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日本労働年鑑 第25集 1953年版
The Labour Year Book of Japan 1953

第二部 労働運動

第四編 その他の社会運動


第二章 婦人運動

第一節 婦人の平和擁護運動(つづき)

 六、「日本平和婦人のつどい」結成のよびかけ
 朝鮮戦争一週年を目前にひかえた六月上旬、日本民主婦人協議会(民婦協)は「日本平和婦人のつどい結成運務のよびかけ」として「平和のちかい」、「平和のしるべ」、「平和のつどい」(後掲)を発表し、平和を守るための具体的な行動方針を提唱した。

 よびかけ
 私たち日本の婦人は昭和二〇年八月に世界ではじめて原子ばくだんのギセイになり間もなく終戦の日を迎えたことを決して忘れません。
 父や夫や子供を戦争で死なせ、子供と別れ、家を焼かれ、食物を探し求めたあの骨身をけずる苦労を私たちは忘れることはできません。
 再び新らしい戦争の危険が迫っているとき私たち日本の婦人は一人のこらず平和を守るために立上らないではいられません。
 平和を守る婦人の広大な統一戦線をつくるため全日本の婦人につぎの平和運動をよびかけます。
 平和のちかい
 一、遠い親せきよリも近所といいます。私たちはどこの国とも仲よくなる全面講和をのぞみます。
 二、どこの国ともゆききして産物をうりかいし平和なつきあいができることを望みます。
 三、どこの国とも自由に学問文化をわかちあいお互いに学び合ってりっぱな国になることを望みます。
 四、降伏のときの約束どおり、日本を監督する責任のある四大国(米ソ中英)が相談して、どこの国にも納得できる講和条約を作って下さい。アメリカとだけ講和を結んで、日本に関係の深い中国やソ連と結ばないのでは安心ができません。

 五、朝鮮の戦争はいますぐやめて、外国軍隊は引あげて下さい。理由は何であれ、他国の領土に軍隊を送ることを侵略だと考えます。
 六、原子爆弾や細菌など人類も破滅させるような兵器を使わないで下さい。毒ガスが国際条約で禁止されているようにこれらの兵器の製造禁止を守らない国を戦犯とします。
 七、どこの国でも軍備をととのえるため莫大な予算をくんでいます。これらはみんな国民の税金でまかなうのですから軍備をちじめるように相談して下さい。
 八、日本が再軍備することに反対します。となりの家が借金してまでピストルや鉄砲を買いこんでいるとしたら、近所の家は安心していられないではあリませんか。
 九、戦争のことを宣伝することはやめましょう。各国政府は戦争を宣伝するものを罰する法律を作って下さい。人殺しをすすめた人は法律で罰するのが当然です。
 一〇、私たちは共産主義者がその思想で侵略するというバカげた考えを認めません。他の家の人が自分とちがった話をし、ちがった生活をしているからといって戸をこわしたり、石を投げたりする人があれば人は誰でも馬鹿げたことだと考えるでせう。

 一一、米、ソ、英、中、仏の五大国が相談して平和協定を結んで下さい。大きな軍備をもっているこれらの国が平和を保障すれば、世界の平和を維持することができます。
 一二、この五大国平和会議に加わらない国があれば、その国こそ侵略を考えている国だと認めます。
 平和のしるべ
 私たちは戦争の軍備が生活を破壊していることを知っています、生活を守るために闘う団結のなかに平和を守る力があることを信じて次の「平和のしるべ」を行動の手びきといたします。

