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日本労働年鑑 第51集 1981年版
The Labour Year Book of Japan 1981

第二部 労働運動

XIV 政党


5 日本共産党

4 政策・方針・理論問題

第一五回大会決議

 共産党の大会決議は社会党などの運動方針に当たるもので、七七年一〇月に開かれた第一四回大会以後の内外情勢の分析と党活動の総括をおこない、つぎの大会までの基本方針を示すものである。第一五回大会決議の主要点は、大会における宮本委員長の「冒頭発言」および不破書記局長の「中央委員会報告」について述べた部分と重複するので、省略する(「大会経過」の項参照)。ここでは、第一章の四のうち、労働戦線に関する部分を紹介しよう(全文は『前衛』第四五〇号、八〇年四月臨時増刊にある)。なお、決議案は七九年一一月に発表されたが、その後ソビエトによるアフガニスタンへの軍事介入という事態が起こったため、大会決議ではこれに関する一項が新たに加えられた。

 【日本共産党第一五回大会決議、第一章四のうち労働戦線統一、ナショナルセンター問題について】

 労働戦線の動向は、革新統一戦線結成の事実にとっても特別に重要であるが、総選挙後、民社党・同盟および総評その他の労働組合内の右翼的潮流を中心に、政治戦線での新与党化に呼応する労働戦線の反共右寄り再編の策動が、さらにつよまっている。総評指導部が、参院選での社会党の議席確保の目的にすべてを従属させる立場からおしすすめてきた「社公中軸」、「社会党、総評、公明ブロック」路線も、事実上、右寄り再編に接近するものであり、「戦線統一」の名による労働戦線の右傾化、反共化の危険は、きわめて大きいものになっている。二月にひらかれた総評臨時大会が反共政権構想の支持を決定したことは、右翼的変質の新たな段階を画するものとなった。

 労働戦線統一の事業は、単純に、労働組合の複数の全国組織を合流させて、より大きな組織をつくることを目的とした事業では、けっしてない。それは、国家独占資本主義の体制のもとで、独占資本とその政府という、組織された強大な敵にたちむかう労働組合運動が、労働者の経済的政治的諸要求の実現のために、その組織と行動を階級的に統一することであり、具体的には、正しい階級的民主的原則にもとづいて、労働組合の諸闘争を全国的、全産業別的に統一し、調整できる機能と役割をもったナショナルセンターを確立することである。

 いま労働組合運動のなかには、企業ぐるみ選挙で、組合員に特定政党支持を強要しながら、労働者の生活と権利をまもる闘争は放棄し、減量経営下の首切り「合理化」に協力さえしている反共的右翼的潮流が、とくに、民間経営を中心に根深く存在している。「戦線統一」と称して、かりにいくつかの全国組織の合同がおこなわれたとしても、そこで労働組合としての基本原則をなげすてたこの種の右翼的潮流が支配的地位をしめ、反共主義や反革新の路線と結びついた「戦線統一」は、労働者の闘争を前進させその利益を擁護する力とは、なりえないであろう。

 わが党は、一九六二年の第八回党大会四中総で、労働組合のどのような全国組織が労働戦線統一の母体となりうるかという問題について、つぎのように指摘したことがある。「労働戦線の統一という大きな目標と原則からみるならば、社会党支持という特定政党の支持を重大なわくとしてもっている現状のままでは、たんに相対的に大きな労働組合組織だということだけで総評をそのまま労働戦線統一の母体として評価することができないことも明らかである」。今日の情勢は、この指摘の重要性をいっそう確証している。既存の全国組織が、ナショナルセンターとしての正当な機能を果たさず、反対に、特定政党支持の誤りが、労働戦線右傾化の危険なテコになるといった事態のもとで、広範な労働者と労働組合のあいだに、新しいナショナルセンターをもとめる機運がつよまっているのは、当然の方向である。

 未組織労働者の組織化の問題でも、階級的立場を堅持したナショナルセンターが存在しないことが、二千五百万にのぼる広範な労働者を、未組織のままに放置している一つの背景となっていることを、重視しなければならない。

 真に労働者の利益を擁護する立場から労働戦線の統一をねがうすべての労働者と労働組合は、労働者の利益をそこなう労働戦線の右寄り再編に断固として反対し、労働組合の階級的民主的強化につとめるとともに、労働戦線統一の前提として、つぎの諸原則を確立するために、いっそう積極的にたたかわなければならない。これらの原則をそなえたナショナルセンターこそ、わが国で真に労働戦線統一の母体となる資格をもつことができるのである。

