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日本労働年鑑 第53集 1983年版
The Labour Year Book of Japan 1983

第二部 労働運動

VI 権利闘争


1 国鉄労働者と労働組合にたいする攻撃

国労・動労等にたいする集中攻撃

 一九八二年の年明けとともに国鉄労働者と国労、動労等にたいする集中的な攻撃が噴出した。一月二三日、朝日新聞が東京機関区の運転検査旅費を「ヤミ給与」として大々的に報道して以降、全国紙、地方紙、週刊誌、テレビなどあらゆるマスコミが四ヵ月以上にわたって連日のごとく「職場規律の乱れ」「労使関係の荒廃」を報じ、「国鉄労働者悪玉論」を展開した。

 第二臨調による行政改革の目玉とされている国鉄であるだけに七月の基本答申を前にして国鉄労使関係に多くの国民、マスコミの目が向けられるなかで、国鉄労働者、国労、動労は集中攻撃をあびた。

 自民党からの攻撃については後に詳述するが、民社党も国労、動労にたいする攻撃をおこない、二月二日の衆議院予算委員会では塚本三郎書記長が行政改革に関連する国鉄問題にふれ、「国鉄がこんなに悪くなったのはマル生反対の国労、動労のドウカツに管理者が屈し、人民管理的な運営になったからだ」「諸悪の根源は現場協議にあり、現場長が命令権、人事権をしっかり持っていないことだ」「違法ストで首を切った者を相手にしているのはけしからん」「国鉄職員にもまじめな者がおり、国労や動労でもナラズ者でないのもいる」とのぺ、「四十六年の覚書を破棄せよ」と高木国鉄総裁に労使協定の一方的破棄を求めた。

 国鉄当局はこのような反国労・動労キャンペーンが強まるなかで三月五日「職場規律の総点検および是正について」と題する総裁通達を全国に出し、その中で、(1)ヤミ慣行、ヤミ協定の是正、(2)現協制度の本旨にもとづく改善、(3)業務管理の適正化、服装・接客・サービス等の改善を三月末日目途に総点検し報告せよ、と指示した。

国鉄四組合の対応

 国鉄四組合(国労、動労、全施労、全動労)は三月九日「国鉄再建問題四組合共闘会議」を発足させた。そして第二臨調の国鉄民営・分割、二〇万人体制などの策動に反対し、真の国鉄再建をめざして四組合の統一要求実現のため諸行動を強化するとの方針を全会一致で確認、全国鉄労働者と国民に訴えるアピールを発表した。

 四組合共闘は三月一九日国鉄本社にたいし、職場総点検通達に抗議を申し入れ、また三月二四日付で「すべての国鉄労働者への訴え」と題する緊急アピールを発表し、国鉄労働者のたたかう組織である労働組合の変質と破壊をねらう自民党・民社党・一部マスコミの攻撃にたいしては「日本労働運動の産報化をねらう支配層の意図を見抜き、今日の事態の中で新たな前進のために、自らの戦線をととのえるために、いっそう団結を強め奮闘しよう」と呼びかけた。

自民党国鉄基本問題調査会の提言

 自由民主党国鉄基本問題調査会交通部会は四月一六日に「管理経営権及び職場規律確立に関する提言」をまとめた。この提言は、自民党の国鉄基本問題調査会の「国鉄再建に関する小委員会」(座長三塚博)が八二年二月二日に発足以来おこなった審議の結果をまとめたものであるが、同報告によると「二月五日に初回の審議を行って以来、国鉄の経営者、退職ならびに現役管理者、関係労働組合責任者等からの聴取を中心に二〇回に及ぶ審議を重ね、加えて全国一七四の問題職場の全管理者(三二五七名)に対して、アンケート調査を行うとともに、小委員会の委員自らが現場に赴き現場管理の実態を体得することをも試みた」という。

