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日本労働年鑑 第28集 1956年版
The Labour Year Book of Japan 1956

第二部 労働運動

第二編 労働組合運動


第五章 失業者運動

第二節 主要な斗争
全日本自由労働組合第九回定期大会
 一〇月一六日から三日間、全日本自由労働組合第九回定期大会が、東京でひらかれた。

 全国四四都道府県から、一四一人の代議員、五一人の特別代議員、延約五〇〇人の傍聴者が参加した。とくに、大会第三日、総評事務局長高野実の挨拶は、同組合として最初のことであり、参加者全員に深い感銘をあたえた。

 大会は、つぎのような「全日本自由労働組合綱領」を採択した。

 一、われわれは、職安自由労働者を中心に、あらゆる日雇労働者を結集し、失業と貧困に苦しむすべての人びとと提携し、労働者には職業を、農漁民には土地と漁場をあたえ、完全な社会保障制度を実現する社会をうちたてるために闘う。

 一、われわれは、植民地的収奪と、強制労働に反対し、最低生活保障給獲得のため闘う。

 一、われわれは、失業者の闘争が就業労働者の闘争からはなれ、就業労働者の権利と労働条件を切り下げることに反対し、就業労働者と失業労働者の階級的連帯性をたかめるために闘う。

 一、われわれは、徒弟制度、組夫制度等の封建的雇傭制度および青年、婦人、老人等の差別待遇に反対して闘う。
 一、われわれは、一切の軍国主義的傾向の復活強化に反対し、言論、出版、集会、結社、組合活動および政党支持の自由を確保し、基本的人権を守るために闘う。

 一、われわれは、国民の利益と経済の発展を阻害する再軍備政策に反対し、国民生活を豊かにする平和産業の確立のため、すべての国との国交を調整し、平等互恵の貿易の実現を期し闘う。

 一、われわれは、世界の平和勢力及びアジア諸民族と提携し、労働者の国際的統一行動をつよめ、切実な要求と利益を守り、民族の独立、民主主義と平和を守るために闘う。
 大会は、八項目にわたる闘争方針を決定した。
 (1)生活を守る闘い
  イ、最低生活保障給獲得の闘い
  口、社会保険に対する闘い
  ハ、アブレ反対ワクよこせの闘い
  ニ、首切り反対の闘い
  ホ、労働条件の維持改善の闘い
 (2)組合の権利と民主主義を守る闘い
  イ、現場民主化闘争
  口、労働三法適用の闘い
 (3)平和を守る闘い
  イ、平和闘争の意義の徹底
  口、平和土木(住民のための仕事)の問題
  ハ、国際連帯性の強化
  二、国際自由貿易の促進
 (4)組織確立について
 (5)婦人部対策――組合を支えている婦人の大きな力
 (6)機関紙強化について――仲間の手元にもっと多くの機関紙を
 (7)財政の強化
 (8)学習運動――腰をすえて闘いにとりくむために

 つぎに、この闘争方針から、(1)のイ「最低生活保障給獲得の闘い」を全文引用しておこう。

 最低生活保障給の考え方は一言でいえば「喰わせろ」の考え方です。私たちは昨年までは、労働者階級の一員として最低生活を保障する最低賃金法の制定を目標に、賃金闘争を組んできました。しかしいま私たちはここで過去の闘いの点検の中から、私たちの闘いが「反失業、食わせろ、職よこせ」に発展せずいつの場合も賃金闘争に解消してしまった数多くの欠陥を、賃金闘争自体の中から発見したのです。それは従来私どもの性格と任務があいまいにされていた点も大きく禍わいしたのですが、労働者階級としては最も正しい要求である筈の最低賃金制確立に対する理解の仕方が、私どもにとって、失業者としての闘いを解消する役目を持っていたのです。即ち賃金(労働の対価)という考え方から来る監督に対するヘツライ、格付賃金による腕くらべ的競争心理、というものが私たちを現場の中へしばりつけ、〔食わせろ〕の方向を見失う結果になりがちであったのです。

