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日本労働年鑑 第53集 1983年版
The Labour Year Book of Japan 1983

第三部 労働政策

III 賃金政策


1 人事院の公務員給与勧告

人事院勧告
 人事院は、一九八一年八月七日、国家公務員の給与について、国会および内閣に報告をするとともに、あわせて、その改善について勧告をおこなった。

 給与に関する報告によれば、給与法の適用をうける一般職の国家公務員は、咋年とほぼ同数の約五〇万人(このうち行政職俸給表(一)(二)の適用者は約二九万人)であった。八一年四月現在における行政職関係の基準内賃金についてみれば(四月遡及改定分をふくめ)、一万一五二八円(五・二三%)民間が公務員を上回っている。また、扶養家族手当、住宅手当、通勤手当についても民間が上回っている。特別給については民間とほぼ均衡している。消費者物価指数は、四月現在で前年同月にたいし五・二%の上昇を示している。以上のような諸事情を勘案して、報告は、給与改定の必要があるとした。勧告のおもな内容は以下のとおりである。

 (1)俸給表の改定について各俸給表の改定を提示しているが、それについての人事院の「説明」はつぎのとおりである。

  行政職俸給表について、民間給与の傾向等に照らし、世帯形成時に対応する職員の給与の引上げを軸として中堅層職員の給与の改善に重点を置きつつ改定を行うとともに、他の職種の職員の俸給表については、行政職俸給表との権衡を基本とし、民間給与の実態をも考慮した改定を行うことにより、全俸給表の全等級にわたる改定を行うこととした。

  なお、指定職俸給表については、昭和五三年の据え置き以来、参考としている民間企業の役員給与との開きはますます拡大してきている(本年においては、各省庁事務次官等の場合、その開きは約二五%となっている。が、この際は行政職と同程度の改定にとどめることもやむを得ないものと考えて措置した。

 (1)初任給については、一般の事務・技術系の場合、その俸給を大学卒(上級乙試験)一〇万一、九〇〇円(現行九万七、〇〇〇円)、短大卒(中級試験)九万一、五〇〇円(現行八万七、二〇〇円)、高校卒(初級試験)八万五、九〇〇円(現行八万二、〇〇〇円)とした。

 (2)職種別の改善に当たっては、大学、高等専門学校の助教授以下の教官及び試験研究機関の研究員について昨年に引き続き配慮した。

 (2)諸手当については、扶養手当などの引上げについて以下のとおり勧告している(「説明」による)。

 (1)民間の企業内における給与の地域差をみるため、昭和五三年に続いて本年も地域差関連手当の状況を調査したところ、東京、大阪等の大都市の場合、前回同様、おおむね一〇%程度の地域差があった。これらの実情を考慮し、調整手当について、給与の地域別配分の適正化を図るため、東京、大阪等の大都市に勤務する職員に対する支給割合を九%(現行八%)に改めることとした。また、指定官署(八%)の職員、医師等及び新東京国際空港地区に移転した官署等に勤務する職員の支給割合についても、これとの均衡上、同様の措置を講ずることとした。なお、支給地域とされている市町村の区域を昭和五六年四月一日現在のものに改めることとしている。

 (2)扶養手当について、民間におけるこの種の手当の支給状況等を考慮して、支給月額を次のとおり引き上げることとした。
  配 偶 者  一万二、〇〇〇円(現行一万一、〇〇〇円)
  配偶者のいない職員の扶養親族のうち一人
         八、〇〇〇円(現行七、五〇〇円)
  なお、その他の扶養親族については現行のままとした。

 (3)交通機関等利用者に対する通勤手当について、民間における支給状況及び職員の通勤の実情を考慮し、全額支給限度額を一万七、〇〇〇円(現行一万六、〇〇〇円)に引き上げることとした。これに伴い最高支給限度額は一万九、五〇〇円(現行一八、五〇〇円)となる。

  右の改定については、交通機関等と自転車等を併用する者の場合も同様とした。
  なお、自転車等の交通用具使用者に対する手当額は、民間においてこの種手当を改定した事業所の割合が少ない等の事情を考慮して、本年は改定しないこととした。

 (4)借家・借間居住者に対する住居手当について、本年七月、公務員宿舎の使用料が平均一六・九%引き上げられたことを考慮して、一か月当たり九、〇〇〇円(現行七、〇〇〇円)を超える家賃、間代を支払っている職員に対して支給することに改めるとともに、支給月額については、民間における支給額の状況等を考慮して、家賃、間代と九、〇〇〇円(控除額)との差額が全額支給限度額(七、五〇〇円――据え置き)を超える場合の二分の一加算の限度額を六、五〇〇円(現行五、五〇〇円)に引き上げることとした。持家居住者に対する手当については、現行どおりとした。

 以下このほか、医療職俸給表(一)にかかわる初任給調整手当について本項末尾掲載のとおり勧告している。
 (3)期末・勤勉手当については民間とほぼ均衡がとれているので、年間四・九ヵ月の現行のままとした。
 (4)この改定は、八一年四月一日から実施することとした。

