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日本労働年鑑 第50集 1980年版
The Labour Year Book of Japan 1980

第二部 労働運動

XIII 政治的大衆行動と平和運動


5 元号法制化、有事立法反対の運動

「有事立法」反対の運動

 七八年五月におこなわれた日米首脳会談後、日米防衛協力小委員会は両国の共同作戦体制確立のための「指針(ガイドライン)」策定作業をおしすすめた。この「指針」策定作業の進行するなかから、「有事立法」問題が公然と提起されて七月には、福田首相が、「統合防衛作戦研究」「有事立法研究」「民間防衛研究」の三つの指示をおこない、次期通常国会に法案を提出する旨言明した。そして、九月末から開かれた臨時国会において福田首相は有事立法制定をあくまで促進することを言明していた。こうした有事立法の制定とならんで、天皇・首相の靖国神社公式参拝や「教育勅語」礼賛や「君が代」国歌化をはじめ、「元号法制化」問題が大きな焦点となった。

 七八年八月、福田首相は、七月に結成された「元号法制化実現国民会議」に「昭和」のあとの元号問題は「法制化による存続」の意向を表明し、臨時国会に提出するよう準備を指示した。ことに、「元号法制化実現国民会議」は民社党、同盟を加えて結成され、全国的に「県民会議」を結成し、地方議会において法制化実現の決議運動を展開し、また国会内においては自民党、新自由クラブ、民社党、公明党によって「元号法制化促進議員連盟」がつくられ、法制化促進を展開した。

 八月二一日、総評は全単産委員長会議を開き、つぎのような「特別決議」をあげて、「有事立法」阻止のため、秋闘のなかで積極的に行動を展開し、広範な民主団体に共闘をよびかけた。

【総評単産委員長会議の特別決議(一部省略)】

2、「有事立法」に関連しての最大の問題は「有事」に名をかりて「表現の自由」の規制ばかりでなく「結社、集会」の制限、「食糧の統制」など憲法で保障された国民の権利を抑圧し、日常生活そのものの統制をはかろうとするものである。同時に「不況からの脱却」として軍需生産、とりわけ兵器生産を大規模につよめることを目的としているものである。

3、総評は、このような危険な「有事立法化」の動きに対して強く反対し、この動きの阻止のため秋闘の中で積極的な行動を展開するものである。とくに、一〇・二一(国際反戦デー)から一〇・二四(軍縮週間)にかけて大衆行動を組織していく。また、革新政党はじめ広範な民主団体に対し、速やかに共闘を呼びかけていくものである。

 こうしたよびかけにもかかわらず、「有事立法」反対の要求にもとづく統一行動は、一〇・二一全国統一行動をのぞいてはなかった。総評、中立労連、新産別をはじめ、総評加盟三六単産、中立労連加盟三単産、純中立一六単産が反対決議の機関決定(一〇月一八日現在)し、平和・民主団体、文化団体、科学者団体などがそれぞれの団体の立場から反対の決議をおこない、パンフレットをはじめ、プレート、ステッカー、かべ新聞、署名用紙などを大量に活用し、全国的に宣伝・啓蒙活動を展開し、運動の前進にそれぞれ努力をつくした。

 総評は社会党とともに、九月九日「有事立法粉砕全国共闘会議」を結成して、たたかいをすすめ、安保破棄・諸要求貫徹中央実行委員会は一〇月一日に「有事立法と日米安保条約反対・生活と権利をまもる一〇・一全国代表者集会」を東京・明治公園で一万三〇〇〇人の参加のもとに開き、つぎのような「決議」を採択し七つの行動方針を具体的に示した。

【中央実行委員会一〇・一集会決議(三)(抜すい)】
 有事立法と安保条約反対、国民生活擁護のたたかいをいっそう発展させるため、次の行動を全国的に展開することをここに決議する。

 一、われわれは、まず、広範な人びとに、有事立法の危険な内容と政府・自民党のねらい、その背後にある日米軍事同盟と自衛隊の反国民的役割を具体的にあきらかにした宣伝活動を精力的、系統的に展開する。同時に、さまざまな形態の学習活動、討論集会などを地域、職場、農村、学園を基礎に組織し、また、街頭宣伝、ポスター、ステッカー、ビラ、職場・地域新聞など、創意をこらした運動をさらに強化する。

