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日本労働年鑑 戦後特集(第22集)
The Labour Year Book of Japan post war special ed.

第四篇 無産政党運動

第一章 日本社会党


十 社会党左派の危機突破対策

 挙国一致内閣への動きが顕著となりつゝあつた政局に際して、社会党左派は社会党中心内閣成立の時に実施すべき危機突破の緊急対策を作成し、二二年一月十五日片山委員長に提出した。

 危機突破対策

 基本的態度

 一、日本経済現下の危機は、多年の侵略戦争と敗戦以来の歴代保守反動政府の無為無能ないし少数富者階級のためのぎまん的政策の結果もたらされたものであること

 二、従って、この危機の克服には、従来の政府と全く異つた国民大衆自身の民主主義的政府が樹立され、国民大衆のための進歩的、合理的な政策をとる必要があること

 三、この当面の政策目標は、さしせまつた経済危機の突破にあるから政策の力点は、何よりもまず生産の再開、インフレーションの民主的克服、国民生活の安定を実現して、日本経済再建の緒口を作るにあること

 従ってこの政策の実施と情勢の進展に応じ、更に恒久的で全体的な政策が必要であるし、他方個々に起きている具体的な問題の解決もまた別個に考慮さるべきである

 四、このためには全国民に等しい耐乏生活が要求されるが、そのかわり一人のヤミぶとりの発生をも許さない体制を作らなければならないこと

 五、一切の施策は、国民大衆の自発的な創意と工夫にまたねばならないから、広く民間、特に勤労大衆、技術者、学識者の間から人材を登用し、全国民の総力を余すところなく発揮する途を講ずること

 六、日本経済再建のためには、勤労大衆の発らつたる勤労意欲を高揚させると共に、祖国再建の高い道義を登場させる責任ある体制を確立することが必要であること

 七、この政策の実施に当たっては、即時危機突破緊急法令のようなものを発布し、機構の改革、その他一時的に起こるかもしれない障害を打破して、生産、配給が瞬時も遅滞なく行われるよう十分措置すること

 八、以上の緊急政策は、日本経済の危機が極めて深刻な段階にある事実に基くものであるから、この点に関し、連合国の深い理解を要請し、積極的な援助を懇請すること

 政策の要請

 第一、生産の再開方策

一、生産の再開は当面まず石炭の増産から始めること

 (1)石炭を最も手早く増産するためには、特に勤労大衆の盛なる勤労意欲によらねばならないから、即時経済復興会議で一〜三月間の緊急増産対策を確立し、実行すること

 (2)明年度の石炭の生産目標をさし当たり、三千万トン以上とし、これが物動計画ないし一連の付随対策は、民主化する安本機構と経済復興会議で審議し、実行に移すこと

 (3)直ちに全炭鉱に対し国有を前提とする国家管理を断行すること、これが直ちに実行されねばならない理由は特に左の諸点にある

 (イ)経済社会化による勤労意欲のはつらつたる促進、(ロ)各山別の具体的な生産計画の樹立と責任ある実施、(ハ)与えられた炭価による計画的な生産の実現、(ニ)資材、生産物の横流れ、ヤミ売の防止、(ホ)安全施設、厚生施設の完備

 (4)石炭の配給機構については、従業員組合と需要者を主とする一元的な新機構を確立すること

 (5)石炭増産用の資材の確保等、関連事項についても供給資材による請負加工の実施をはじめ、強力な国家管理的措置をとること

 二、速やかに国有を前提とする鉄鋼化学肥料産業の国家管理を行うこと

 三、石炭増産を前提として、至急全面的な日本産業の生産計画をたて、明年度は少くとも本年度より平均五割の生産増加を実現すること

 四、全産業の増産計画達成のためには、特に輸送に関し、鉄道輸送計画の完全な実現、必要トラックの国家管理、急速な船舶の新造等、陸海両面にわたり、強力な措置をとること

 五、国内に現存している資材については、直ちに一括政府の管理に移し、これを生産計画に有効に動員すること

 六、徹底的なヤミ撲滅策を至急講ずること、上記のような現存資材一括国家管理および後記の配給機構の民主的な改革等をもつてヤミ撲滅の基本的対策とすること

その他重要なるものとしては (1)一定以上の大規模な土建事業の国営 (2)賠償設備撤去事業の国営 (3)中央、地方を通じ民主的なヤミ監察機構の創設等 (4)悪質のヤミ行為は、祖国再建の阻害者として厳罰に処すること