 (1)「資本からの独立」の原則を、労働組合の組織と運営、活動全体につらぬくこと。(2)「政党からの独立」、すなわち、特定政党支持の立場をとらず、組合員の政党支持の自由を保障するとともに、要求や政策の一致点にもとづいて、革新諸政党との必要な協力・共同をすすめるという原則を確立すること。(3)労働者の要求の一致にもとづく行動の統一を、全国的にも、産業別的あるいは地域的にもすすめること。

 このたたかいにおいて、統一戦線支持労組の果たす役割は重要である。統一戦線支持労組は、総評への加盟、非加盟を問わず、これまでもわが国の労働組合運動の階級的民主的強化に、大きな貢献をおこなってきた。労働戦線の右寄り再編の危険が、いっそう重大な局面を迎えつつある今日、これらの労働組合は、必要な方法で共同の活動をさらに強化しつつ、広範な労働者と労働組合のあいだで、右寄り再編の有害性、労働戦線統一の原則、真のナショナルセンターのあり方などをめぐる大衆的討論を発展させる活動、労働者の経済的政治的要求を実現する全国的、地域的な統一行動を組織する活動、労働者階級の階級的任務として革新統一戦線結成の事業を推進する活動などで、いっそう積極的な役割を果たすことが期待される。また、ナショナルセンター問題について、ひろく労働組合の代表やこれまで労働運動になんらかのかたちで関係をもった有識者が、ひろく自由に協議して必要な見解を適宜表明できる、ゆるやかな討論的な懇談の場がつくられることも、きわめて有意議である。

「民主連合政府綱領」現代版

 八〇年五月の三中総で採択された「八〇年代をきりひらく民主連合政府の当面の中心政策」は共産党が七三年に発表した「民主連合政府綱領提案」を、その後の事態の変化に応じて書き改めたものであった。発表に当たって宮本委員長は、その特徴・性格としてつぎの四点をあげた。(1)統一戦線結集の最大公約数である革新三目標を政府版として定式化し、(一)汚職のない清潔な政治を実現し、軍国主義の復活強化に反対する、(二)大資本中心の政治を打破し、国民のいのちとくらしを守る、(三)平和と民族自決権を擁護し、日米軍事同盟と手を切り、日本の中立をはかる――とした。(2)民主連合政府の基礎である革新統一戦線は、「排除の論理」はとらず、共同の目標に賛成し共同の意思のある全ての政治勢力、団体・個人を無条件で結集する。(3)この政府は社会主義の政府ではなく、軍国主義とファシズムヘの重大な危険に歯止めをかけ、当面の緊急な国民的課題となっている自民党政治の根本的な転換をはかる政府であること。(4)他の野党が自民党政治の延長線上の連合政権構想を出しているのと対照的に、革新の原点に立った民主連合政府綱領の現代版となっていること。

 ところで、この「中心政策」で一般に注目されたのは、安保条約廃棄後の日本の安全保障政策の一つとして「独立国として自衛措置のあり方について国民的な検討と討論を開始する」とし、その際「憲法改正論議も出てくる」と宮本委員長がコメントした点であった。これについて他党が「共産党が政権をとると憲法を改めることが明らかになった」と批判したのにたいし、不破書記局長は、「民主連合政府の下では憲法改正には手をつけない」と述べ、自衛措置についての国民的な討論の際に、憲法問題をタブーとしないのだと説明した。なお「民主連合政府の当面の中心政策」の全文は『赤旗』八〇年五月二五日付、または『理論政策』一四九号にある。

社会党・総評批判

 共産党は七九年総選挙で総評が公明党とのあいだで選挙協力をすすめ、さらに選挙後、社会党が公明党とのあいだで共産党を排除した「連合政権」構想で合意したことにたいし、『赤旗』主張などで、きびしく批判した。主な論文は、同紙八〇年一月二〇日、二一日に連載された無署名論文「反革新路線に転換した社会党指導部――『社公合意』の意味するもの」および、『社会新報』四月一日付に掲載された多賀谷社会党書記長名の論文「革新連合政権の前進をめざして――日本共産党のいわれなき批判に答える」を反批判した不破書記局長の論文「右転落の弁明と告白――多賀谷論文における革新性の清算」(『赤旗』八〇年五月三日付)であるが、そのほかにも七九年九月以降の『赤旗』に数多くの社会党・総評批判の論文、主張が掲載されている。

政策・声明・論文

 以上のほか、共産党がこの一年間に発表した主な政策、声明、論文は、つぎのとおりである。特記しないかぎり、『赤旗』に発表されたもので、カッコ内はその日付けである。なお、そのほとんどは『理論政策』の翌月号に再録されている。