 一、われわれは、職場、地域、学園での宣伝、学習活動とあいまって、それぞれの条件に応じた形態での集会、デモ、職場交流など、新たな行動を組織し、世論と運動の輪をひろげる。それぞれの団体は、独自にまたは共同して政府にたいする抗議の行動や、意思表示を積極的に組織する。

 一、われわれは、都道府県、地域、地区、職場、学園に「実行委員会」などを確立し、継続的、組織的な運動を展開する。
 一、われわれは、安保闘争の偉大な経験を生かし、有事立法反対の広範な民主勢力の持続的共闘体制の確立をめざし中央・地方をつうじて積極的な活動を展開する。
 一、われわれは、政府にたいする有事立法反対の署名運動を全国のすみずみまで精力的に展開する。

 一、われわれは、有事立法反対のたたかいを元号法制化、「弁護人抜き裁判」特例法、靖国神社法、教育勅語礼賛、「君が代」国歌化など一連の政治反動に反対する課題を結合して発展させる。

 一、われわれは、有事立法反対の課題と経済危機突破、国民生活擁護の諸課題とかたく結合し、そのたたかいを前進させる。

二・一〇全国統一行動

 福田内閣にかわって登場した大平内閣は、七九年二月二日、「元号法案」を閣議決定し、国会に提案した。二月一〇日、社・共両党、総評など中央八団体による「『有事立法』粉砕、元号法制化反対、グラマン等金権腐敗自民党政治糾弾全国統一行動」がおこなわれた。中央では、東京・明治公園で一万八〇〇〇名が参加して、中央集会が開かれ、「元号法制化、『弁護人抜き裁判』特例法案に反対し、民主主義を擁護するための決議」「『有事立法』制定、『日米防衛協力指針』、自衛隊強化に反対し、安保条約廃棄を要求する決議」と、つぎのような「宣言」を採択し、デモ行進をおこなった。

【宣言(一部抜すい)】

 大平内閣成立後二ヵ月間の経過は、この内閣が保守反動の本流内閣であり、大企業奉仕、対米協力・加担の政策を押しすすめる危険な政権であることを事実をもって明らかにした。とりわけ重要なことは、大平内閣が国民多数の意思に反して「元号法案」を開会早々の国会に提出したことである。これが、戦時立法、君が代国歌化、教育勅語復活、靖国神社問題、弁護人ぬき裁判法などとともに、日米安保体制下の日本軍国主義復活の路線にたった重大な政治、思想反動攻撃の一環をなすものであることは明白であり、今国会でその強行突破がはかられようとしている事態はきわめて重大である。われわれは、国民主権と文化と進歩に逆行し、「有事立法」とともに戦後民主主義の根幹を破壊しようとする「元号法制化」とその使用強制の企てにたいし、断固反対の意思を明らかにするとともに、広範な国民の世論と力を結集して、その廃案のたたかいを力強く展開する決意をここにあきらかにするものである。

 さらに大平内閣は、稀代の悪税、大衆収奪の一般消費税の導入を決定し、矢つぎばやに一連の公共料金の値上げをするとともに、大企業の「首切り」「合理化」になんら手を打とうとせず雇用、失業問題を重大化させ、不況とインフレに苦しむ国民生活にいっそう深刻な脅威を与えている。また、ロッキード疑獄につづき、国民的糾弾をあびているダグラス、グラマンの軍用機購入をめぐる疑惑は、自民党政治の金権性、腐敗性をふたたび白日のもとにさらけだした。このような事態の根源は日米安保体制にあり、安保条約廃棄のたたかいはいっそう重要となっている。われわれは、自民党大平内閣の国民生活破壊の一連の施策に断固反対するとともに、これら疑獄事件の徹底解明と、疑惑のE2C機の予算計上の即時撤回をつよく要求するものである。

日本労働年鑑 第50集 1980年版
発行 1979年11月10日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 労働旬報社
2001年9月25日公開開始


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