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日本労働年鑑 第24集 1952年版
The Labour Year Book of Japan 1952

第二部 労働運動

第五編 労農政党


第三章 共産党

第七節 臨時中央指導部の設置と全国代表者会議

 共産党では全中央委員が公職を追放された結果、六月七日、統制委員会がその責任において「来るべき党大会まで暫定的な中央指導部をつくる必要をみとめ」その構成員を指名した。公表されたところによると、臨時中央指導部員は、椎野悦郎、輪田一造、杉本文雄、多田留治、鈴木市蔵、聴濤克己、河田賢治、谷口善太郎の八名であったが、聴濤克己は即日「アカハタ」編集関係者として公職を追放され、谷口善太郎は六月二八日の新聞記者会見にさいしての談話内容を理由に同じく追放され、さらに多田留治は八月七日に党内分派として共産党から除名された。なお、臨時中央指導部議長には椎野悦郎が任命された。

 つづいて、六月一八日には全国代表者会議が開かれ、臨時中央指導部議長の一般報告と、全中央委員が公職を追放された直後に統制委員会のとった処置を承認したのである。

 決議
 反動勢力の気違いじみた弾圧と圧迫のなかにわが党を先頭とする人民勢力のたゆみない躍進はつづいている。われわれの革命への闘いは嵐のなかでこそ飛躍し、前衛党が鉄の規律とボリシェヴィキ的統一を強化することは革命の歴史が証明している。

 わが党の中央委員に加えられた不当な弾圧は、われわれの闘いを一歩たりとも後退させるものでなく、むしろ臨時中央指導部の指導のもとに不屈の歩みをつづけるであろう。

 重大なる事態に際会して開かれた全国代表者会議は、同志椎野の一般報告ならびに統制委員会のとった処置を満場一致承認し、この決定の実践により、党の統一を乱すあらゆる分派策動を断乎として一掃し、光栄ある党の歴史にさらに一段と輝きを加えんことを誓うものである。

          共産党全国代表者会議
 一般報告(要旨)
 一、分派主義者と闘わずして党と人民の勝利はない。
 二、ファシスト的独裁の冒険はかならず敗北する。
 現在の情勢の特徴は、反動勢力による日本の植民地化と、日本を最前線基地とする新らしい戦争への挑発であり、これを促進するために、公然とファッショ政策がとられていることである。

 第一に強調すべき点は、現在のファシズムは、日本の国内反動の公然たる独裁だけでなく、これと結合し、これを従属させながら支配権をにぎる他の反動のファアシスト的独裁であるという点である。したがって、デイミトロフが提起した人民戦線よりも、もっと広汎な戦線、すなわち、反ファッショ民主民族戦線を形成することが重要である。

 第二の点はファシズムの行動はいかに狂暴であっても、これは彼らの強大さを意味しないということである。
 第三は、ファシズムは自己の野望を達成するために極めて冒険主義的な行動に走るということである。
 第四に、それは勤労大衆に対する資本のもっとも残ぎゃくな搾取と攻撃であり、勤労大衆の砦・平和愛好諸国に対する新しい戦争の準備である。

 三、世界平和と民族独立の結節点・全面講和
 いまや、世界の平和擁護勢力は非常に強化された。ストックホルムの平和アピールは、資本主義と植民地の人民をも含めて、幾億の大衆を奮起させ、平和のための闘争に結集しつつある。もはや、いかなる戦争兆発者もこの勢力を無視することはできない。

 ソヴエト同盟における五カ年計画の成功と東欧および中国における経済建設は、この勢力の基礎をいっそう強化した。

 反動勢力は中国および東南アジアにおける革命の勝利が確実となった結果、日本を反革命の基地として軍事化するために公然とファッシヨ化した。彼らは、軍事基地化をおし進め、さらに産業もこの目的のために軍事的植民地的に再編成し、軍需品生産に集中しつつある。貿易さえ軍事的目的のためにおこなわれているのである。新聞はファシズムの宣伝機関となり全日本の軍事基地化を公然とあおっている。

