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日本労働年鑑 第26集 1954年版
The Labour Year Book of Japan 1954

第二部 労働運動

第四編 その他の社会運動


第二章 学生・青年・婦人運動

第二節 婦人運動
婦人の平和擁護運動

 一九五一年九月単独講和条約が締結されて以来、一九五二年においては四月二八日講和条約発効、七月四日破壊活動防止法の成立、一〇月一日総選挙と、我国の運命を方向づける重大な決定が次々と実施され、戦争政策は着々強化されて来た。こうして、平和にとって益々危険な状態となりつつあるとき、トコトン迄戦争の苦しみを体験した婦人の「平和を守れ」という希いは、絶対に譲歩できない要求となってあらゆる機会毎に表明され、この運動はしつように展開された。それは、平和な社会をかちとるまでは益々高まって行くに違いない。以下に記すあらゆる婦人団体の運動目標は、すべてこの「戦争反対」に繋がっており、又その運動はすべてこうした希いから発したものであるということが出来るだろう。

 一九五一年一二月一九日、平塚らいてう、市川房枝(婦人有権者同盟会長)、上代たの(婦人平和協会長)の三氏の発起により、婦人有権者同盟、婦人平和協会、キリスト教婦人矯風会、婦人民主連盟など婦人団体の会員有志、緑風会の高良とみ氏を始め講和・安保両条約批准国会で反対投票した婦人議員、日教組、国鉄労組の有志が集って「再軍備反対婦人委員会」を組織したが、一九五二年一月八日次のような日本女性のアピールをアメリカ上院議員それぞれに宛てて発送した。

   
(非武装国日本婦人のアメリカ上院議員へのアピール)
 私たち日本各婦人団体メンバーは、ジョン・フォスター・ダレス氏が日本にたずさえた講和条約と安保条約の草案について再度ダレス氏に訴えました。
 私たちの講和条約が、日本の憲法にはっきりとしめされた絶対平和の原則を、私たちが忠実に守れるようなものであることを、切望しておりました。
 けれども、サンフランシスコで調印された講和条約は、まったく私たちの願いを裏切ったものであり、私たちは、失望のドン底につき落されました。
 日本政府の代表がこの日条約に調印し、日本国会が両条約の批准に多数決で、閣議に賛同したことは事実であります。
 しかし参議院議員の三分の一以上、すなわち賛成一四七に対し、七八が反対したことは銘記せられるべきことであります。
 さらにまた、現在の政府及び国会議員は、三年前に選出されたものであり、両条約に対する現在の真の国民の意志を代表しているものとは、いえないのであります。

 さいきん、ダレス氏が日本を訪ねたとき、各新聞は彼の訪日をあたかも国全体がよろこんで歓迎したかのごとく報道しましたが、この造りあげられた歓迎は、まったく政治家や、実業家の団体の、また現在勢力を再び得てきている、国粋主義者たちの政治的なゼスチュアのように思われました。

 一方、一般国民の大多数、とくに婦人や青少年は、憂慮と不安と、断腸の思いでこの事件に直面したのでした。
   (中略)
 私たち日本婦人は、国内治安のための警察予備隊に反対するものではありません。
 しかし、日本憲法にしめされた原則にしたがわない、日本の、再軍備の目的には賛成できないのであります。
「私たちは、もう二度と私たちの子や夫を、戦地に送らないようにきめました」

 日本国憲法九条に「日本国は永久に戦争を放棄する。日本国民は陸海空軍その他の戦力は、一切これを保持しない」−−が米国、およびその占領軍当局によってきめられたことを、日本国民はよく知っています。

 この事実は、日本の一部の人々に、アメリカおよびその指導者の誠実に対して、不信の感を抱かせるものであります。
 それ故私たちが、米国と日本との間の永久に変らない有諠を願っているため、私たちはこの大きな不満の意をはっきり表明することが、私たちのつとめであると考えています。

 それ故に、両条約がアメリカ上院に提出されるとき、上院議員各派が、私たち日本婦人が日本が永久に武装を放棄した国民であることを、切に願っていることを銘記してくださることをのぞむものであります。

 一九五二年一月八日
          日本再軍備反対婦人委員会
             代表者 平塚らいてう
                 市川房枝
                 上代たの

