毎月勤労統計調査によって、事業所規模別に婦人労働者数をみると第164表の通りであって、相当多くの婦人が中小企業で働いていることが分る。但し、この数字は従業員三〇人以上の企業についての推計値であって、零細企業における労働者数についてはみられない。婦人労働者(生産労働者)の多い産業は、製造業、このうちとくに紡績業、衣服身廻品製造業、ガラス・土石製品製造業などで、又、小企業で婦人労働者の多い産業は、衣服身廻品、木材木製品、家具建具、紙・紙類似製品、石油・石炭製品、皮革及び同製品、ガラス・土石製品、金属製造業などである。東京都においては第165表の通り、一〇〇人以下の小企業で働くものがより多くなっている。事務労働者も大体同様な状態であるが、機械製造業及び金融保険業に多く、石油・石炭製品、紙・紙類似品製造業に少いのが異なっている。このことは小規模企業では、一般に高度の技術的設備を必要としない産業に働く者が相当多いことを示している。
次に労働時間と賃金の状態を規模別にみよう(第166表)。全国調査では規模別にみられないので、ここでは東京都の場合をとった。これによると、賃金は規模に比例しており、婦人労働者全体として非常な低賃金状態にある(第四編第一章)のに加えて、大企業と小企業ではその差が四〇〇〇円以上もある。東京都で婦人労働者が多く働いている一〇〇人以下の産業−食料品、衣服身廻品、家具建具、ガラス・土石製品、金属製品、輸送用設備などの製造業における賃金は平均五〇〇〇円から七〇〇〇円程度であり、このような低賃金にもかかわらず小企業ほど労働時間(実労働時間)は長い。所定内労働時間は小企業が長く、残業、早出など所定外労働時間は大企業が比較的長く、とくに印刷出版、ガラス・土石製品製造業などが目立つ。しかしこの種の調査が果して中小企業の実情を示すかどうか疑わしいのであるが、以上の労働条件からみても三〇人以下の零細企業の労働条件はきわめて劣悪なものであることが推察される。
バス女子車掌の労働条件つぎに、一九五三年一〇月、日本私鉄労働組合総連合会が行った実態調査によって、バスの女子車掌の労働条件をみよう。本来この仕事は、女子には不適当な重労働であるのにもかかわらず、次にみるように、長時間労働と低賃金、過酷な労働条件をおしつけられている状態であり、それに又、一般に年齢が低く一六、七才から二○才程度に集中していること、勤続年数も短く一−三年程度が大部分であること、又非常な重労働であるのと関連して、結婚すると辞めねばならないという不文律をもつ会社があったりして、既婚者はほとんどいないことなどが特徴である。そしてこのように若い女子を低賃金で重労働させ、短期間で更新せしめていくという状態から、女子車掌の労働はバス事業の利潤の主要な源泉となっているのである。
(注)バス労働者(民営)は六万四七三二人(うち女子二万〇〇九一人)そのうち車掌は二万〇八七五人(うち女子一万五七三一人)で、女子は全労働者の二四%、全車掌の七五・四%を占める−運輸省調査一九五二年六月現在。この私鉄総連の調査には東武交通、京王帝都、富士山麓、阪神電鉄、東海バスなど傘下組合中の二〇組合における女子車掌三〇〇〇名(約七〇%)が参加している。本年鑑には都市交通を代表しているとみられるものとして京王帝都(女子車掌現在員二一九人、調査参加者二〇〇人)、農村を含む全国的な性格をもつものとして東武交通(現在員七〇〇、参加者三二六)、地方的なものとして静岡鉄道(現在員二八四、参加者二六四)における各状態を掲げておいた。これらについては、次にみるように、各会社によってその労働条件に差異が認められるが、しかしいずれも劣悪なものであることが分るであろう。
賃金・労働時間 第167表の通り京王帝都は九〇〇〇〜八〇〇〇円台、東武交通は七〇〇〇〜八〇〇〇台、静岡鉄道は六〇〇〇〜七〇〇〇円台がそれぞれ多く、都市の京王帝都が一般に高いという差異がみられるが、全体として基準賃金一万円以上はほとんどない低賃金状態である。しかもこれは、ゆれるバスに立通しの七時間を超える勤務の結果なのである。時間外労働は、とくに東武交通など一日一〜二時間の割合でやらされ、命令による場合が多くそして習慣化してしまっているものもみられる(第168表)。時間外賃金は切り捨てられたりするのが相当あるし(第169表)基準法違反が東武交通を始め多い(第170表)。又事故のため労働時間がのびてもそれだけ賃金がもらえぬ場合が多く、反対に切り下げられたりする(第171表)。