 提言の審議にあたっての基本的な考え方は、「国鉄の再建に関しては、従来より、主として財政的角度から幾多の論議が重ねられて来ているが、いかなる施策もこれを実現し、達成する為の鍵を握るのは、現実に推進に携る人的要素である。即ち、全ての施策の大前提となるのは、国鉄職員の士気であり、働き度であり、職場の秩序及び規律である」という点におかれている。そして提言は、国鉄の経営改善計画の推進にあたっては、「人的要素の基礎となる労使問題、規律問題」の「徹底的な究明と打開が緊要である」とのべ、「国鉄再建問題の検討に際し、先ず、労使問題、職場規律問題に取り組み、この問題を徹底的に検討し、解決の方策を明らかにすることを目的として審議を進めて来た」とする。

 右のような立場に立って提言は「労使関係是正の方策」として、(1)管理体制の強化、(2)現場協議、(3)ヤミ協定、悪慣行、(4)処分に関する問題、(5)違法ストに対する刑事罰、(6)職員に対する求償権の行使、(7)昇給・昇格、(8)紛争対策委員会の覚え書、(9)合理化の促進、(10)配転、(11)採用と採用時教育、(12)便宜供与、(13)兼職議員の禁止、(14)乗車制度の見直し、(15)二〇二億円裁判の促進、の一五項目を指摘している。右一五項についてのべられている内容の要旨はつぎのとおり。

【提言の要旨】
 一、管理体制の強化

 労務指揮、施設管理等の管理権は殆んど行使されていない現状にある。今、労使関係の是正を考えるとき、原点に立ち返って、業務命令、時季変更権、施設管理権を適正に行使し、従わない者に対しては厳正な勤務認証、現認を行い、賃金カツト・昇給カット・処分などの措置をとることが必要である。

 従来ややもすれば、管理権の行使が列車の運行を阻害することを恐れて組合の不法な要求に屈した例が多いが、このため、多くのヤミ協定を残し、国鉄の存立を脅かす結果となっている。列車の正常運行は長期にわたって確保されるべきものであり、そのためには一時的な混乱を恐れないで筋を通す覚悟が必要である。

 二、現場協議

 現場協議は、国労の職制麻痺闘争の場を提供した結果となり、管理者の大きな負担と業務遂行の障害となっている。現協協定をまずいったん破棄し白紙に戻したうえで、現場における業務遂行上必要な現場長と職員の意思疎通をはかる制度を新たに検討、制定すること。

 三、ヤミ協定、悪慣行

 国鉄の職場には数多くのヤミ協定、悪慣行が存在するが、これらのほとんどは、現場長の責任と権限を超える事項についての確認、または社会常識を著しく逸脱したものであり、集団的な威嚇行動のもとにつくられたものであるから、そもそも無効であり、当局を拘束する力を持っていない。即刻無効であることを宣言し、正規の運用とすること。

 四、処分に関する問題

 一般に処分に当たっての量定が軽過ぎる。とくに違法な闘争に参加した職員に対して公労法一八条により厳正に解雇を行うべきである。また、常習的な規律違反者に対しては、日鉄法二九条の活用も検討すべきである。さらにビラ貼り・落書き等の行為については、現認体制を強化し少なくとも戒告以上の処分を課するとともに、原状回復に要した費用については組合に請求すべきである。

 五、違法ストに対する刑事罰

 郵便事業においては郵便法に刑事罰の規定があり、違法ストに対する有効な抑止手段になっているが、国鉄関連法規には類似の規定は見当らず抑止効果は期待しえないものである。国鉄の違法スト抑止、職員の遵法精神回復のためには国鉄関連法規の改正により違法ストに対する刑事罰を法定することが有効である。

 六、職員に対する求償権の行使
 職員の故意又は重大な過失にもとづく事故等により、国鉄に損害を与えた場合の求償権の行使を厳正に行うこと。
 七、昇給・昇格

 昇給協定については社会的な常識に反するほど甘い点を早急に是正すること。昇給協定の三項八号(昇給カット)ならびに四項(抜てき昇給)の活用は現場の信賞必罰の有効な手段であるので厳正に適用する。

 八、紛争対策委員会の覚え書等

 紛対処理覚え書をはじめ、生産性運動挫折時の約束事については、当時の異常状態における臨時の措置であったことにかんがみ、現時点では不必要であるばかりか有害なものであると認められるので、ただちに破棄の手続をとること。

 九、合理化の促進

 公労法八条により、管理運営事項は団体交渉の対象からはずされている。管理運営事項については団交を行うなどの曖昧な取り扱いは絶対に排し、当局の責任において実施することを明確にすべきである。