 現在の政府は私たちを決して失業者とは見ておりません。生かさず殺さず、生活保護程度以下の金でしばりつけ、人なみの土方仕事を強せいし、すずしい顔で失業者を定職化してしまったようなつもりになっているのです。また一般の会社や工場の労働者も、三千円〜四、五千円程度のはした金で(近江絹糸はよい例)一人前の労働者扱でしぼりとっているのですが、普通からいえば、最低生活も保証されないこの人たちは、半失業者と見るべきものです。いくらかでも金をあたえて、雇っておれば失業者でないなどとは、とんでもないことです。ですから私たちはこの一年間、先ず食わせろ、職よこせにすべての要求を結びつけて闘わない限り、私どもの生活を守る闘いの前進はありえないと思うのです。このような訳で最低生活保障給獲得の闘いは総ての闘いのテコになるものです。また労働者的連帯の上では、最低賃金制確立の闘いと結びついて闘われるものなのです。しかし私たちにとっては社会保障制度の闘いの一環として、「すベての失業者に食えるだけの手当を出せ」に大きく発展する闘いなのです。このような意味をもつものとして、失業者は勿論、その家族もまた当然、生活は保障されねばなりません。

 こうした観点に立って私たちは当面の要求を
 最低生活保障給八、〇〇〇円(一カ月失業者一人につき)
        一、〇〇〇円(家族一人につき)
 と決めました。
 一、賃金一律五〇円引上げの闘い

 私たちは私たちの最低生活保障給を目標として決めましたが、現在のいろいろの事情、例えば、民間賃金が安い、現場の中の格付給、外では市民層、農民層のこれに対する理解の点等があり、直ちに私たち全部が、これ一本にまとまり闘いをくむところまでにはいたりません。

 当面はやはり現場の中で全員が話し合い、よく理解しあって決め、そしてそれが市民にも、農民にも支持され、直に行動に移れる要求が必要なのです。つまり統一要求というものがこれなのです。要求を一つ一つ闘い取るなかから、最低生活保障給へ高めてゆくのです。そのためには私たちはすでに当面五〇円一律引上げを決めております。これは格付賃金を打ち破る一つの基本にもなり、現場の中のおじさん、おばさんも一致して闘える条件をもつのです。ですから闘い方としては、何よりも現場の中の話し合い運動から出発しなければなりません。そしてこの闘いはアブレ、首切りの闘いと結びつき守勢から攻勢に転ずる転機となるものです。

 二、予算単価完全支払いの闘い

 一律五〇円値上げの闘いは、政府に対しワク増せの闘いですが、予算単価の闘いはワク内の闘いです。つまり現在の地方自治体(市町村)は、政府から必要な失対予算を取りながら、これをごまかしてワク一ぱいを登録された人たちに支払わないところからきているのです。こういう自治体が多いということは、政府の出している全国平均予算単価の二八三円が額面通り支払われずに、私たちだけが馬鹿を見ているのです。

 自治体の考えとしては、単価をへらして全体のワクを増やそうとしたり、事務費の方へまわしたり、カントクにワクを使おうとしたり、これをごまかすため、格付操作で私たちの目をくらまそうとしております。私たちはこれと闘うために、先ずワクの完全公開を要求しなければなりません。

 こうして闘いとったワクはどのように使用されるか、平均就労日数確保の条件と共に、私たちで組織的にかん視してゆく必要があります。現在私たちの中心的力とならなければならない東京のなかまは、東京都庁(労働局)のテッテイしたワクの非公開政策を打ち破ることができずに苦しんでいるのと反対に、神奈川のなかまはテッテイして公開を闘いとり、年間予算が一円でもあまればそれも全部はき出さしているのです。

 三、格付賃金打破の闘い

 これから私たちの生活を守ってゆくために、格付賃金とどのような関係があるのか明らかにしてみたいと思います。ここで問題になるのはほかのことと違い、格付反対の闘いはこのままでは闘いにならないのです。なぜならば私たちのなかには、格付賃金に満足し喜んでおる人もいるでしょう。喜んでいなくてもあった方がよいと考えている人もかなりいるからなのです。会社や工場の中で働いた経験のある人は良く知っているでしょう。課長や係長、班長がばかにいばりちらし、下のものは自分の口や家族のくらしのことを考えて、いつもヘイヘイと働いてきたことを。この制度の底にあるものは働かないものはドンドン首を切ってしまい、何んにも文句を云わずヘイヘイと働くものには昇給もし、格も上げてやろうという資本家一流のあくどい考え方からきているのです。つまりこういう仕組みが職階制というのですが、現在のような賃金ストップの苦しいなかでも、賃金は上げないが定期昇給はしてやると、資本家どもはいっているのです。しかしこのような考え方は資本家だけのものではなく、資本家をふくめた政府全体の考え方になり、労働省がその先頭になって資本家の利益を守っているのです。

