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日本労働年鑑 戦後特集(第22集)
The Labour Year Book of Japan post war special ed.

第四篇 無産政党運動

第一章 日本社会党


十一 二二年四月の選挙対策

 二二年四月に行われた選挙を前に、社会党政務調査会では党の基本的、恒久的政策の線に沿って、産業復興・労働・インフレ・民生安定に対する当面の危機突破対策を作成し、三月五日の中央執行委員会でこれを検討のうえ発表した。

 これらの政策の基調について社会党政務調査会長森戸辰男氏は次のように言つている。  

「昨年の総辞職は『社会主義か資本主義か』という抽象的なスローガンが争われたのに対して、このたびの選挙において差し迫る危機を突破するための具体的政策が焦点となるであろう。そして我が党は民族危機へ転化しようとする経済危機を突破する公道は社会主義的政策の断行以外に存しない、と信じている。

 社会主義的政策の特質は、第一に計画経済の重複であつてこの点において自由経済を志向する自由党とまさに正反対の立場にある。第二は基礎産業殊に石炭・鉄・肥料・電気・銀行など公有と民主的運営の追求であって、ここでもまた、同じ重点産業政策をとるにしても保守政党の政策との違いは明らかである。第三に、それは少数の戦後利得者の犠牲において、国民とくに勤労国民大衆のために危機を突破しようとする。なぜかというに、我が党は保守政党のように少数有産階級、わけてもヤミ利得者を先頭とする戦後利得者の利益を代表する党ではなくまた共産党のように労働者階級の利益を代表する階級政党でもなく、汎く国民諸層を代表する党だからである。しかもわれわれが特に勤労国民大衆に重きをおくのは量的にはかれらが国民の圧倒的な部分を形ずくり、質的には破局を救う生産者だからである。

 最後に、同じ社会主義的政策を追及する場合にも、共産党と社会民主々義の党であるわが党とはその性格を異にし、この性格の相違は、同じ改策を追求する両党の実践を非常にかけ離らせる。そのときは、例えば、天皇制・ゼネスト・供米・外交政策などにおいて明瞭に窺われる。しかもそれは危機の深刻化に伴うて、緩和される代りに、却つていよいよ激化されるであろう」

社会党政務調査会で立案した諸政策は次の通りである。

 選挙スローガン     政務調査会 選挙委員会 (案)
基本スローガン
 社会民主主義による新日本の建設
 石炭・鉄・肥料は国家管理で増やせ
 インフレ克服は戦後利得の犠牲で
 勤労者の力で経済危機突破
 耕す農民に土地と肥料を
 闇撲滅・配給確立・生活安定
 婦人に解放を、青年に未来を
 講和会議は社会党の手で

一般スローガン
 救国の一票を社会党へ
 今度こそ社会党を第一党に
 救国の社会党か亡国の保守党か
 急げ協約・生産再開
 中小工業に資金と資材を
 第三次農地改革を断行せよ
 肥料増配で食糧供出
 闇屋と握手する石橋財政
 大口利得者に高率課税
 物価安定か石橋インフレ政策か
 闇の撲滅明るい生活
 遅配欠配のない完全配給
 戦争犠牲者・失業者に家と職を
 婦人の一票が解放への道
 働く婦人と幼児を守れ
 享楽文化から生活文化へ
 働くものの文化・働くための文化
 民主日本の建設は自治体から
 産業の計画的地方分散
 自治体をボスの手から社会党へ

 重要基礎産業社会化政策
 重要産業の社会化が問題となることはすでに資本主義の自己矛盾から次の新時代に入りつゝあることを意味するのであつて、社会化の理由は資本主義の変貌によつて実証される、ことに経済復興のための産業経済の社会化は総合的計画の必要と公共的利益の価値ということが不可欠な要請となる
基本方針
イ、産業社会化は全産業を一挙に社会化しようとするものではなくかなり長期間に亘つて行われるものである。
ロ、社会化された分野においては公的所有、公的管理が中心となり、しかも計画性を持ち民主化されねばならない。
ハ、銀行の社会化と重要基礎産業の社会化とは同時並行的に行われなくてはならない。
 1、銀行社会化は産業の社会化を容易ならしめ計画経済の遂行による産業復興を促進する。
 2、銀行社会化は改造された産業組織の財貨の流れに、これに対する購買力を形成する所得の流れを均衝せしめる。
ニ、日本経済の貧弱な現状は企業の私的利澗追求によつて復興されないゆえに重要基礎産業の社会化は当然要請される。

