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日本労働年鑑 第28集 1956年版
The Labour Year Book of Japan 1956

第一部 労働者状態

第四編 労働者の生活


第一章 総論

第一節 物価

 まず経済審議庁の「週間東京卸売物価指数」によってみると第159表の如くで、これによると一九五三年秋頃から騰貴傾向を示した卸売物価は五四年の初め引続き騰貴を続けたが、次いで下落に転じいずれも相当の値下りを示した。これを各種類別にみると、総合では三月頃から、食糧、繊維、燃料、機械、雑品などは一−二月頃から、遅れて金属は三月、建築資材は五月、化学製品は七月頃からというように、いずれも下落が目立っているが、九月頃からはそれも停滞傾向を示しはじめ、機械、建築資材、化学製品などが小刻みな下落を続けているほか、いずれも停滞状態を示し、金属、雑品などはやや騰貴傾向をみせている。またこれを消費材と生産材との区分についてみると、消費材は五四年に入って以降下落を続けていたが、七月頃からこの傾向がにぶり、九月頃からは逆にやや騰貴の傾きをみせている。生産材は五四年の初めにおいて値上りを示したが、三月頃から下落に転じ、九月頃からは再び騰貴の傾向がみられる。さらに各種類の商品ごとに、年間初めの最高指数となかばにおける最低指数について、各々の下落率をみると(指数は、各月中旬の土曜日に終る一週間の平均値)、総合では九・三%、食糧一三・一%、繊維一六・七%、燃料六・七%、金属一三・八%、機械三・五%、建築八・九%、化学七・三%、雑品八・三%、および消費材一一・八%、生産材九・二%となって、その状態に大きなデコボコがみられる。原爆マグロ事件で魚類−とくに卸売り商品の対象となっている高級品の暴落などに大きな影響をうけた食糧、滞貨の放出、商社の整理倒産などをともなった繊維などの下落率が大きいこと、また金属製品が大きな下落率をみせているのに反して、機械、化学製品などは極めて変動の少ないことなどが注目される。また消費材に比べて生産材の下落率は小さくなっている。さてこのように今年は卸売物価では一般に値下りが示され、消費材も相当下落したが、直接生活に響く消費物価の状態はどうであったろうか。

 まず日本銀行調査の東京卸売物価指数によってみると(第160表)、五三年に比べて総平均では約〇・七%下落し、食糧品、建築資材が若干値上りしている外はいずれも下落を示し、生産材では約四%、消費材では約〇・九%の下落を示している。しかしこうした卸売物価の値下りの反面、小売物価は五三年から引続いて大巾な値上りを続け、食料品は一〇月から、燃料・燈火(これは冬季に入って再び上昇した)、衣料、その他は六月頃からやや値下りをみせているが、五四年平均では昨年に比べて総平均で六・二%、食料品一七・六%その他〇・八%の騰貴を示している。なおこれに反して衣料品はやや下落している。

 (注)日本銀行の「東京卸売物価指数」は従来数度の改訂を経て最近は一九四八年一月を基準として示されてきたが、五四年末、一九五三年平均を一〇〇とする指数に改訂された、その理由は朝鮮動乱後の生産、流通の増大により、調査商品種類のウエイトを更新する必要が生じたためとされ、機械類のウエイトが大巾に増加され、独立の項目とされた。調査方法には変化がない。

 次に総理府統計局の「消費者物価指数」――同局、小売物価統計調査(R・P・S)に基づく――によってみると(第161表)、五四年の小売物価は五三年に比べて、食糧をはじめとして全体的に騰貴しており、総合で五・四%、食糧七・二%(うち主食六・七%、非主食七・五%)、被服〇・〇一%、光熱一・五%、住居六・二%、雑費四・六%の値上りとなっている。これを年内の動きでみると、食糧などは五四年初めより騰貴を続け、八月頃から下落傾向をみせているが、とくに住居費は一貫して大巾な上昇を続けている。なおこの住居費に反映されていない権利金、ヤミ家賃などの値上りは一そう深刻な状態にあろう。また年平均値上率の最も少なかった被服費は年初頭より引続いて下落を続けた。こうして、大衆の生活に不可欠な食糧、住居費などは、卸売物価の下落とは逆に大巾な騰貴を示しているが、これを食糧品の種類別にみると第162表の如くで、ヤミ米、バター、卵などは昨年より下っている反面、麦、小麦粉、干うどん、食パン、いわし・いかの魚類、豆腐、さつま揚げ、調味料、茶など、大衆の食生活に不可欠な消費物資は値上りを示している。原爆マグロ事件で魚を喰べるのが危険となり、有毒な黄変米の配給が問題になったのも今年の特徴であった。さらに今年もまた公定価格や料金の値上げが相次で行われ、一月配給米、四月間接税の増徴のための税率引上げによる酒、砂糖、煙草、九月電力(決定)と、家計を圧迫する値上げが行われた。その内容は次の通りである(括孤内は旧料金)。

 消費者米価(一月)――内地米、準内地米(カリフォルニア米、台湾米など)は一〇キロ七六五円(六八〇円)。外米は一〇キロ六五〇円(五八〇円)。

 酒(四月)――清酒一級一升八三五円(七八五円)、二級一升五〇五円(四八五円)、合成酒一級五二〇円(五〇五円)、二級三九五円(三八五円)。焼酎(二〇度)一升二九〇円(二八〇円)、ビール大壜一二五円(一二二円)、但し空壜引取り価格が一五円から一二円に下ったので実質的には六円の値上げ。

 砂糖(四月)――一斤当り消費税四・五円引上げ。
 煙草(四月)――ピース四五円(四〇円)。
 NHK聴取料(四月)――三ヵ月分二〇〇円、一ヵ月分納六〇円となる。三〇%強の値上げ。

 電気料金(一一月)――東京電力管内を例にとると定額二〇W一灯四〇W一灯ラヂオ一台で二五三円(冬季二六三円、夏季二三八円)。メーター制三〇キロ二八五円(冬季三〇七円、夏季二五五円)、五〇キロ四七〇円(冬季五二七円、夏季三七三円)。改訂の要点は、従来の冬・夏料金制を一本にしたこと、メーター制で一一キロワットアワーまでの標準料金とそれ以上の追加料金という二段料金制が一本化されたこと、北海道、東北、東京、中部、北陸電力の五社では新たにアンペア制が設けられ、各家庭の電気設備状況により料金に差がつくことになったことなどである。なおこの値上げについては、九電力会社が一月全国平均約一四%の値上げ案(とくに電燈料金の値上げ率が高い)を出して以来、主婦連合会を中心とする「電気料金値上げ反対期成同盟」も結成され、一般消費者、中小商工業者などの猛烈な反対が続けられ、また国会でも難行を極めたが、九月に至り遂に以上のように明年四月から家計への影響が現われる巧妙な値上げ決定がなされた。

日本労働年鑑 第28集 1956年版
発行 1955年11月20日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2002年3月5日公開開始


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