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日本労働年鑑 第25集 1953年版
The Labour Year Book of Japan 1953

第二部 労働運動

第四編 その他の社会運動


第二章 婦人運動

第一節 婦人の平和擁護運動

 一九五一年もまた、労働組合の婦人を中心に各階層の婦人が平和擁護運動に参加して、国際的な平和擁護運動に大きな役割をはたした。原爆で悲惨な体験をした日本婦人の声はいくたの声明、決議となって、世界の戦争兆発者を攻撃した。

 一、世界各国に対する婦人団体連名の請願
 一九五〇年二月一八日に参議員会館で日本婦人有権者同盟、女子勤労連盟、中野平和婦人会、日本婦人平和懇談会、民主保育連盟、婦人民主クラブ、日本民主婦人協議会、全東京都生活協同組合連合会婦人部、交通図書協会等の代表一〇数名出席のもとに、本田良介氏から「最近の国際情勢の説明をきき「婦人の平和運動」について討論した。その結果、日本の婦人のねがいを世界の責任ある人々に聞いてもらうことが、第三次世界大戦を阻止する一つの運動であると、つぎの請願書を一九五一年一月一〇日、各国に発送した。

 請願書
 日本のあらゆる婦人のねがいをこめて、私どもはいま次のことをあなたにお願い申上げます。
 一、人類を不幸と困苦におとしいれるしかない第三次世界大戦を阻止して下さい。
 一、再び原子爆弾が使用されることに反対いたします。
 最初に原爆の被害をうけた日本婦人の義務と責任をもって、世界平和のための、あなたの最善の努力を祈ります。
 一九五〇年一二月一八日
 アメリカ大統領トルーマン様
 英国首相アトリー様
 ソヴエト同盟スターリン様
 インド首相ネール様
 国際連合事務総長リー様
 二、芦田均氏に対する抗議
 再軍備論者として有名な元首相芦田均氏は福知山市において、「本来なら再軍備のためには憲法改正が望ましいがそのためには国民投票によらねばならぬ、しかし戦争の悲劇をまざまざと体験した多くの婦人たちの反対は明らかなことで、投票の結果はおそらく敗れるだろう、そうした予想から憲法改正はある時期まで待つことが必要で、これにかえて、各政党が同一歩調をとり講和条約を受入れ国連支持のもとに軍備をもつことが必要である」(朝日新聞、一月一〇日)と講演した。この「あまりにも非常識、あまりにも封建的非立憲的な言葉」(婦人民主新聞、一月二八日)に対し、各界各層の婦人達は、一月二五日、つぎのような抗議をおこなった。

 抗議文
 一月一〇日附朝日新聞掲載の貴方の福知山市における講演会記事を私達は読みました。それによると、貴方も言われる通りに戦争の悲劇をまざまざと体験して、再軍備に反対する多くの日本婦人の意志をじゅうりんし、貴方は日本の再軍備を肯定するのみならず、更にこの実施のために憲法をも侵犯しようとしていることを知りました。国民投票の結果は明らかに敗れるであろうから国連支持のもとに闇とり引をもって軍備をつくるということはあまりにも国民を愚ろうし且つ国連をも汚辱するものであります。

 私たちは貴方の余りにも非常識な、余りにも封建的な、余りにも非立憲的な思想に対し憤げきを覚え、軽蔑するものであります。この憲法は五年前に貴方が憲法改正委員長として、声涙と共に「天地神明にかけて感謝する」といって作り上げたものであることを私たちは知っています。その責任者である貴方は早くも、これを自ら破り捨てようとしています。私たちはこのような無定見な政治家を信頼することは今後出来ません。

 日本婦人は貴方にこの失言を広く国民の前に取り消すことを要求するものであります。
 さらに日本婦人は平和のため日本の再軍備に反対し、全世界の国々と完全な講和条約が結ばれるよう貴方が活動してくれることを要求いたします。
 一九五一年一月二五日
  日本婦人平和懇談会、婦人民主クラブ、日本女子勤労連盟、民主保育連盟、中野平和婦人会、日本民主婦人協議会
 芦田均殿
 三、「講和に関する日本女性の希望条項」
 一九五〇年六月二五日、「日本婦人の平和の希望条項」を手交して注目を集めたガントレット恒子、神代田野、平塚らいてう、野上彌生子、植村環の五婦人(本年鑑第二四集六五七ページ参照)はあらたに二月八日ダレスヘ「講和に関する日本女性の希望条項」を手交した。