 一、政府が一切の予算を戦争軍備に使わないようあらゆる方法でかん視しませう。
 二、家族一人につき月一万以下の収入には税金をかけないで下さい。失業者、未亡人、不具者は免税にして下さい。
 三、働く人の住居、託児所、道路、子供のあそび場を政府は責任をもって備えつけて下さい。
 四、職安で働く婦人の就労手帳取上げに反対します。
 五、健康保険は今まで通りに扱って下さい、病人はなおるまで国家で保護して下さい。
 六、日本米の朝鮮送り反対、月に二〇日分の内地米の配給を保証して下さい。
 七、国土をあげて戦争基地にするための電力開発に反対します。電気料金の値上絶対反対。
 八、米、水道、ガス、交通料金など、もうけを独りじめする大企業の料金値上反対、政府はすぐ物価を下げて下さい。
 九、一人最低手取八、〇〇〇円の賃金を保証してください。
 一〇、遅配賃金をすぐ支払って下さい。経営費は、まず一番先に賃金を払って下さい。
 一一、予備隊志願に送りこむ失業をなくして下さい。夫や子供はやとい兵にはしない。
 一二、主婦に有利な内職を世話して下さい。
 一三、働く婦人を奴隷と、パンパンにする植民地はいやだ。青年と力を合せて闘いましょう。
 一四、婦人を職場えガンジガラメにしばりつける職制は売国奴の手先です、みんなの団体行動ではねかえそう、私たちのなかまだけの相談会で応援しあって強くなりませう。
 一五、職制とグルになっている民同幹部は追い出して組合を労働者のものにしませう。
 一六、首切、職場転換などのギセイ者を出さないように、サボやストの実力で犠牲者を守りぬこう。
 一七、働くなかまを殺す軍需品を作るな、送るな、政府に平和産業をおこさせましょう。
 一八、軍事基地にするための土地取あげ反対、平和と村をまもりませう。
 一九、米は引き合う値だんで買上げて下さい、強制供出反対、農家に飯米を確保して下さい。
 二〇、肥料農機具を安く保証して下さい。
 二一、子供をバカに育てる植民地教育反対、君ガ代を唄わせないで下さい。
 二二、内容のある学校給食を国の費用で支給して下さい。
 二三、学童を街頭募金や工場動員にかりだすことはやめて下さい。
 二四、先生の首切反対、待遇をよくしてよい先生を大ぜい学校へ来てもらうようにして下さい。
 二五、PTAを働く人のものにしましょう。
 平和のつどい
 私たちの一人一人では弱くて、戦争にかりだす力に押されてしまいます。しかし団結して力を統一すれば、私たちがうちかてないものはありません。平和を愛する人は組織に加わって、必要な時には、一せいに同じ行動がとれるようにしてゆくために私たちは「平和のつどい」に集ります。

 一、私たちは「平和のちかい」をとなり近所やあらゆる集りにもっていって賛成者をひろめます。
 二、「平和のちかい」のどれか一項目に賛成する人は集り「平和のつどい」を作りましょう。
 三、「平和のつどい」は団体でも個人でも参加できます。参加した団体は自分たちの団体の活動をますます活発にやりながら「平和のつどい」をふやします。
 四、「平和のつどい」は地域的に集って、だんだん大きな「平和のつどい」にまとまり、日本中の婦人が手をつないで平和の輪をつくるようにいたします。
 五、人種、宗教、年令、職業、政治上の考え方のちがいのすべてをこえて、私たちは平和のために手をつなぎ、世界の平和運動と提けいいたします。
 六、ベルリン・アピール、講和投票をみんなで集め、署名運動決議運動を実行します。
 七、私たちは各々の「平和のつどい」が「ちかい」や「しるべ」にみちびかれて、それぞれの婦人の要望をまとめ、政府や、その地域で人民の生活問題に責任のある人々に賛成を求めるうんどうを広めます。こうして、誰が平和の味方か誰が戦争をのぞんでいるかをすべての婦人がみきわめるようにいたします。

 八、私たちは、平和と独立と、生活の安定を守るために「日本平和婦人のつどい」を作るために心をあわせ、力に応じて働きます。みんなの経験を話しあい、応援しあって、だんだん強くなります。

