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日本労働年鑑 第28集 1956年版
The Labour Year Book of Japan 1956

第二部 労働運動

第四編 その他の社会運動


第二章 人権擁護運動

団体等規正令関係

 日本共産党幹部に対する団規令違反を理由とする逮捕状は、その後も引続いて発付され続け、徳田球一氏を始めとする幹部に対する警察当局の追求の手は、緩められるどころか、むしろ最近の政治情勢を反映して一層強化される傾向にある。このような情勢のなかで松本三益氏に対する公判は、広汎な弁護団を動員して活溌に続けられて来たが、東京地方裁判所は五四年五月一九日に、法務総裁の出頭要求が憲法違反であるとして、無罪の判決を行った。その理由の要旨は次の通りである。

 憲法三三条の逮捕されない権利は、一面現行犯人を除き裁判官の令状の存しない場合は出頭拒否権として、又他面現行犯又は裁判官の令状の存する場合でも法律の定める逮捕、拘引、拘留以外の自由拘束をうけない権利として、それぞれ憲法三一条により保障され、はじめて犯罪容疑者の人権の保障を全うし得るものである。

 犯罪容疑者に対し出頭を要求しこれに応じないと刑罰に処することは、前記憲法三三条、及び一一条を母体とする犯罪検査に関する現行法体系に於て容認しえないのである。

 そこで本件出頭要求が団体等規制令の定める行政目的のためになされたものであるかどうかを考えるに、被告人に対して団体等規正令第一〇条の規定に基く出頭要求をなした法務総裁及びその監督下に団体等規制令の運用面を主管した法務府特別審査局が犯罪捜査を担当する国家機関でなく、又同令第一〇条の調査権が一般の犯罪捜査権とその本質、目的を異にすることも明らかである。併しながら被告人に対する本件出頭要求が昭和二一年勅令第一号違反及び団体等規制令違反の罪を犯した疑があるものとして右違反の事実調査究明のためなされたものであることは前記認定の通りである。

 かくの如く右調査権の行使はその実質において被疑者に対する犯罪捜査のためにする捜査権の行使となんら変るところがないものというべきである。随ってこのような出頭要求をなすにあたり、刑罰による間接強制力を附することは憲法三三条、三一条の規定に反するものといわねばならない。

 この判決は団規令による出頭要求違反を理由として全国的に強権をふるっていた警察権力に大きな動揺を与えた。然し乍ら検察側はこの敗北をみとめず、更に控訴申立をして最高裁判所迄も争う態勢を示し、団規令違反による逮捕は依然として続行してゆく趣旨であることを明かにした。

 共直覚中央指導部はこの判決について次のような声明を発表した。

きょう東京地方裁判所は、松本三益同志の団体等規正令違反事件にたいし、無罪の判決を行った。もともと団体等規正令は憲法に違反し、六・六追放もまたポツダム宣言と極東委員会の決定にも反する不法な占領法規である。そして追放令が無効なることはすでに明白である。したがってこの無罪判決はきわめて当然である。しかし本質的に反民族的反国民的である裁判所が、当然を当然としてこのような措置に出たのはあきらかに国民各層の無罪要求のたたかいの結果である。

 われわれはこの勝利を基礎に、反ファッショの統一行動を進め、すべての占領法規の撤廃と国民の民主的諸権利と、平和と独立をまもり、わが党の合法性拡大のために一そう奮闘するであろう。

日本労働年鑑 第28集 1956年版
発行 1955年11月20日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2002年3月5日公開開始


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