 ここで私どもの現場の中を見てみましょう。格付賃金制度がしかれてから労働強化がはげしくなり、少しでも余計な賃金がほしさに、無理な仕事を我まんしてやったため、身体をこわし病気に倒れ、また死んでいった人も数多くあります。またこのためなかま同志のけんか、いがみ合い、競争がはげしくなってきたことも特徴です。またカントクが馬鹿にいばり出し、自分の気にくわないものは就労拒否をしたり、婦人に対しては貞操まで提供させたり、その罪悪は数知れません。こんな現場のありさまでは、私たちの生活を守るための闘いが上に向かないで、なかま同志の争いという形に終りがちになるのです。つまり男と女の間の対立となり、AとCという階級の対立となっているのです。この場合Aの階級はすでに格付賃金反対の闘い、本質的には生活を守る闘いの戦列から落伍しているのです。格付賃金はこのようにして私たちの食わせろに結集して闘う力を、分裂させ、ドレイにしばりつける敵の最大の武器であることを知らねばなりません。私たちはこれとの闘いをなくしては外のどのような闘いも満足には闘いとれないでしょう。労働省も格付賃金制度だけでは、他のどんなことをゆずっても、一歩もゆずれないとは、度々の交渉でいっております。

 今後の見通しはMSA態勢がますま強化されるつれ、カントクの暴力化、時間延長、新しい失業者との首のすげ替え、失対現場の打切り、査察制度の一層の強化などの一連の政策がさらに私たちにのしかかってくるのは明らかなのですから、これらの闘いの基本になるこの闘いを忘れて、ほかのすベての闘いはありえないのです。では次にどのように闘いを進めてゆくのでしょうか。目標はもちろん格付賃金の全廃でなければなりません。現場の中での討議や、話し合いや、あらゆる機会に、格付賃金の本質を語り、その矛盾を暴露し、全体の意識を反格付の方向へ向け直すことが第一番に必要なことでしょう。こうして具体的には賃金闘争と結びついて闘われなければなりません。「食わせろ」、「一率に上げろ」がなかまの間にある格付を認めようとする考え方を少しでも直してゆく力となるでしょう。こうして現在の格付を圧縮し、先ず一段階でも縮めることに成功しなければなりません。つぎにこの闘いの手段となるものは現場の自主管理の方向です。カントク支配の強い現場からはこの闘いは組めないからです。自主的に労働規律をつくり出し、作業配置までも闘いとった現場では、格付のモデルといわれる東京でさえ一部ではあるが、賃金を現場でプールし、または輪番にし、事実上格付を無いものにしてしまってきているのです。この芽をさらに大きくするために、闘いを孤立させず第二、第三組合とも統一行動を組み、逆に職制(カントク)を孤立させる方向へ進めてゆくことが大切です。

 四、実質賃金獲得の闘い

 実質賃金闘争はいろいろの形、内容で私たちの生活内容を高めてゆくためのものです。ですからこの闘いは地域の商人や居住の市民とも結合し、また生活保護を受けている人や病気の人たちの要求も積極的に取り上げ、ハバ広い地域共闘の上に闘わなければならないのです。また私たち同志でも助け合い運動の方向として、少しでも生活をらくにするために福利厚生活動を活発にしてゆく必要があるのです。

  (大会宣言)
 全日本の失業労働者を代表する全日本自由労働組合は、一九五四年十月十六日より三日間、その第九回全国定期大会を東京でひらいた。
 大会には、北海道から九州・鹿児島まで、さらに「われわれに加盟関係のなかった最後の県・愛媛の仲間」も参加し、名実ともに全日本の自由労働者を代表する大会であった。
 全国の代議員による三日間の大会は、われわれの闘いは「全国民的反失業の闘い」であり、われわれの闘い全体が「社会保障を守る」闘いであることを明らかにした。
 さらに大会は、この全国民的反失業の闘いの先頭に立つのが就業労働者であり、われわれ失業労働者もこの反失業の闘いの重要な一翼を狙うものであることをも明らかにした。
 就業労働者を先頭とするわれわれの反失業の闘いこそ、平和と独立の闘いである。