 九、私たちは、平和の力を強くするために一人二円の基金あつめをいたします。
 七、全日本青年婦人会議結成記念平和大会
 「一九五〇年四月、労組青年部と文化団体の有志で組織されていた民主青年婦人連絡懇談会は七月三〇日全日本青年婦人会議として発足した」(総評、八月一七日)その結成記念平和大会を、終戦記念日の前八月一四日、総評参加の労組青年婦人部及び日農、日本平和婦人協会、青年文化集団の代表約一、〇〇〇名出席のもとに開催され、左の如きアピールと平和決議を行った。

 アピール
 われわれの目指すものは青年婦人の社会的地位の向上、人間的成長であり、それらを妨げ未だ強く日本を支配している一切の古いものを変革する青年婦人の主体的な力の強固な確立である。それは直ちに実践を通じて政治に若々しい理想と使命を注ぎこむこのような青年婦人の力の結集と強い運動により日本の次代を輝かしく新しいものに発展させることが、われわれの目標である。さらに日本の青年婦人は、戦争に絶対に反対する。何故ならばわれわれが変革しようとする一切の古い勢力は、戦争の暗雲と危機の中にその強力な復活と支配の力を凝集させ鋭い爪をといでいるからである。さらにまた現在の日本の青年婦人の運動は必ずしも次代の日本を輝かしく新しい日本に建設し得るものばかりではない、たとえば、−部極左分子により指導され組織されている運動は未だ残存せる力を糾合し再び日本を冷い戦争の一方の側に捲きこむべく精力的な運動を展開している。また他方に意識の遅れた地域青年団の多くは反動政府のお声がかりの下に旧ファシストの残党を指導者として急速に全国的な連合体を結成しこのまま放置すれば政府の反動的施策の有力な手先と化し去る恐れが強い。このように戦争を招来し暗雲をもたらす力は急速且つ強力に組織され動きつつある。これと斗い日本に平和と自由と正義をかちとる真の民主的青年婦人の結集もまた急速且つ強力になされなければならない。職場に田園に家庭に働き、学園に学ぶ民主的青年婦人は、その使命の重大を痛感しここに全日本青年婦人会議に結集した。その旗幟は明らかにその熱情を激しくその理想への誇りは高い全日本青年婦人会議の旗の下に結集せよ!

 平和決議
 銃を手にしない青年の力と夫や子供を戦いにやらぬ婦人の熱情が偉大な平和へのとりでであることを信じ全日本青年婦人会議を結成した。私達はどんな理由があろうと戦争に日本を捲き添えにすることは断じて反対です、まして対日講和を戦争の手段にする意図はどんな国でも永久に日本の友ではありません。私達はあくまで中立を守り祖国と民族を救うあらゆる努力を誓います。

 八、非武装平和日本を守るための共同声明
 さきに講和にたいする要望をダレスに提出した、平塚らいてう、野上彌生子等を含む日本婦人平和協会、婦人有権者同盟、矯風会、大学婦人協会、民婦連、キリスト教青年会有志は八月一五日再び講和に対する共同声明を発表しその立場をあきらかにした。

 一、憲法は戦争放棄、非武装の絶対平和主義をきめているが、これは戦争の犠牲によって見いだしたもので、これを守りえないならば、国として生存の意義をうしない、精神的に崩壊をまぬかれない。

 二、世界平和のため、アジア諸国は米ソいずれのブロックにもぞくさない第三勢力の中立地帯としてそだつことがのぞましい。インドによって明らかに示されているこの線は、力よわくとも正しいのであって、世界平和を目標とする日本もこの線以外ではありえない。

 三、旧日本が侵略したアジアの国々にたいしては、当然賠償すベきで、経済力がないということは理由にならない。
 四、再軍備、日米駐兵協定やその他の軍事協定は憲法の平和原則にもとっている。ソ連侵略の仮定にうったえておこなわれるこれらの協定は、極東における両勢力の緊張をつよめ、戦争にみちびく機会をあたえるもので、武装による平和はあたらしい戦争の準備であることは、すでに人類が経験ずみのことである。国際連合を完全な平和機構にあらため、つよめることで、平和と安全を保ちたい、日本や他の未加入国が国連に参加をみとめられることを希みます。