【七九年総選挙関係】

 (1)総選挙の争点と日本共産党の政策――八〇年代に国民本位の新しい日本をつくるために(七九年八月一〇日)、(2)自民党大平内閣の党略的国会解散にあたって(九月八日)、(3)希望に満ちた八〇年代の日本を切り開く真の革新の党 日本共産党と革新共同への支持を 総選挙の公示にあたって全有権者のみなさんに訴えます(九月一七日)、(4)日本共産党中央委員会の自民、公明、民社、新自ク四党にたいする公開質問状(九月一九日)。(5)日本共産党中央委員会の日本社会党への公開質問状(九月二九日)。

 以上のほか選挙中に発表された諸政策、声明、談話などはすべて『前衛』七九年一二月臨時増刊号に収緑されている。
【衆参両院同時選挙関係】

 (1)参議院選挙の争点と日本共産党の立場――八〇年代を進歩と革新勝利の時代にするために(八〇年四月一四日)、(2)衆参両院同時選挙にあたって 反動化への「防波堤」、清潔な革新政治のにない手 日本共産党への支持を訴える――三中総決議(五月二四日)、(3)石油不安を解消する三つの提案(六月一六日)、(4)各党に対する公開質問状(六月一七日)、(5)衆議院選挙の結果について(六月二四日)、(6)参議院選挙の結果について(六月二五日)

 以上のほか、選挙中に発表された諸政策、声明、公開質問状などは『前衛』第四五六号(八〇年八月臨時増刊)に収められている。
【労働運動関係】

 (1)未組織労働者の組織化の前進のために(荒堀宏『赤旗 学習、党活動版」八〇年一月一三日)、(2)生活と権利をまもる労働組合運動の原点にたった春闘を(一月一四日)、(3)大会決議案と労働組合運動の問題(不破哲三、一月一五日、一六日)、(4)ナショナルセンターの階級的民主的確立は急務(二月四日)、(5)転機に立つ労働組合運動 総評臨時大会をふりかえって(二月二三日、二四日)、(6)革新三目標で一致する すべての勢力の大同団結を 第51回メーデーにあたって(五月一日)

 【国際問題】

 (1)アフガニスタンの事態について(八〇年一月一一日)、(2)サハロフ問題と日本共産党の立場(一月二七日)、(3)韓国での軍事ファッショ政権の「血の弾圧」を糾弾する(五月二七日)、(4)共同コミュニケはどうして破棄されたか――一九六六年の日中両党会談記(『世界政治』八〇年五月下旬号、六月上旬号)

 【その他】

 (1)どのようにして一九八〇年代を革新連合勝利への道にするか――すべての革新勢力に建設的対話と討論を呼びかける(宮本顕治 七九年八月二一日)(2)死文化された共・創協定と日本共産党の立場(一二月二九日)

田口・不破論争

 共産党の機関誌『前衛』七九年九月号は田口富久治名古屋大学教授の「多元的社会主義と前衛党組織論――不破哲三氏の批判に答える」と題する論文を掲載して注目された。これは同誌一月号で不破書記局長が「科学的社会主義か『多元主義』か――田口理論の批判的研究」と題する論文で、田口氏を批判したのにたいする反論であった。論争のはじまりは、田口氏が『現代と思想』二九号(七七年九月、青木書店)に発表した「先進国革命と前衛党組織論」と題する論文にたいし、共産党中央が『赤旗・評論特集版』七七年一一月七日付に関原利一郎名で「前衛党の組織原則の生命――田口富久治氏の『民主集中制論』の間題点」と題する批判論文を掲載したことである。その後、田口氏が前掲論文などを一冊にまとめて『先進国革命と多元的社会主義』(一九七八年三月、大月書店)として刊行したのにたいし、前掲の不破論文が発表されたのである。『前衛』の田口論文にたいしては、さらに同誌の八〇年三月号に「前衛党の組織問題と田口理論」と題する不破書記局長の再批判論文が発表された。論争の中心点は、共産党の組織原則である「民主集中制」のあり方をめぐる対立である。田口氏がユーロコミュニズムの諸党の理論家の見解を援用して「先進国革命路線に適合的な、国民大衆に可及的に公開的であり、党内民主主義が実質的に保障された党」をもとめて、(1)党大会における反対意見、修正意見の開陳の制度的保障、(2)多様な意見を反映する各級党機関の構成、(3)党指導部の交代のルールの明確化、(4)党大会で選出される統制委員会を設けるなど党機構内への「権力分立」原理の導入、(5)少数意見尊重の政治的・実質的保障――を提唱したのにたいし、不破氏は、このような主張は、「民主集中制」を弱体化させるものであり、田口氏の理論には階級闘争の見地が欠けていると批判している。

日本労働年鑑 第51集 1981年版
発行 1980年11月25日
編著 法政大学大原社会問題研究所
労働旬報社
****年**月**日公開開始


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