 一、すべての国々を含む講和を、日本が戦争誘発の原因となる道を選んではならないと思います。
 二、国連の軍事行動に協力することは出来ません。平和機構としての国連に期待します。軍事基地を特定国、或は国連に提携することは対立を激化します。
 三、再軍備反対、日本のデモクラシーを破壊し、侵略主義へおいやり、世界の恐怖とうたがいを呼びもどします。
 理想主義にみえるこれらの道がもっとも現実的な道であると思います。
 一方、民主青年婦人団体連絡懇談会も「ダレス氏に訴う青年婦人平和大会」を開催し、つぎのことをダレスに要請することを決議した。
 一、全面講和
 二、中立による国連の安全保障
 三、軍事基地提供反対
 このほか、婦人有権者同盟や日本民主婦人協議会の代表も「日本の婦人たちは平和を願っています、どうぞ戦争にならぬように」という懇請文をもってダレスを訪問した。
 四、国際婦人デー
 二月一日、ベルリンでおこなわれた国際民主婦人連盟(国婦連)第三回評議会は、来る三月八日の国際婦人デーにたいし、各国にある国婦連の組織を通じ「今、世界の注目をひいている西独と日本の再軍備は、世界の平和を破壊するものとして、断乎反対しなければならない、特に婦人はその先頭に立って闘うよう切望する」と呼びかけた。

 このような世界の注目の中で、各地において、全面講和を闘いとるための婦人デーが準備された。
 二月八日、東京産別会館では、民主婦人協議会を中心に各労働組合、地域婦人団体が集り、国際婦人デー第一回中央準備会をひらいた。同日の会議で一九五一年の国際婦人デーは「戦争反対」、「全面講和」をかちとる国際婦人デーとし、中央では日比谷小音楽堂で集会を開くことなど、つぎの六項目の方針を決定した。

 一、今年の国際婦人デーは、戦争反対、全面講和をたたかいとる国際婦人デーとする。
 二、地域の条件に応じてスローガンをつくり中央準備会にもちよる。
 三、各地域では戦争準備の実状、生活の状態をしらべ、それぞれ交換する。
 四、地域の婦人平和戦線をつくるよう準備会や集会を進める。
 五、具体的活動をどうするか。
 (1)講和投票を工場、職場、地域婦人、主婦によびかける(東京の目標を三〇万とする)。
 (2各地域、各工場ごとに一人一円カンパする(分会では婦人部員だけでなく、青年部にも協力してもらい、分会全体を対象として行う)東京では各区で一区最低千円を中央準備会に納める。

 六、宣伝活動について
 中央ではスローガンを入れた伝単と、国際婦人デーの名入りの全面講和投票用紙を三十万票つくる。
 七、中央大会は三月八日、日比谷小音楽堂で一〇時から開催する。
 このように準備されていた国際婦人デー中央大会にたいし、警視庁は、都条例を適用させ、これを禁止した。全商工、金属労組、民主保育連盟、婦人民主クラブ、日本民主婦人協議会の婦人約三〇〇名は、この不当な処置に対し、国会にあつまり、各党代表にあい、言論、集会の自由について抗議し、午後二時から衆院会館で各党代議士をかこみ、懇談会を開いた。婦人労働者からは、首切りや労働強化反対、日雇のおばさんからは就労手帳とりあげ反対と託児所の設置について、主婦からは物価の値上りと石まじりの外米反対の声があげられ、これらのことを実行させるためにも、まず全面講和でなければならないことが決議された。

 五、婦人の日
 総評加盟組合婦人部、民主青年婦人団体懇談会主催の「婦人の日」中央大会は四月一一日午後一時より東京読売ホールで開催された。
 日本の民主化、世界の平和は民主的な婦人の力で築こうと集った約一、〇〇〇名の婦人達は、つぎのスローガンと大会宣言を可決した。
 スローガン
 一、婦人の参政権を生かして明るい政治
 二、働く婦人を守る労働三法の完全実施
 三、全面講和で平和を守れ
 四、夫や子供を失う再軍備反対
 五、戦争を誘発するファシズム反対
 六、地方議会に婦人を送れ
 七、子供の幸福を守れ
 八、婦人の地位の向上、母性の擁護
 九、四月十日の婦人の日を祝日に
 大会宣言
 参政権をもつ今日の私達は過去の政治は盲目であり無謀な戦争に協力さえした愚を繰返してはならない義務と責任がある。
 戦争の惨禍を身をもって体験し敗戦国の悲哀を身に泌みて感じ文化国家の再建に苦闘する現在の私達は、地球上から戦争の悪魔を葬る事を熱望している。
 二大国の対立する国際情勢や朝鮮問題が再び戦争の大きな不安を与えている時、今こそ平和愛好の日本婦人の意志を強く政治に訴える時である。そして天与の好機は四月下旬の地方選挙の時である。

 民主的労組婦人部は、日本婦人の参政権行使の記念日の意義を本年はこの一点に集中して「婦人の日大会の宣言」とした。
 一方、全国繊維産業労働組合ではこの婦人の日を国家的祝祭日にすることを、第三回年次大会で決議し、つぎの要請文を政府に提出した。
 要請文
 四月一〇日は日本の婦人が始めて参政権を得た意義深い日であると同時に国家的にも民主国家としての第一歩を踏み出した日でありますが、この意義を広く社会に徹底させますが、婦人の自覚と社会の認識を深める意味に於て国家の祝祭日としていただくことを強く要望いたします。

日本労働年鑑 第25集 1953年版
発行 1952年11月15日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2000年8月10日公開開始


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