OISR.ORG へようこそ 大原社会問題研究所

日本労働年鑑 戦後特集(第22集)
The Labour Year Book of Japan post war special ed.

第四篇 無産政党運動

第一章 日本社会党


五 選挙対策

 日本社会党では二一年一月十六日に中央執行委員会をひらき、総選挙に臨む同党の重要政策、他党との関係を協議決定した。

 総選挙の重要政策

 一、資本主義か社会主義か

 我党は一挙になにもかも社会主義化せんとするものではなく大資本の重要産業に対し先ずその背後にある金融機関の社会化を遂行し、ついで産業の動脈たる石炭食糧増産のための肥料等を重点的に国有にうつさんとする。そして一切の国有事業は従来の官僚独占を排して従業員組合・消費組合、その他国民の眞の代表を参加せしめた管理委員会をして民主的経営を行はしめんとするものである。また農民のために耕地を保証する農地制度の改革を主張し、中小工業の助長奨励とその協同組合化を唱道しているが、一切合財を社会主義化せんとするのではない。

 二、政治的民主々義体制樹立

 政治上の民主々義体制を確立するための課題は、国民の総意に基いて憲法を民主化すること、戦争の責任者、戦争犯罪人を徹底的に追及すること、枢密院華族制度等を廃止すること、地方自治制の民主化を行い、地方長官、市町村長を公選すること等が急速に実行されねばならない。

 三、経済的民主々義の樹立

 経済上における民主々義の重要なる問題はすでに公認された労働組合の代表をして、労働管理をなさしめるとともに、進んで経営管理に参加せしめることが必要である。次に農業問題としては集団的な小作契約を含む農民組合法を公認せしめること、農地制度の徹底的近代化を図り、働く農民へ土地を保証すること、農民組合の代表を農業会その他の機関へ参加させることなど、農村から封建的な残滓を一掃しなければならぬ。

 四、インフレ対策

 悪性インフレに対する社会党の基本的対策は

 イ、戦時利得を全面的に没収すること、ロ、戦勝を前提とせる政府の債務を棒引にすること(但し社会政策的考慮は十分払ふ)である。緊急処置としては第一に銀行預金を封鎖する。これには生活上の必要とか、小額預金とか、戦災者の復興とか、又は産業や食糧増産のための資金は別個に考慮せられる。これがため全国的に調査機関が用意されなければならぬ。第二には、手持の紙幣を吸収するための便法がとられねばならぬが、第三には財産税の実施を繰り上げて、これまた便法をもつて、例へば納税証券の発行その他の方法によつて概算を以てあらかじめ徴収を急速に行ふことである。第四には現在多くの銀行は戦災や賠償等戦争によつて「物」の裏付のない資本を多分に含み、その機能は弱体化し、また金融資本家は利己的打算からサボタージュしてをり産業資本家も同様である。かくて新日本建設の融資を行ふ新しい産業銀行を設置することが必要である。第五には建設や復興救済事業その他社会主義的計画経済に基く財政五箇年計画を樹立していはゆる健全財政の復帰を急ぐことである。

 五、食糧問題

 日本農民組合と協力して当面の供出についてあらゆる努力を注ぎつゝある農民をして喜んで供出せしめるには肥料の国営と土地の保証、この二大政策を断行することでなければならぬ。このほか隠匿物資を吐き出させること、耕作権を決定すること、農業会町村会等の改革、山林、原野の開放、小作料の合理化、農具類その他の増産、配給の計画化を行いまた農民を農地委員や農業会等に参加せしめることなど忠実に実行せねばならない。しかして最も緊急なことは農民の信用することの出来る政府をつくることである。かくしてこそ食糧の補給も肥料の輸入も可能となるであらう。

 以上のような政策をかゝげて選挙運動を展開してきた社会党は、選挙を目前にひかえた二一年四月八日片山書記長談をもつてその態度を明らかにした。

 

「総選挙はいよいよ目睫の間に迫つた。支配階級は、選挙制度の不備、不合理なるに乗じて旧政治勢力による政権の持続を企図し幣原内閣、進歩党、自由党は既に協力して次期政権への工作を開始している。我が党は民主々義の中心勢力として旧支配階級に対抗し、その完全なる退却を見るまではあくまで闘争を辞せざるものである」

 かくして選挙の開票の結果、社会党は議員九十二を獲得し進歩党とは僅に一名の差をもつて第三位となつた。この総選挙において社会党の得票が多かつたのは、インテリ層をもつ大都市、並びに工業地帯に顕著であつたことが特に指摘される。

日本労働年鑑 第22集/戦後特集
発行 1949年8月15日
編著 大原社会問題研究所
発行所 第一出版
2000年2月1日公開開始


■←前のページ  日本労働年鑑 戦後特集(第22集)【目次】  次のページ→■
日本労働年鑑【総合案内】

大原社会問題研究所(http://oisr.org)