 この反面、無制限に拡大すべき平和産業は資金の枯渇と国内需要の破たんの結果壊滅している。都市にも農村にも失業者はあふれ、首切り、賃下げ、労働強化、重税、低米価等によって労働者階級をはじめ農民、市民等すべての人民大衆の生活は日々奴隷化しつつある。

 反動勢力は、このような状態を合法化し永久化するために、単独講和を強行しようと策謀している。彼らはこの陰謀を陰ペイするために、反ソ反共宣伝を行ない、単独講和があたかも戦争を終結し、全面講和への道を築くものであるかのごとくに宣伝している。しかし単独講和こそ、新らしい戦争のために日本を軍事基地化し植民地化すると共に大国間の対立を激成し、戦争の危機を一層深めるものであり、全面講和を不可能にするものである。

 講和は四大国の参加と一致を基礎とする全面講和以外にない。これのみが民族の独立と世界平和への道であり、平和産業を発展せしめ、中日貿易を促進するものである。これなしには日本の人民を窮乏と破滅から救うことはできないのである。

 したがって全面講和のための闘争は、民族の独立と平和のための闘争であり、世界の平和擁護勢力の力と日本の人民大衆の闘争の結節点である。

 四、大衆の決意を示す二八〇万票、日常闘争軽視の欠陥
 今回の参議院選挙は、大衆闘争の新らしい高揚の中で展開された。三月闘争の発展は、民同の裏切り的闘争方針をのりこえ、四月以降、労働者階級は全面的に高揚した。東京における五・三〇事件は、この闘争の一つの頂点であった。

 ファシズムは、ここに攻撃を加え闘争を後退させるために必死となった。しかし弾圧は大衆の憤激をいっそう呼び起しただけである。

 わが党は、かかる情勢のなかで、民族の独立と平和擁護のために広汎な選挙闘争を展開したのである。この結果党と大衆はともに質的に大きく発展した。したがって、内外反動勢力の攻撃はわが党に集中されたのである。彼らは陰険にも一切の反ソ反共デマを選挙戦に利用した。社会民主主義者、民同はこの反動勢力の手先となり、職制と結んで党支持の大衆を圧迫し、党と大衆を切りはなすことに狂ほんした。しかしながら、大衆は非常に高い決意をもってわが党を支持している。

 わが党と統一候補の得票は前回の衆議院選挙の二九八万にくらべ、得票においては、わずかに減少しているが、得票率は全く同じである。特に統一候補に対する大衆の支持は強かった。当選者が少なかったことは、参議院の選挙方法が衆議院と異なる結果であり、むしろわれわれは、質的に高い票を獲得したとみるべきである。

 しかしながら、当初の予想より少なく、相当の票が社会党に流れたことについては、十分に検討を加えなければならない。なぜならば、これは党の欠陥に対する大衆の批判を含んでいるからである。報告によれば、総じて現に日常闘争が行われているところでは得票は増加し、これから遠ざかるにしたがって減少している。これらの現象から、つぎの諸点が理解される。

 第一に、党が日常闘争を通じて大衆を政治的に訓練し、これを高めていないことである。
 第二に、日常闘争に対する軽視である。民族の独立と平和擁護のための宣伝が大衆の日常的要求と結合されず、したがって、大衆には直ちになにをなすべきかという具体的な行動の指針となりえなかったのである。

 第三に、大衆の要求を無視する結果、宣伝が独りよがりとなり大衆の行動を政治的に高めるのでなく、彼らを現実から逃避させる結果を招いている。

 第四に、戦略目標の宣伝のみに注意が集中され、日常闘争の戦術が無視されている。
 第五に、社会民主主義者・民同に対する闘争の軽視である。
 五、反ファッショ民主民族戦線
 ファシストの意図は、労働者階級の前衛たるわが党を弾圧し、新らしい戦争を挑発することにある。いま、彼らの努力は、いかにして事実を偽瞞し、人民をあざむいて彼らの野望を達成するかという点にある。このために党と人民大衆の戦線とを内部から分裂させ破壊しようと計画している。右翼社会民主主義者、民同、および分派主義者はこのために必要な手兵である。われわれは、ファシストとその手兵に対し非妥協的に闘かい、勝利の道を進まねばならない。