 五、日米経済協力という言葉はまことに明るくたのもしいひびきをもっているが、アメリカの世界政策に同調、協力し、ぼう大な軍備拡張を手伝うものであるかぎり本質は軍事的なものであり、わたくしたちののぞむ平和産業の復興、アジア諸国と貿易の再開、大衆の生活水準がよくなることは期待できない。

 九、批准反対全国青年婦人大会
 全日本婦人の「戦争反対」、「全面講和」の叫びはついに聞き入れられず吉田政府は九月四日単独講和に調印した。全日本青年婦人会議は、一一月二七日、東京で「批准反対全国青年婦人大会」をひらき「サンフランシスコ条約は戦争のための条約であり、たとえ国家が批准してしまっても、私たちは全国民とともにこの条約反対のためにいっそう強く闘う」(炭労、一二月一日)ことを決議した。

 一〇、婦人の平和擁護運動と社共両党
 一九五一年一月、社会党婦人対策部代表者会議はつぎの平和決議を発表した。
 社会党婦人対策部全国会議決議
 全日本の婦人の皆さんへ
 国際情勢の推移にともない、吉田内閣はその反動性を極度に露呈し再軍備問題を焦点として国際平和と対日講和にたいする把握をあやまり刻々に国内態勢も戦時的に強化しつつ一方的に世論の誘導につとめている。

 このことはわたくしども婦人がこころから念願する世界の平和と民族の独立へのみちに逆行するものであり、あきらかに戦争介入への一段階となる危険をすらはらんでいる。ここにおいてファシズムの抬頭こそ全国民のもっとも警戒を要するところである。

 母親はその愛する子を、妻はその夫を、ふたたびいずれの戦争の渦中にもおくってはならない。
 この決意のもとに全面講和、中立堅持、軍事基地提供反対の基本的態度を再確認するとともに戦争放棄の憲法をまもりぬくために、平和をもとめてやまぬ全日本の婦人の悲願を結集しさいごまで民族の独立のためにつよくたちあがることを期す。

 この意味において再軍備にたいして絶対反対することを第二回全国婦人対策代表者会議の名において決議する。
 一九五一年一月一八日
     日本社会党、第二回全国婦人対策部代表者会議
 決議
 一、私達の平和運動は社会民主主義の立場にたち共産党のそれとは明らかに違う。私達は資本主義的帝国主義の奴隷たることも共産主義的侵略主義の走狗たることも欲しない。日本人自らの力をもって独自な立場から世界平和に貢献せんとするものである。

 二、再軍備反対斗争は平和運動の中心的斗争題目であり、運動を分散させないために集中的に展開しなければならない。第一着手として社会党婦人対策部が民主的労働組合に協力を求め、労働組合の婦人と提携して、再軍備反対の平和宣言を行う。その際出来るだけ多くの婦人団体、宗教団体、平和団体の婦人にも呼びかけ婦人平和対策委員会を設ける。その実行委員を通じて全国各地の運動を組織し、全国を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、九州、四国の九ブロックに別ける。

 三、再軍備反対斗争を日常斗争にひき下げ、講演会、討論会、座談会等を各地を各地で活発に催す。これと並行して街頭で平和バッチ等をうり、平和運動の基金をつのり、関心を昂め、その昂揚した世論が圧力をもって目的貫徹に努める。また一方に於て世界全国の婦人団体、平和団体に呼びかけ、日本婦人の平和体制への挙国的要望を認識せしめる。

 一方、共産党においては五月全国婦人政策会議をもち、「すべての階層の婦人達を含めた平和擁護運動は、労働者婦人を中心に、婦人平和戦線めざして行動を統一することにある」と決定した。

 両党とも「再軍備反対」、「全面講和」を主張し、それぞれ平和擁護のため広汎な活動を展開した。

日本労働年鑑 第25集 1953年版
発行 1952年11月15日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2000年8月10日公開開始


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