OISR.ORG へようこそ 法政大学大原社会問題研究所

日本労働年鑑 第28集 1956年版
The Labour Year Book of Japan 1956

第二部 労働運動

第五編 労農政党


第四章 日本共産党

MSA反対声明
 MSA協定の調印の翌九日、中央指導部は左のごとき反対声明を発表した。
  (反対声明)

 三月八日、米日帝国主義者の手によって米日MSA四協定の調印が外務省でおこなわれた。この協定は、日本をアメリカの従属国として一歩深めたばかりでなく、軍事的ドレイ国としての地位を固めた。この協定によって日本が得たものは、アメリカの政治的支配の悪化ということ、アメリカ製の中古武器のおしつけ、アメリカ士官の日本産軍隊への大量就任ということ以外になんの利益もない。輸入小麦の売上げ代金一千万ドルを吉田政府がもらうという農産物購入協定にいたっては、汚職吉田政府の性格を丸出しにした汚職協定であるといえる。

 この協定の調印により米日反動は、ソ同盟、中国を中心とする世界各国の平和勢力に挑戦したものである。同時に国内の労働者階級、知識層を中心とする平和勢力に打撃を加えることをねらったものである。

 吉田政府は国内的にもいままでより一そう李承晩政府の地位に近づいた。反共、反民主主義政策はますます露骨化し、ファッショ化が進むに相違ない。アメリカの大軍事顧問団の行動がこれを助ける。軍事機密保持規定がこの行動に拍車をかけることは明白である。これは日本の経済をますます窮迫させ、国民の生活をますますはたんさせるばかりでなく、国民生活をアメリカの軍事監獄内におしこむことを意味する。

 独立、自由、国民の基本的人権生活を守る権利をもったわれわれ国民は、道義的にも法律的にもこのようなMSA協定にたいしてなんの義務を負うものではない。日本民族の独立と平和と自由を愛するわれわれ国民には、この売国協定はなんの関係もないことを、ありとあらゆる機会、集会示威運動で証明すべきであり、証明せねばならない。進んでこの奴れい協定を粉砕するために反米、反吉田、反再軍備のための国民統一を強化するために全力をつくすべきときである。

中央指導部議長春日氏就任

 中央指導部は三月二三日、指導部議長に春日正一氏が就任したむね発表した。これまで中央指導部の責任者には田中松次郎氏がなっていたが、当面の政治情勢からくる党の重要任務にかんがみ、活動を強化するため、従来の陣容に加えて春日氏が正式に議長に就任することになったものである。

 党中央理論機関誌「前衛」の五月号には「平和・独立・生活防衛の反ファッショ統一行動を強化せよ――労働運動当面の重点――」という標題の論文(決定)が発表された。これは一月一日に発表された党中央の政治方針(前出)を労働運動の分野で具体化し、労働運動の当面の基本方向を示したもので、労働関係の全国会議における中央の報告、それにもとづく全体の討論、結語をまとめたものである。同論文は、現在の労働運動が客観的にどういう状態にあるかを明らかにしつつ、「国民のあらゆる要求をかちとる闘争のなかで一貫して反ファッショ闘争の内容をもって闘い、国民の統一と団結をかため、敵の支配の手段をまひ、粉砕することがげんざいの労働運動の最大の任務である」と述べている。

 なお、五月一九日、東京地方裁判所は、先に逮捕された松本三益氏にたいして無罪の判決を下した。

吉田政府打倒統一行動申入れ

 六月三日におこなわれた国会乱闘事件のあと、政府と自由党はこの事件を逆用し、国民にたいする一そうファッショ的な攻撃を強めようとしたので、中央指導部は同一一日、各政党および民主団体にたいして申入れをおこない、労働者階級を先頭とする吉田政府打倒の反ファッショ国民的大統一行動を展開して米日反動のファッショ的攻撃を粉砕するよう訴えた。政党にたいする申入れは中央指導部員松本三益氏が、両社、労農、日自の四党幹部と国会内で会見して口頭で伝え、総評、総同盟、新産別、産別には同米原昶氏が次の申入書を持参しておこなった。この他、国鉄、日教組、全官労、電通、全逓、私鉄、全公労、全自、鉄鋼、炭労その他約二〇〇の民主団体にたいしても同様の申入れをおこなった。

  (申入書)

 六月二日の国会乱闘事件は、その経緯からみて、吉田政府がMSA・戦争政策を強行するためにファッショ的攻撃に出たものであることは明らかであります。今国会はMSA国会とよばれているように、MSAを受けいれて、わが国を軍国主義化し、ファッショ化するための国会であり、予算をはじめ重要法と称せられるものはすべてMSA政策をささえ、国民の利益と鋭く対立するものでありました。このような法案を強引に通過させ、その基礎のうえにわが国をアメリカの極東戦略にますます従属させようとして吉田の外遊がくわだてられていたことは世間周知のことであります。それゆえ吉田政府と自由党は国民の世論を一切ふみにじり議院の運営もまったく野党を無視して強引に一切の議事をおしきってきたのであります。これは労働者階級にたいする賃金ストップ組合活動の抑圧労働強化、国民の生活を圧迫する重税、社会保障費、農業振興費の削減など労働運動、民主的運動にたいするすべてのファッショ的弾圧とその根源をひとしくするものであります。

 したがってわれわれは今回の事件における両派社会党の行動が国民の生活と自由を守り、国民の利益に合致する反ファッショの闘争であるとして、これを高く評価するものであります。しかしながら、同時に、院内だけの奮闘では、いかに闘っても敵のファッショ政治を打ちやぶることはできません。こんどの事件はその限界をしめしたものと考えます。

 政府、自由党はこの事件を契機として、いっそうファッショ的攻撃を強めようとしております。すでに自由、改進両党は国会周辺でのデモ、集会禁止、国会見学の禁止、委員会の傍聴の禁止など国会をまったく国民から切りはなす決定をおこない、さらに乱闘事件の責任追及と称して社会党議員の懲罰あるいは事件関係者の告発などによって社会党に攻撃を加える意図を明らかにしております。

 これは社会党だけの問題ではありません。国民全体の問題であります。とくに労働者階級の直接利害に関する問題であると考えます。もし社会党が打撃をうけ後退するようなことになれば、攻勢が労働運動、民主運動全体の上に直接かかってくることは火をみるよりも明らかであります。したがって現在おこなわれておりまた今後に予想されるファシスト的攻撃を粉砕するために、労働者階級がまず立ちあがることこそ刻下の急務であると考えます。

 社、共、労三党が、この闘争の勝利のために、行動を統一することが勝利のカギであると考えます。

 以上の理由にもとづき、わが党は貴組合(団体)が、このさい指導階級たる労働者の独創的戦闘力を発揮され、日本国民の先頭に立って、独立、平和、民主、生活を防衛する闘いに立ちあがり、社会党を激励し、民主政党がなんらかの方法で提携して、吉田政府打倒の反ファッショ国民的大統一行動を展開し得るよう、組合内はもとより、ひろく各方面にうったえ、はたらきかけられることを希望します。

               日本共産党中央指導部
               議長 春日正一

 これにたいし、総評、総同盟、新産別、産別等はそれぞれ「申入れの趣旨に全く賛成である」と回答した。

日本労働年鑑 第28集 1956年版
発行 1955年11月20日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2002年3月5日公開開始


■←前のページ 日本労働年鑑 1956年版(第28集)【目次】 次のページ→■
日本労働年鑑【総合案内】

法政大学大原社会問題研究所(http://oisr.org)