 ファシズムとの闘争にもっとも必要なことは、わが党が広汎な大衆と結合し統一戦線を強化することである。このために次の諸任務を果さねばならない。

 第一は現在高揚している大衆の闘争を更に政治的に発展させ拡大し、民主民族戦線を闘かいとることである。とくにこの闘争の発展の中で大衆を政治的に訓練し、政治的スローガンを単なる抽象的スローガンとして説明するだけでなく、大衆の日常要求のための闘争と結合して、これを大衆の行動のスローガンにまで発展させることが必要である。現在までのわれわれの指導の欠陥は、政治的問題を大衆の行動と結合することが不十分であり、この結果闘争が政治的宣伝に片寄るか、経済主義的に片寄ったのである。

 第二の問題は、選挙闘争によって拡大された民族の独立と平和擁護の闘争を、職場からの反ファッショ闘争へ結集し発展させることである。

 第三の問題は、広汎な反ファッショ民主民族戦線の組織でありとくに、その基礎である職場からの統一戦線のための活動強化である。現在の闘争を拡大するためにも、ファシズムに対する統一戦線を実現するためにも、職場内の統一委員会の結成は緊急の任務である。

 しかし統一委員会は、全労連の下部組織や、民同系組合内の革命的反対派ではない。統一委員会に組織された労働者だけを切りはなして全労連および全労連系といわれる各産業別単一組合に組織することは、経営内の組合を分裂させ、労働戦線の統一をかえって弱めるものである。かかる考えは、赤色労働組合主義であり党の影響を広汎な大衆に、及ぼす事を妨げる点で分派主義者の思想と通ずるものである。

 労働戦争の統一にあらわれたセクト主義は、階級的統一運動を組織問題にすりかえ條件を考慮することなく、全体を忘れて機械的に戦闘的組合だけを固める傾向である。この誤まりは前労働組合部長、同志春日庄次郎もおかしている。従ってこの影響はかなり広汎である。われわれは、これを克服し、統一委員会を広汎な労働戦線の統一と民主民族戦線の組織のための基礎としなければならない。

 第四の問題は、重要産業と拠点経営における党組織の強化である。これを土台に農民をはじめ全人民を民主民族戦線に結集する道こそ地域人民闘争である。

 第五の問題は、農民運動に対する立おくれの克服である。このさい特に土地問題に対する日和見主義は一掃されねばならぬ。

 第六の問題は、ファシストの抑圧機関である警察官その他に対する働きかけである。
 第七の問題は、アカハタの強化についてである。アカハタはわが党の有力な武器であり、反動の弾圧もここに向けられている。われわれは新しい情勢の中で特にこれを強化しなければならない。

 第八の問題は、分派主義者との闘争である。分派主義者は、党指導部に対する不信の念を党の内外に植えつけ、党の諸決定の遂行を妨げている。それのみか彼らはまた、いたるところで兆発を組織し、党を混乱におとしいれようとしている。

 分派主義者の思想と行動は、実践的には党を大衆から孤立化するものである。ファシストは党を内部から破壊するために、この分派主義者を手先として使用している。分派主義者の活動は組織的となり悪質となってきた。これに対して中道はありえないし、これとの闘争に妥協もありえない。むしろ、これとの闘争を妨害する中道主義者こそ、公然たる分派主義者より、はるかに有害な敵である。

 六、わが党の名誉ある任務
 われわれは、いま、かつてない名誉ある時期にたっている。当面の重要スローガンはつぎのとおりである。
 一、ファッショ反対、憲法、ポツダム宣言、極東委員会一六原則の蹂躙反対
 二、植民地化反対、民族の完全独立、単独講和反対、ポツダム宣言にもとずく全面講和、講和後の全占領軍の即時撤退

 三、四大国の合意による世界平和勢力による安全保障、平和の擁護
 四、戦争反対、軍事基地化反対、軍需品の生産と輸送反対
 五、生活の安定、首きり反対
 六、ファシストの徒党売国吉田内閣の打倒


日本労働年鑑 第24集 1952年版
発行 1951年10月30日
編著 法政大学大原社会問題研究所
発行所 時事通信社
2000年6月1日公開開始


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