 一〇、配転

 国鉄では配転協定の存在により、本人の同意が無ければ配転はできないことになっていると言われている。しかし、社会常識からみて、およそ企業の中で経営側の意志による配転ができないような協定は在りえない。国鉄の配転協定及びその附属了解事項をよめば、本人の意志に反した配転が行われ得ることは明白である。ただちに配転協定の正しい理解を管理局に徹底し、経営側の判断により円滑に配転を行わしめること。

 一一、採用と採用時教育

 職員の新規採用について、組合側からの熾烈な推薦合戦が繰り広げられており、合否の判定に重大な影響を与えるような実態になっている。このような採用の実態は、人事権の権威を失墜させると同時に現場における「組合支配」を助長する事態もみられる。採用にあたっても、当然のことながら公正妥当な人事権を確立すべきである。また、採用時には新入社員教育を実施し、社会人、企業人としての責任感と使命感を徹底させることが必要であり、組合員である前に国鉄職員であるという心構えを確立せしめること

 一二、便宜供与

 「職員の組合活動に関する協約」により、組合活動に参加するための勤務解放について定められているが、この中には現下の経営状態の中で妥当性を欠くものも含まれており、全面的に見直しを行い改定すること。組合事務所以外にも現場の事務室の一部または全部を組合が占拠し、あたかも組合事務所の如き様相を呈しているものが見受けられるが、即刻是正すること。

 一三、兼職議員の禁止

 徹底した要員削減に取組むなかで、国鉄の要員事情もきわめて逼迫した状態にあり兼職議員の承認を与えることは到底許されないことである。緊急の措置として、政府より国鉄総裁に対し兼職議員の承認を与えないよう指示すること。

 一四、乗車制度の見直し
 国鉄のおかれている状況、世間の強い批判にかんがみ、乗車証等については誤解を招くことのないよう厳正に見直す。

 一五、二〇二億円裁判の促進(後述の「スト権立法闘争と二〇二億円損賠請求訴訟の動向参照)。

第二臨調第四部会の報告

 一方、第二次臨時行政調査会第四部会は、五月一七日に部会報告を発表したが、その「国鉄」の項も、国鉄改革を進めるにあたって労使関係上の問題点を多岐にわたって指摘した。

 報告は国鉄経営悪化の原因として、(1)国鉄の役割の変化、(2)企業性の欠如、(3)労使関係、(4)その他、として四点に分けて指摘し、(3)について、「労使関係の不安定、職場規律の乱れは、前から指摘されていたが、最近明らかにされた実態は、国鉄の職場の多くが荒廃した状態にあることを示している。ヤミ協定、悪慣行等がまん延し、合理化が進まず、その結果生産性の低下をもたらし、今日の国鉄の赤字の大きな原因となっていると考えられる」とのべている。

 第四部会報告は、三公社・特殊法人のあり方を検討したものであるが、国鉄の労使関係に集中的批判を向けており、報告では、それが「赤字の大きな原因」とまで指摘されている。

 部会報告は、国鉄の経営形態について現行公社制度を改め、分割・民営論を打ち出し、右新形態移行までの間に「緊急にとるべき措置」を明らかにしているが、労使関係に関するものとしては、(1)職場規律の確立、(2)新規採用の停止及び要員合理化の促進、(3)無料乗車証制度の廃止、(4)給与の抑制、(6)兼職議員の禁止等があげられている。

 なお、右部会報告は、総理府に行政委員会として「国鉄再建監理委員会」を設置し、強力な実行体制を整備するとしているが、「新形態移行までの間緊急に措置すべき事項」の執行の監督、その他国鉄の業務の管理・運営に関する重要事項等の承認等が右委員会の任務・権限とされるところからすると、右委員会が設置された場合、国鉄労使関係の諸問題について国鉄当局の当事者能力がこれまで以上に奪われ、労働組合の団体交渉権が形骸化される可能性がきわめて強い(なお、第二臨時行政調査会の答申とこれにたいする組合の動向は、本年鑑の「特集」を参照)。

日本労働年鑑 第53集 1983年版
発行 1982年11月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月4日公開開始


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