休憩・食事 労働の性質からいって不可欠な中休制度が設けられていない場合が多く(とくに東武交通など)、そしてこの休憩の時間中もほとんど何らかの形で拘束されている状態である(第172表)。食事時間もまちまちで普通の時間に食べられない。普通で一時間前後、ひどい時には二時間以上も前後する(第173表)。又、一週一度の休みの確定してないのもあり、設けられていても休めるかどうか決っていない状態である(第174表)。有給休暇をとらないものも多く、とくに東武交通などのように、人員不足の原因によるのが多い(第175表)。
生理休暇・健康 生理休暇については東武交通、静岡鉄道などほとんどとっていない(第176表)。とることが出来なかったり、言いにくかったりの理由によるものがほとんどで、病気であっても早退できず、会社が人員をギリギリの線までつめておくことから、身体に無理をしてまで仕方なく働かされる場合が多い(第177表)。そして以上のような労働条件の過酷さは女子車掌の健康を破壊せずにはおかない。勤務したての者は大抵身体に変調を起し、その特徴として胃を悪くするものが多い(第178表)。そして、ほとんどの者が慢性的な疲労を訴えていることは注目すべきであろう(第179表)。
(注)以上紹介したバス女子車掌の調査の外に女子労働者状態に就て行われた調査には次のようなものがある。
(1)労働省婦人少年局「電話交換作業における婦人労働の実情」 一九五一年一〇月、婦人の独占的業務である電信電話交換作業(男子は全体の〇・六〜〇・七%)における婦人労働者の特性、その特徴として昼夜休日もない労働の状態、賃金、作業室、休憩施設など職場施設について調査したものである。調査対象は、東京、大阪、福岡、札幌など主要都市における二四一事業揚、二五〇八人である。
(2)労働省婦人少年局「百貨店女子職員労働実態調査報告」 一九五二年六月、全国百貨店総数一三九の四分の一に当る三五事業場に働く女子店員三〇五二人(総数五万四九二三人、うち女子六〇%)について、その特徴、労働条件を調査したものである。
(3)労働省婦人少年局「女子保護の概況−一九五二年」 一九五二年における産前産後の休業状態、妊産婦の退職者数、生理休暇などについての報告。
(4)全国蚕糸労働組合連合会「時間外労働調査」 一九五三年九月、この組合が熊本県における傘下支部について行ったもので、朝食前の準備作業、終業時間後のあと始末を始め、昼食をゆっくり食べる余裕もなしに働かされている状態が示されている。なお同組合婦人部が行った、蚕糸女工の読めない字、意味の分らない字句の調査のうち、直接労働者に関係がある字句についてみれば第180表の状態である。また最後に女子・年少者関係労働基準法違反件数をあげると第181表の如くである。
売春婦の状態 婦人少年局の調査によれば、一九五二年六月において、いわゆる赤線区域六一八ヵ所、業者一万八〇四七人、接客婦数五万七八〇三人となっていて、東京、福岡、長崎、大阪、京都、愛知、神奈川などの順で多い。これは米軍、保安隊の基地の存在と不可分であって、これについて厚生省が把握した数は第182表の通りとなっている(婦人少年局「売春に関する資料」より)。
又、一九五二年秋、婦人少年局が東京都内の売春婦一六一名について行った調査によると、売春婦となる以前の職業は、女給・女中などサービス業が四二・二%、無職一八・六%、事務員一九・三%、女子工員八・七%、農業三・一%などとなっており、その動機は生活苦が過半数を占め、好奇心や虚栄心によるものがこれに次いでいる。月収は二万円以下が五八%、生活が苦しいというのが半数以上であった(婦人少年局「売春婦並びにその相手方についての調査」より)。
日本労働年鑑 第27集 1955年版
発行 1954年11月5日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2001年10月16日公開開始