一般政策
イ、産業の社会化は国家管理から国有国営に至るまでの段階があるがこのうちいかなる方式を採とるかはその時々の状勢に応じなくてはならない。
ロ、もちろん国家管理は国有を前提とする者であるが、国有化直ちに社会化を実現するものではない。
 1、現存の官業の如く書類の運営が官僚的非能率的であることは産業の社会化を阻むものである。
 2、社会化を実現する為にはその経営の民主化が必要である。
ハ、経営の民主化のためには管理委員会を構成して管理者、従業員及び消費者などの代表の参加を求め、生産計画の樹立、実施利潤分配などを図る。
 1、中央管理委員会の構成=A、労働者及び職員代表、B、消費者代表、C、国家代表(政府及び国会議員)
 2、中央管理委員会の権限=A、当該産業の最高指導権、B、職員首脳の任免、C、商品価格の決定、D、労働組合との団体協約権、E、収益の処分及び投資
 3、地方管理委員会=A、労働者代表、B、消費者代表、C、地方庁代表及び各府県代表、中央管理委員会の決定に基きそれに従って細部の運営に当たり、この構成及び任務は中央機関に準ずる。
 4、従業員の罷免機関の設置=従業員と一般国民との遊離を防ぎ産業を真に国民の事業たらしめるため万全を期する。
 5、勧告委員会の設置=消費者あるいは利用者の不平及び意見を直接に反映せしめ社会化の目的を果たす上に効果あらしめる。
 6、現存官業の社会化=右の如く管理委員会を中央及び地方に設けて民主的経営を行う。

 労働対策
 わが党は労働者の生活擁護のため、左の諸方策を実行するものである。
一、一切の経済闘争に対する徹底的応援
イ、わが党は、わが党を支持し密接な協力関係にある労働団体を強化し、これを主体として労働者の日常経済闘争を活発に展開することに積極的協力と援助を与える。
ロ、わが党は、労働組合その他に対して現下のわが国の情勢に適合せる最も有効適切なる闘争方針を指示し、労働組合が誤れる方向に進まんとする場合、それを是正することに努力する。
ハ、わが党は労働団体と協力して、経済的日常闘争を通じて労働階級の政治的自覚の昂揚に努める。
二、理想的労働諸立法の確立
イ、労働基準法の改正=(A)全産業労働者に対する最低賃銀制の確立(政府案においては、行政官庁が必要と認めた場合、特定の産業労働者に最低賃銀制を実施することになつているが,わが党は全産業労働者に最低賃銀制を実施すことを主張する、特に現下のインフレ状況の下においては、物価指数を基準とする方式を採用すべきであることを主張する)
 (B)拘束八時間労働制の実施(政府原案においては、実働八時間労働制−休憩時間を含まざる八時間労働制−が採用されているが、わが党は、拘束八時間労働制−坑内その他危険作業における六時間労働制−の即時実施を主張する)
 (C)休業手当その他、労働基準法の諸規定に対しては、その徹底的改正のために努力する。
ロ、労働組合法の改正=(A)現行の労働組合法は相当進歩的のものであるが、わが党は、その一層の改善のために努力する。
 (B)労働組合法に対するわが党の改正意見は、別に発表する。
ハ、労働調整法の改正=わが党は労働法における労働運動及労働争議に対する弾圧的条項の廃止を主張する。
ニ、労働者の老齢、傷病については綜合的社会保険制度の制定
三、勤労所得税の改正(緊急対策参照)
四、労働者住宅問題に対する方策(住宅問題対策参照)
五、労働者に対する食糧その他生活物資の特別配給(主食対策参照)
六、労働組合対策
イ、わが党は、健全なる労働組合の樹立、ならびにその発展のために、極力努力する。
ロ、労働組合の戦線統一に対しては、その実現のために極力努力するが、具体的方針についてはわが党支持の労働組合と協議してそれを決定する。
七、労働者教育に対する方策
イ、わが党は、労働者に対する民主主義的政治教育のため努力する。
ロ、わが党は、無産者政治運動ならびに労働組合運動の指導者の養成のために努力する。
八、労働者文化運動に対する方策
イ、わが党は、プロレタリヤ文化運動のために努力する。
ロ、わが党は、労働者の文化的水準を高めるため、日本および諸先進国の健全なる文学、美術、音楽などの普及の為に努力する。
ハ、わが党は、労働者大衆の文化創作活動を盛んならしめるために努力する。
九、労働者消費組合運動に対する対策 イ、わが党は、労働者消費組合運動の健全なる発達のために努力する。

日本労働年鑑 第22集/戦後特集
発行 1949年8月15日
編著 大原社会問題研究所
発行所 第一出版
2000年2月1日公開開始


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