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日本労働年鑑 戦後特集(第22集)
The Labour Year Book of Japan post war special ed.

第四篇 無産政党運動

第二章 日本共産党


四 野坂参三歓迎国民大会

 一九三〇年末日本共産党代表としてモスクワへ送られて以来、主に中国延安にあつて反戦運動を指導した野坂参三氏は二一年一月十二日十六年ぶりに帰国したが、これを迎えて一月二十六日日比谷公会堂前広場で同氏の歓迎国民大会が開催された。

 この大会において野坂氏は民主主義全勢力統一の必要を強調し、あわせて民主人民戦線結成の条件の熟していることを指摘してのち、民主人民戦線の大綱を次のように示している。

「第一に民主人民戦線のなさんとすることは、目前の緊急問題であるところの食糧問題、飯米供出問題、戦災者の住宅問題、生活物資の増産による闇市場の消滅、インフレ消滅、交通地獄の解消、海外居留民の救済と送還問題等々であります。これらの問題は現政府が辞職する、しないにかゝわらず、民主人民戦線が今日たゞちに応急対策を講じなければならない問題であります。

 わが共産党は、食糧管理、飯米供出等々の問題に対して人民自身の手によつて解決するという方策をとり、ある程度、これに成功しているのであります。(中略)

 第二に民主人民戦線のなさんとすることは、現在の政府の即時辞職を要求すること、および民主人民戦線を土台にした民主々義各党派の連立政府の組織であります。この政府の力によつて、わが国の政治的、経済的大改革が行われるのであります。

 第三にいまなお余命を続けている軍国主義的勢力、反動勢力を、わが国の政治、経済、社会上の責任ある地位より清掃することであります。

 第四には封建的、専制的、独裁政治制度いわゆる「天皇制」を撤廃して、民主々義の原則に基いて憲法を作成し、人民の利益と意志を代表する民主主義政治を確立することであります。

 第五には農民の耕作権を確立すること、土地を農民に与えることであります。

 第六には公共的性質をもつ重要産業を国有にし、また独占企業を民主的人民政府が管理することであります。これを基礎にして、高度の工業発展を進めるのであります。

 (中略)

 第七には、八時間労働制を実施し、かつ労働者の生活を大巾に改善することであります。

 第八には中小商工業者を有効に保護することであります。

 第九には、戦時利得者の負担によつて、失業者、復員兵士、戦災者を救済することであります。」(一九四六、二、三、アカハタ)

 このような呼びかけにこたえて各層を代表した演説が行われたが、特に社会党水谷長三郎氏は「今日の国民の危機、民族の危機を救うものは人民をおいて他にはない。そのために廣汎な人民戦線を結成し、幣原内閣を打倒しなければならない」と強調した。

 この大会を機に、民主人民戦線結成の機運は急速なたかまりをみせたのである。

 なお野坂氏帰国に際して発表された日本共産党中央委員会と、野坂参三氏の共同声明は次の通り。

   

共同声明

 一、上は天皇から軍国主義者、官僚、さらに財閥及び寄生地主にいたるまでの一切の封建的専制的な帝国主義全体制が犯罪的戦争を強行し日本の国土、民族とその文化を破滅に陥れ、周辺の諸民族と連合諸国民とに加えた残虐と荒廃の責任者であり、これを存続すれば必ずや世界の恒久的平和の建設と日本民族の復興とを妨害する危険があるので、天皇制打倒といふ方針の正しさを認めることにわれわれの意見は完全に一致した。天皇制の廃止とは、これを国家の制度として排除することであり、その上で皇室の存続がいかになるかということは自ら別問題である。それは将来日本の民主主義化が達成されるとき日本国民の意志によつて決定されるべきものである。たゞ一切の反動分子は、天皇の名を利用して国民を欺き、日本の民主主義化を阻止しようとしているから、かゝる陰謀に対する闘争は飽くまで精力的に行うベきである。

 二、天皇制の支配者と上層階級とは、日本が当面する民族的危機を救済する任務について全く無能であり、たゞ自己の地位と特権とを多少形を変えただけで維持することに汲々としているのみである。日本共産党こそは、真に国を憂い、国民を愛するものであり、いたずらに暴力を弄ぶことをせず、人民の生活の安定と向上とに専心しつゝあるが、日本民族がこの苦難を克服し国際平和機構に參加しうる不屈の努力をなすべきことを確信し志を同じくする一切の民主主義者はこの際急速に民主主義的統一戦線を結成する必要のあることを茲に改めて強調する。

 三、この統一戦線は大体の申合せにおいて一致したプログラムによつて形成さるべきである。各党各派はこのプログラムに基いてその党派の立場を自由にとればよいのであり、必要な場合には友愛の精神により相互批判の自由を行使すべきであると共に決して一党派の立場のみを固執せず妥協すべきところは妥協すべきである。

     一九四六年一月十四日

                   日本共産党中央委員会

                        野坂 参三

日本労働年鑑 第22集/戦後特集
発行 1949年8月15日
編著 大原社会問題研究所
発行所 第一出版
2000年2月1日公開開始


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