 この勧告の特徴についてみると以下のとおりである。まず引き上げ額は、民間との較差を一万一五二八円埋めるものであり、率にして五・二三%の引き上げである。時系列的にみると第122表のとおり、七七年以来四年ぶりに五%を上回ることになった。また、昨年につづいて、引き上げ率が前年を上回る率になっている。しかし、本年の引き上げ率五・二三%という幅自体は、七六年以来の低い率であることに変わりはない。

 官民較差の内訳は第123表に示すとおりであるが、較差は前年に比べて拡大している。なお、俸給表の改定に当たっては、世帯形成時に対応する職員(七等級五号俸付近)の給与の引き上げを軸とし、三〇歳台なかばの中堅層職員(五等級七号俸付近)の給与の引き上げを配慮し、五〜七等級の職員に厚い改善がなされている(第124表 )。

 人事院勧告にたいして、公務員共闘は、六%要求にほど遠く、公務員労働者の苦しい生活実態を無視したもので、臨調答申の抑制措置に屈服したものであると批判の声明を発表した。全官公も、あまりにも低額であり、不満の念を禁じえないという声明をだした。

勧告制度の堅持と公務員制度の見直し

 行政改革との関連で、公務員給与制度について各方面で論議がおこなわれているが、今回の勧告に際して、人事院は「報告」のなかで勧告制度の堅持を明らかにした。また、昨年の「報告」のなかで抜本的検討を打ち出した公務員給与制度について、今年も再度、改善の方向を強調している。

 【人事院勧告制度についての報告】

  近時、公務員給与のあり方については、行政改革との関連において、様様な論議がなされているが、本院としては、既に広く認識されているように、公務員がひとしく勤労の対価によって生計を維持する者でありながら、一般の勤労者とは異なって労働基本権を制約され、自らの勤務条件の決定に直接参加できる立場にないことに十分な考慮が払われなければならないものと考える。公務員については、労働基本権制約の代償措置として人事院勧告制度が存し、情勢適応の原則に基づいて民間の給与水準との均衡を図るためになされる本院の給与に関する勧告がほとんど唯一の給与改善の手段となっているのであって、人事院勧告を通じて公務員の給与を決定する現行の方式は、公務員給与を民間給与と均衡した適正な水準のものとするための確立された制度としてこれを維持することが、公務員をして安定した労使関係の下、安んじて職務に専念させることとなり、公務の公正かつ能率的な運営に寄与するものであると考える。

【公務員制度の見直しについての報告】

 昨年の報告で表明した長期的かつ安定的な人事行政諸施策の策定については、既に所要の調査研究に着手しているところであり、行政環境の変化、行政効率化の要請等をも踏まえて、給与制度をはじめ、採用、昇進等の任用制度、研修制度その他人事行政諸制度全般にわたる検討を精力的に進めていきたいと考えている。このうち、給与制度に関しては、職務給の原則及び成績主義の原則を踏まえ、適正な給与配分を確保するための給与体系の確立を目指すこととし、具体的には、基本的給与である俸給については、職務の分類を基礎とした俸給表の再編成、職務内容の多様化・高度化に対応した等級構成の整備、定年制度の実施をも考慮した号俸構成及び昇給制度のあり方等を、補完的給与である諸手当については、それぞれの機能を考慮した整備等を検討課題として採り上げていく所存である。

【人事院の給与勧告(八一年八月)】
 次の事項を実現するため、一般職の職員の給与に関する法律を改正することを勧告する。
一、俸給表及び諸手当の改定
(一) 俸給表
 現行の俸給表を別記のとおり改定すること。(別記略)
(二) 諸手当
 l 初任給調整手当について
 (1) 医療職俸給表(一)の適用を受ける医師及び歯科医師に対する支給月額の限度を二〇万五、〇〇〇円とすること。

 (2) 医療職俸給表(一)以外の俸給表の適用を受ける医師及び歯科医師で、医学又は歯学の専門的知識を必要とする官職にあるものに対する支給月額の限度を三万九、五〇〇円とすること。

 2 扶養手当について(略、本文参照)
 3 調整手当について(略、本文参照)
 4 住居手当について(略、本文参照)
 5 通勤手当について(略、本文参照)
 6 筑波研究学園都市移転手当について
  調整手当に関する措置との均衡上、支給割合の限度を一〇〇分の九とすること。なお、この手当は、当面、現行のまま存置するものとすること。
 二、一の改定は、昭和五六年四月一日から実施すること。

 なお、八一年八月七日の人事院の給与制度勧告にもとづいて第九六回国会(常会)に提出された「一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(案)」は、同年一二月二二日に成立した。勧告のうち、調整手当及び指定職俸給表の改定の実施時期が八二年四月一日とされたこと、俸給の特別調整額一種及び二種のいわゆる管理職員の俸給等につき八一年四月一日から八二年三月三一日までの間額を据え置いたことが勧告と異なる措置であり、八一年度に支給する期末手当及び勤勉手当については改正前のベースを基礎とすること及び上記管理職員に対していわゆる逆転防止のための手当を支給することとしたことが新たに付け加えられた措置であるほかは、勧告どおりとされた。

日本労働年鑑 第53集 1983年版
発行 1982年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月4日公開開始


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