 とくに、さいきん、青森をはじめ、全国各地に、政府が強行しようとする「失対の体力検定」こそは、政府の、人権を無視し、われわれを軍事基地づくりの安あがりの軍人夫に動員せんとする意図を、もっとも露骨に示したものである。

 われわれは、以上の観点にたち、全組織をあげて、断乎「失対の体力検定」粉砕のため闘うことを期するものである。
 われわれは、この闘いを契機として、さらに、平和と独立をめざし、全国民の統一と団結をかため、反失業の闘いを闘いぬくことを誓う。
 右宣言する。
  一九五四年十月十八日
                   全日本自由労働組合第九回定期大会
  (要求書)
 全日本の失業労働者を代表する全日本自由労働組合は、一九五四年十月十六日から三日間、全国四十四都道府県代表出席のもとに、第九回定期全国大会をひらいた。
 全日本の失業労働者の総意を代表する大会は、万場一致の決議により、せまりくる越年の措置として、つぎのことを要求する。
 一、越年手当十五日分の支給
 二、完全有給休暇七日(元日を中心として)
 右の対象、資格、支給方法は、失業対策事業に働く者のみでなく、職安に登録する民間労働者、一般失業保険受給者に無条件で無差別に支給すること
 三、体力検定、強制紹介の即時撤回
 四、失業保険をアブレたら、即日二百円支給すること
 五、これを実現するために補正予算をくみ、予算化せよ
 これを実施するための地方自治体独自の措置に干渉するな
 六、十二月、一月の完全就労
 七、失対事業就労適格基準を撤廃し、首を切るな
 右を全日本の失業労働者の最低ギリギリのものとして要求すると共に、完全獲得まで、組織の全力をあげて闘うことを申添える。
    一九五四年十月十九日
                       全日本自由労働組合
  労働大臣 小坂善太郎殿
  (要求書)
 全日本の失業労働者を代表する全日本自由労働組合は、一九五四年十月十六日から三日間、全国四十四都道府県の代表出席のもとに、第九回定期全国大会をひらいた。
 全日本の失業労働者の総意を代表する大会は、万場一致の決議により、越年の措置としてつぎのことを要求する。
 一、日雇健康保険法の改善
  1、休業補償制度を設けよ
  2、入歯、歯科治療ができるようにせよ
  3、給付期間を延長せよ
  4、取扱いを簡単にせよ
  5、全額国庫負担で、掛金八円を免除せよ
 二、朝鮮人学校の児童の教育費を免除せよ
 三、生活保護法の適用範囲をひろげ、基準額をあげよ
 四、越年の諸措置を保護費からさしひくな
 五、生活困窮者にモチ代一、〇〇〇円、フトンを支給せよ
 六、すベての生活困窮者の子弟の学校給食費、教科書を無料にし、人種的差別をするな
    一九五四年十月十九日
                       全日本自由労働組合

  厚生大臣 草葉隆円殿

越年闘争
 一一月二日、全日本自由労働組合は、越年闘争に関する指令第一一号を、各支部に発した。
 (1)越年闘争の徹底化と統一行動の足がために主力を注ぐこと。
 (2)地方自治体に十一月八日一斉に要求書を提出すること。
 (3)闘いを二段構えとし、中央闘争をもって第一段の終りとし、その後の地域の闘いをもって第二段とすること。
 (4)中央闘争の期日を十二月六日より三日間とすること。
 中央闘争には、全国各地方代表者、中央執行委員など約三〇〇人が参加し、前掲の越年要求について、労働大臣の回答を迫ったが、拒否された。

 一二月一七日、衆議院労働委員会は、失業対策事業に働く日雇労働者に、その越年手当について、かなり有利な決議をしたのであるが、政府はそれの実行をひきのばした。(一二月二三日妥結)

日本労働年鑑 第28集 1956年版
発行 1955年11月20日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2002年3月5日公開開始


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