 国際婦人デーの三月八日、東京では共立講堂で、働く女性のつどいの主催による「働く婦人の集い」が開かれた。職場の婦人や主婦たち三〇〇〇名が参加し、帯刀貞代氏の国際婦人デーの思い出と現代社会に処すべき婦人の態度に関する講演があり、コーラス、朝鮮や沖縄の舞踊、国鉄労組の演劇、映画などを楽しんだ。またこの日、日本民主婦人協会、東京都北区未亡人同盟、母の集い、朝鮮女性同盟、婦人民主クラブ杉並支部などの婦人団体代表五〇名は、国会へおもむき、再軍備反対、徴兵反対、強制送還反対の請願書、吉田内閣への抗議文を各党に手渡した。

 なお、この国際婦人デーに当り、中華全国民主婦女連合会から日本民主婦人協議会宛、次のような手紙がとどけられた。
   
日本民主婦人協議会の皆さん
 三月八日の国際婦人デーを間近にして、わたしたち中国婦人は、とくに皆さんに、熱い友人としてのお祝いと敬意をおくります。

 第二次世界大戦後、あなたがたはながい占領下に、この上ないみじめな日々をおくられました。外国帝国主義者は、あなたがたの自由と独立をうばい、あなたがたの基本的人権を次から次へとはぎとりました。労働者たちはザンコクなサク取をうけ、くらしてゆけないような僅かな賃金しかとれず、農民たちは強制供出と税金の重荷に息もつけず、そして婦人たちの境遇はいっそうつらくなりました。

 六年このかた、日本国民にたいする外国帝国主義者の圧迫は、日に日にはげしさを加えています。いわゆる「サンフランシスコ講和条約」「日米安保条約」の締結は、日本をますます植民地と戦争へのコースにのせ、日本国民をいっそう悲惨な状態におとしいれています。

 中国の人民と婦人は、かつてながいこと外国帝国主義者のじゅうりんと迫害をうけてきました。ですから、この苦難のなかにある日本国民、わけても日本の婦人と児童にたいしてかぎりなく深い同情をいだくものです。

 日本国民がすでにまきおこしているたくましい民族解放運動は、中国人民ならびに世界中の平和と民主主義を愛する人びとから、力づよい同情と支援をうけています。日本国民の皆さんが団結し努力することにより、また世界中の平和を愛する人びとの支援のもとに、あなたがたはかならず、外国帝国主議の陰謀と統治をうちやぶり、最後の勝利をかちとることができるでしよう。

 私達は信じています。自分の夫たち子供たちを外国帝国主義の肉弾としないために、あなたがたが豊かな生活ができるために、日本の婦人、母親はかならずさらに力づよく、夫や子供たちと手をたづさえて、祖民の独立解放の偉大なたたかいに起ち上り、力をつくすことを。

 たたかっている日本婦人の隊伍が、日にまして壮大になるようお祝いし、日本の独立、自由、平和、民主をたたかいとるあなたがたのたたかいが成功するよう、お祝いたします。
 一九五二年三月
          中華全国民主婦女連合会

 単独講和条約発効の四月二八日、再軍備反対婦人委員会は代表平塚らいてう氏の名で「講和条約発効の日を迎えて」という次のような要旨の声明を発表し、戦争に直行する「独立」に反対した。

 なお同委員会は、三月二六日「一、『婦人の力で平和を』という再軍備反対のやさしい解説リーフレットを日教組、国鉄など各労組婦人部、労働省婦人少年局の下部機関、全国都道府県婦人連合会、キリスト教関係婦人団体など各方面へ配布する。一、各地方の団体に進んで講演会、座談会などを開かせ、運動の浸透をはかる。」などの運動方針を決定している。

 

講和条約は平和を願う私ども日本の女性の意志を裏切って、今日ついにその発効をみるにいたりました。今後に来るものがなんであるかに思いいたるとき、私どもはまた、あんたんたらざるを得ません。

 片面的講和条約、日米安全保障条約とぞれにともなう行政協定によってアメリカ防衛線の一環となった日本はソ連、中国を敵として再軍備を要請されることになりました。しかし日本には絶対平和主義と民主主義とを二大原則とする憲法が現存しています。いま憲法第九条の条文に違反し、再び軍備を強行することは、新しい日本の喪失を意味し、国民に生きる目標を失わせることだと思います。