 七、労働法を民主的に改正し、正しい労働基準法を即時制定すること

 八、給与基準は、生計費に応じて勤労大衆の最低生活を保証するとともにその勤労意欲を増進するような方式をとること

 九、以上石炭中心の生産政策をとる結果、一般産業従業員に生ずる恐れある失業に対しては、生活保証の途を講ずること

 十、必要な原料資材の輸入、賠償施設の撤去については、国民の総力をかたむけたこの危機突破を容易にし、可能にするよう理解ある態度をとられるよう懇請すること

 十一、緊急農業対策としては、供出制度を徹底的に民主化すると同時に、生産工場、倉庫等に現存している肥料、農機具、作業衣等農業必需品を即時政府の管理にうつし、農民に対し、これを円滑公正に配給すること

 十二、農地委員の選挙の結果を至急再審査すると共に、国家による小作地の全面的買上げと土地の民主的な管理を含む第三次農地改革案を作り実行に移すこと

 十三、米、繭等主要農産物については、生産費を償うよう適宜措置すること

 十四、農業会を解消し、徹底的な民主的協同組合を発展させること

 十五、国家管理に移した漁業用資材と魚介類とのリンク制を徹底させると共に、民主的な漁業協同組合を発展させ、進んで水産省を設立して漁業の一大飛躍を実現すること

 十六、中小工業に対しては公正迅速に資金と資材を供給すること

 十七、現在大工業で経営している事業、例えば自転車、日用品等に関しては、中小工業において生産するよう誘導すると共に、民主的な協同組合法を制定し、経営の近代化と技術水準の向上をはかること

 第二、インフレーション対策

 一、悪性インフレーションを阻止するためには、先ずその最大の根因である財政の赤字をなくすることが必要であるから、財政収支の両面にわたり、直ちに左の措置をとること

 (1)戦時公債の元利払の停止 (2)外地補償、賠償施設補償の打切り (3)補給金の廃止 (4)インフレ利得の徴収 (5)既存在庫品所有者への特別課税 (6)森林税の施行 (7)新たなる財産税の断行 (8)生産増加に伴う新税の創設(例えば石炭消費税等) (9)勤労所得税、総合所得税についてはまず免税点の大幅引上げを行うこと

 二、特別会計についてはそれぞれ自立できる建前をとることゝし極力生産性の向上、収益の増加をはかること

 三、財政支出に対し新たに民主的で強力な監察制度を設けること

 四、至急長期の財政計画をたてゝ将来に関する見とおしを確立し、これに対する国民大衆と連合国の理解と支持をうること

 五、以上の生産、財政計画の具体的な進展の情勢に応じてできるだけ迅速に物価の安定を実現し、安定通貨による新紙幣を発行し、通貨の最終的な安定をはかること

 六、日本銀行の国有を断行すること

 七、金融機関は国家管理に付すると共に経営を社会化すること

 八、一元的な投資銀行を創設すること

 九、中央に通貨金融の国家管理委員会を作ること

 十、上記の諸機関は、不当な資金融通を抑止すると共に、必要な資金計画をたて実行すること

 第三、国民生活の確保策

 一、正規の配給により最低生活を確保すべき建前を堅持すること

 二、直ちに配給機構、特に食糧配給機構の民主的な改編、整備を行うと共に、至急消費組合を法定し、普及徹底させること

 三、物価政策としては、生産の再開、インフレーションの阻止に応じて、安定政策をとり、新たなる価格体系を作るが、それが完全に実現するまでは、物価の移動に応じて、給与を支給するような措置

 四、現金給与五百円のワクは即時はずすこと

 五、引揚者、戦災者、ヤミ商人等は国営土建事業、公共事業、諸種協同組合の結成その他生産事業に極力動員すること

 六、大邸宅の解放、高級飲食店の廃止、その他強力措置により一切の余剰居室の徹底的な動員を断行し、御料林の積極的切出しを断行して、国営による簡易住宅を急速に建設すること

日本労働年鑑 第22集/戦後特集
発行 1949年8月15日
編著 大原社会問題研究所
発行所 第一出版
2000年2月1日公開開始


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