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日本労働年鑑 第53集 1983年版
The Labour Year Book of Japan 1983

第二部 労働運動

VI 権利闘争


2 スト権立法闘争と国鉄二〇二億損害賠償請求訴訟の動向

四野党の「公労法等の改正に関する覚え書き」

 スト権奪還闘争の一環としてスト権立法闘争がここ数年官公労各組合、とりわけ公労協各組合において重視されてきたところである。スト権回復の立法化については各政党においても検討作業が進められているが、社会党、公明党、民社党、社民連の四野党間での協議の結果、一九八一年一〇月一三日に合意が成立し、「公労法等の改正に関する覚書」が作成された。

 右覚書の「労働基本権確立のための基本要綱」はつぎのとおりである。
【労働基本権確立のための基本要綱」
一、憲法に保障された労働基本権を回復し健全な労働運動の発展と近代的な労使関係の樹立のため、法改正を行なう。
二、三公社五現業のストライキが国民生活に重大な影響を及ぼす場合の一定の制限(必要最小限)を法制化する。
三、右の制限はストライキに至るまでの民主的な手続と緊急調整制度を骨格として立案する。
四、当事者能力の拡大をはかるが、国会の審議機能は承認する。
五、以上の点から法体系としては、
 (1)労組法、労調法に基盤をおき
 (2)公労法は公共企業の特殊性をいかす立場とする。
 (3)その他、公労委を充実して存置、民事免責条項明記、関連法規整備所要の改正
六、地方公営企業は右に準じる。

七、スト規制法は廃止する。

国鉄二〇二億円損害賠償請求訴訟の新段階

 七五年秋のスト権回復要求のいわゆるスト権ストにたいして七六年二月一四日に国鉄当局が国労、動労にたいして提起した二〇二億円損害賠償訴訟は、八二年初めから強まった反国労、動労キャンペーン、国鉄を目玉とする行革推進の中でひとつの転機をもたらす様相を示しつつある。右訴訟における現在の大きな争点は「運行可能論」であるが、国労、動労側が主張する具体的な「運行可能論」にたいし、国鉄当局側は具体的に反論するかのごとき趣旨の主張をしていた態度を変え、八一年一〇月以降の裁判においては「運行可能論」についての具体的な反論をおこなわない立場をとり出し、六月一日の二三回の裁判においては、損害賠償額算定に関する証人申請をおこない、裁判所にたいし、訴訟促進の上申書を提出するに至った。

 このような国鉄当局側の態度の変化には政府自民党の強い圧力があったとされているが、四月一六日に発表された自由民主党国鉄基本問題調査会交通部会の報告書「管理経営権及び職場規律確立に関する提言」(内容の要旨は前述のとおり)はこのような圧力を公然と認めたものとなっている。

 二〇二億円裁判に関する右報告書の指摘部分の要旨はつぎのとおりである。

 一、二〇二億円訴訟は端的にいって、国鉄の自発的意思によってではなく、このような国民の批判の高まりを背負った我が党の強い要請によって提起されたものであった。従って、訴訟の経緯を見ても原告である国鉄が訴訟の促進に決して熱心でなかったことが一目瞭然である。我が党は「運行可能論」には反論の必要がないと考え、運行可能論に終止符を打ち、訴訟を促進するよう当局に要望した。

 二、二〇二億円訴訟についての基本的かつ重要な問題は、従来の国鉄当局が二〇二億円訴訟を労使関係の一要素として捉えていることであるが、これはきわめて誤った考えである。二〇二億円訴訟は労使の問題ではなく、法と秩序の問題である。公労法で禁止されているスト権を、実力により奪取しようとした行為は、いわば暴力革命思想の発露であり、民主主義の否定である。従って、違法行為の責任を追求する為の二〇二億円裁判は、正義の為の訴訟であり、いやしくも取引すべきものではない。

 三、国鉄の全職員が動きを注視しており、二〇二億円訴訟が当局側の勝訴になれば、今までイヤガラセを恐れて沈黙していた多数の直面目な職員の意見が、国労、動労の改革を求めて顕在化していくことは必至である。

 今こそ訴訟を全力で推進することが何より必要である。この訴訟を放置することは、それだけ赤字が増大することになり、その負担を国民に回すことになる。

 二〇二億円訴訟以降、度重なる違法ストに対し何ら損害賠償請求がなされていないが、これは違法ストに対する国鉄の姿勢が一貫していないことを示すと同時に、二〇二億円訴訟を促進する決意をも疑わせるものであり、今後のストライキに対しては断固として損害の請求を行うこと。

 驚くべき率直さで二〇二億円損害賠償のねらいを語っているが、前述したような国鉄労使関係の緊張化のもとで訴訟促進へ向けて政府自民党の圧力が今後ますます強まるおそれがある。

日本労働年鑑 第53集 1983年版
発行 1982年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月4日公開開始


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