 私ども女性は独立の日を迎えるに当り、安全保障条約と行政協定がなんであるかに拘らず日本独自の立場で、憲法を厳守し、再軍備に反対するものであります。私どもはソ連、中国その他のアジア諸国との友好関係が一日も早く再開されることを希望します。

 六月一八日、野上弥生子、平塚らいてう氏など二〇名の代表は破防法案審議中の国会へおもむき、各婦人団体による破防法反対要請文を手渡した。「平和を願う日本の全婦人の闘いをこめて破壊活動防止法案に反対いたしております。選良である参議院の皆様が私たちの要望にこたえ破防法撤回のため最善の努力をして下さいますよう要請します」というこの要請文は、次のように広汎な婦人団体の願いを結集したものであった。婦人民主クラブ、日本女子勤労連盟、中野文化団体懇談会、中野大和町婦人会、中野江古田沼袋婦人会、生活共同組合婦人有志、都教組千代田婦人部、美術家平和懇談会、平和美術展委員会、日本美術会、全損保日産支部青婦人部、同東京海上東京分会婦人部、同大阪住友支部東京分会婦人部、同東京地協青婦人部、東京ガス労組青婦人対策部、協和労組東京支部婦人部、農林省農政政局青婦人部、全食糧本庁支部青婦人部、明治ゴム労組婦人部、全新聞時事通信支部婦人部、全日本印刷出版広文館分会、同岩波分会青婦人部。

 八月二四、二五の二日間東京において、「全日本青年婦人会議第一回全国大会」が開かれた。国鉄青年婦人部、日教組、都市交、全専売などのほか各地方青婦人会議の代表約四〇〇余名が参加し、次のような大会宣言を発表した。

   
(大会宣言)

 世界のすべての国の母は、その子供を戦場に送るために生んだのではなく、すべての国の青年は原爆の戦野に屍をさすために生きてきたのではない。侵略戦争の悲劇と敗戦の現実を身をもって体験させられた全日本の青年婦人は、自ら先んじて戦争の放棄と非武装国家の建設を決定し、全世界の人類に向って、自由と正義と平和の確立を堂々と憲法をもって宣言したのである。この際あらゆる民主団体、中小企業、学生、文化人、知識人と広く提携し闘いを通じて平和の戦線を統一し、次の目標をかかげて更に徹底的な闘いを展開するものである。

一、民主主義確立のため総選挙に勝ちぬき、反動吉田内閣を打倒する。
一、学問、思想、言論の自由を守り抜くため弾圧諸法規に反対し、青年婦人戦線を統一して闘う。
一、民族の独立と平和を守るためにアジア地域の青年婦人を中心として全世界の平和勢力を結集して戦争に反対する。
 右宣言する。
 一九五二年八月二五日
          全日本青年婦人会議
            第一回全国大会

 八月二日、モスクワ経済会議に出席しソ同盟や中国を視察して帰国した高良とみ女史の歓迎会が行われたが、それに集った一三婦人団体四〇〇〇名に対して、平塚らいてう氏によりこの集りを平和の組織として残したいとの提案があって、婦人の全国組織を作るための準備会が生れた。次いで八月一三日この準備会は会の名称を「婦人団体連合」と決定。「一、憲法を守り人類愛で戦争を防ぎましょう。一、明るくつよい協力で病気と貧乏を退治しましょう。一、人まかせをやめて二度とだまされますまい。一、独立心の強い敬愛される国民となりましょう。一、愛と叡智で世界を一つに結びましょう」の綱領の下に婦人団体の参加を呼びかけることになった。

 一〇月一日の衆議院総選挙をひかえて、日本婦人有権者同盟、日本キリスト教女子青年会(YWCA)、主婦連合会、日本婦人平和協会、婦人民主クラブ等各婦人団体は平和憲法擁護、戦争反対、生活の安定などを掲げて宣伝活動を開始したが、この婦人団体連合準備会では九月一〇日「一、平和に捧げる婦人の力。一、再軍備に賛成する党には投票しません。一、平和憲法を守りぬく党に投票しましょう。」の選挙スローガンを決定、選挙管理委員会による中止申入れを排して九月二〇、二一日、このスローガンのビラを配布(東京一三万枚)、九月二三日には「再軍備反対婦人大会」を開き、主婦、職場婦人三〇〇名の参加のもとに平塚らいてう、高良とみ、神近市子、深尾須磨子、比嘉正子氏の講演を行った。

