三部 労働政策

IV 社会保障


1 行政改革と福祉見直し

行革特例法成立 

 第二次臨時行政調査会の第一次答申を受けて、ゼロ・シーリングに伴う八二年度予算要求の経費節減対策として、村山厚相は七月三一日に、「次の臨時国会に厚生年金保険の国庫負担減額および児童手当の所得制限強化の改正案を提出する」ことを決めた(本年鑑一九八二年版五二ページ参照)。そして、八月二八日付で、厚生年金の特例措置案を社会保険審議会および社会保障制度審議会に、児童手当の特例措置案を社会保障制度審議会にそれぞれ諮問した。この諮問にたいして、社会保険審議会は九月一七日、また、社会保障制度審議会は翌一八日、それぞれ答申書を村山厚相へ提出した。両審議会の答申は、厚生年金の特例措置案にたいして、国庫負担減額分を財政再建後に繰り入れること、および国庫負担率を変更しないことを前提に「やむを得ないものである」として了承している。また、社会保障制度審議会は同時に諮問されていた児童手当の特例措置案にたいして、「新しい工夫のあとが認められる」として了承するとともに、制度の再検討について早急に着手するよう求めた。

 これらの特例措置案は、臨調答申に沿って三六本におよぶ現行法の改正項目を一本化した形式で、八二年度から八四年度までの財政再建期間に限った時限立法である「行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等の縮減その他の臨時の特例措置に関する法律案」(行革特例法案)に一括され、九月二四日に第九五臨時国会に提出された。そして、一一月二七日の参議院本会議において、行革特例法は成立した。成立した行革特例法のうち社会保障関係の内容はつぎのとおりである。

【行革特例法・社会保障に関する部分】
 一、厚生年金保険事業等に係る国庫負担金の繰入れ等の特例

 特例適用期間の各年度における厚生年金保険の保険給付および船員保険の年金たる保険給付等に係る国庫負担については、それぞれ現行の規定による国庫負担の四分の三を基準等として予算で定める額に減額して繰入れるものとすることおよびこれらの措置により各事業の財政の安定が損なわれることがないよう、特例適用期間経過後において国の財政状況を勘案しつつ、減額分に相当する額の繰入れその他の適切な措置を講ずるものとすること。

 二、児童手当の支給要件に係る特例等

 (1) 八二年六月から八五年五月までの月分の児童手当に係る所得制限額は、老齢福祉年金の受給者本人に係る所得制限額を基準として政令で定めるものとすること(現行六人世帯で四五〇万円の所得制限額を三九一万円とする)。

 (2) 八二年六月から八五年五月までの間、児童手当に係る所得制限により児童手当が支給されない被用者または公務員であって、政令で定める一定の所得未満のもの(三九一万円から五六〇万円未満の被用者または公務員)に対し、第三子以降の児童一人につき月額五〇〇〇円の特例給付を行うものとし当該特例給付に要する費用のうち被用者に係るものについては、一般事業主から徴収する拠出金をもって充てるものとすること。

 (3) 児童手当制度については、(1)および(2)の特例措置との関連をも考慮しつつ、その全般に関して速やかに検討が加えられたうえ、この特例措置の適用期限を目途として必要な措置が講ぜられるべきものとすること。

 なお、この厚生年金の特例措置により年間約一九〇〇億円、児童手当の特例措置により約六〇億円の歳出削減の財政効果があるものとされている。

第二次臨調基本答申 
 第二次臨時行政調査会は八二年七月三〇日「行政改革に関する第三次答申(基本答申)」をまとめ、鈴木首相に提出した。

 この答申は、五月に臨調に提出された第一から第四までの各部会報告を検討してまとめられたもので、八一年七月、八二年二月につづく第三次答申であるが、緊急提言を主内容とした前二回の答申とは異なり、国の機構、制度および政策の全般について見直しをおこない、中長期的な展望に立って行政のあるべき姿、今後の行政改革の基本的な方策を提示する「基本答申」として位置づけられている(答申の内容の全体については、本年鑑特集「臨調=行政改革と労働組合」参照)。

 答申は、社会保障について、とくに社会保障関係の費用増大への対応が重要であり、社会保障制度の改革は緊急の課題であるとの認識に立ち、年金制度と医療制度に関するつぎのような改革方策を提示している。

【基本答申・社会保障に関する部分】
 一、年金制度の改革等高齢化社会への対応
(1) 高齢者雇用の推進
 社会保障施策との連携を図り、民間企業の活力を生かし、総合的な高齢者雇用政策を確立し、積極的に推進する。
(2) 年金制度の改革
 全国民を基礎とする統一的制度により、基礎的年金を公平に国民に保障することを目標とし、改革を進める。
 (1)公的年金の公平化を図り、被用者年金の統合を図る等により、段階的に統合する。当面、国鉄共済年金について類似共済制度との統合を図る。

 (2)将来の一元化を展望しながら、制度をまたがる併給調整等を進めるとともに、給付水準の適正化、支給開始年齢の引き上げと弾力化、保険料の引き上げ等により、制度運営の安定化を図る。被用者の無職の配偶者に対する年金の保障の問題を解決する。

(3) 年金行政の一元化
 現在分立している年金行政組織を一元化する。まず年金に係る現業業務の処理を社会保険庁に一元化する。
(4) 改革の手順

 (2)および(3)の改革を進めるには、政府は、年金問題担当大臣を定め、改革の内容、タイムスケジユール等について、早急に検討に着手し、昭和五八年度末までに成案を得て、速やかに実施に移す。

(5) 恩給制度
 当面第一次答申の趣旨を尊重し、年金制度とのバランスをとるために必要な見直しを行う。
 二、医療費適正化と医療保険制度の合理化等
(1) 医療費の適正化
 一次答申の趣旨に沿った医療費適正化対策を一層推進し、医療費総額を抑制する。
(2) 医療保険制度の合理化
 (1)高額な医療は適切に保障する一方、軽費な医療には受益者負担を求める方向で制度的改善を図る。本人、家族間の格差の問題を含め給付の見直しを行う。
 (2) 国民健康保険制度は、広域化等保険制度としての安定化を図る方向で改革を行う。また、国庫補助制度の改善合理化を検討する。
 (3)日雇労働者健康保険制度等対象が限定された制度の在り方に早急に検討を加え、合理化を図る。
 (3) 医療供給の合理化

(1)公私医療機関の位置付けを明確にする等総合的かつ効率的な医療供給体制の整備を計画的に進める。国立医療機関は、高度先駆的医療や地域の医療計画における中核的施設としての機能を明確化し、整理合理化を行う。

(2)医療従事者について、将来の需給バランスを見直し、医師の過剰を招かないよう合理的な医師養成計画を樹立する。

 この答申を受け鈴木首相は、「最大限尊重」を約束、政府も「答申の最大限尊重」との内閣声明を八月一〇日をめどに閣議で決定し、答申実行の手順についての「行政改革大綱」の作成作業にはいることとなった。

日本労働年鑑 第53集 1983年版
発行 1982年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月4日公開開始


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