 又、従来活発な運動を行って来ている関西主婦連合会では「再軍備反対の人を選びましょう」とのポスターを貼り、大阪市選挙管理委員会が選挙違反と認定したのに対して「こんどの選挙は戦争か平和か国民の運命を決定するものである。この重大な選挙戦で母親としてまた婦人団体として純粋な気持を素直に発表できないならば、その法律こそ悪法である。この悪法こそ撤廃すべきである」との声明を発表し、労組、学生、文化団体の支持の下に再軍備・戦争反対の選挙をと市民によびかけた。婦人有権者同盟は「一、民主政治を尊重する。一、言論の自由、基本的人権を尊重する。一、再軍備を主張しない。一、子供の教育に熱心な政党」という方針で宣伝活動を行い、また各政党に対して、戦時中の指導者や選挙違反の経験者などを公認するなど申入れた。

 その後婦人団体連合準備会は一〇月一六日に総会を開き、日本民主婦人協議会、働く女性のつどい、日本キリスト教婦人矯風会、婦人民主クラブ等の団体代表が参加して、「婦人団体連合」結成促進、サンガー夫人歓迎などを決議した。

 国際的な婦人運動としては、七月ブカレストにおいて国際民主婦人連盟の第三回総会が開かれ、次のようなアピールを採択し、各国の婦人に対して、十二月ウィーンで開かれる諸国民平和会議の準備のため直ぐ活動にとりかかるよう呼びかけた。

 

朝鮮の戦争はやめるべきです。軍備は縮小すべきです。原子兵器、細菌兵器、大量殺人兵器は禁止すべきです。ドイツと日本の軍国主義の復活をゆるしてはなりません。平和条約をむすばねばなりません。婦人は何億という他の人々と一つに心をあわせてゆるぎない平和勢力をつくりあげねばなりません。そしたら平和は勝つでしょう。

 なお一〇月北京ではアジア太平洋地域平和合議が開かれたが、そこで採択された九項目の決議のうち、婦人と児童に関しては次のように決議されている。
   
(婦人の権利と児童の福祉決議要旨)
 すべての婦人とすべての子供の名前で私たちはつぎの要求を提案します。
 私たちは原子、細菌、その他の多量殺りく兵器が禁止され、戦争宣伝が禁止されることを要求します。
 私たちはすべての諸国の政府がいまの戦争にわりあてられる基金を社会福祉にささげることを要求します。
 私たちのすべての諸国の政府が、すべての婦人の政治、経済、教育社会のうえでの権利を保障し促進することを要求します。
 私達はすべての諸国の政府が、婦人と子供を差別待遇する法律を廃止し、完全な平等、幸福、平和を保証する条件をつくるこを要求します。

 最後に、最近の主な婦人団体を紹介しておく。
主婦連合会 千代田区内幸町一の二国税庁ビル 奥むめお
関西主婦連合会 大阪市都島区都島本通五の五都島児童館内 比嘉正子
日本キリスト教婦人矯風会 新宿区百人町三の三六〇 ガントレット恒子
婦人民主クラブ 港区芝新橋七の一二 櫛田ふき
民主保育連盟 北区豊島町北区労働者クラブ 羽仁説子
日本キリスト教女子青年会(YWCA) 千代田区九段四の一五 植村環
日本婦人有権者同盟 渋谷区千駄ケ谷五の八八九婦選会館内 市川房枝
日本民主婦人協議会 港区芝新橋七の一二文化工業会館内 小川智子

国際民主婦人連盟(本部)オーストリヤ・ウィーン(議長)ユジェニ−・コットン(フランス)(副議長)蔡暢(ツァイ・チャン)他数名(書記長)マリー・クロード・ヴァイアン・クーチェリエ(フランス)(綱領)一、ファシズムの根絶と民主主義の強化ならびに永くつづく平和を! 一、政治、経済、法律、その他すべての部面における男女同権! 一、母性の幸福と児童の生活、健康、教育の保護を!

日本労働年鑑 第26集 1954年版
発行 1953年11月20日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
****年**月**日公開開始


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