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日本労働年鑑 戦後特集(第22集)
The Labour Year Book of Japan post war special ed.

第一篇 労働争議

第二章 主要な争議


第六節 二月一日ゼネストをめぐる全官公庁争議

 二一年十月十八日、東京四谷第四国民學校で「最低生活獲得全国教員大会」が開かれた。全国三十万の教員の代表者が参加したこの大会は、

 一、最低基本給六〇〇円支給

 二、地方差の撤廃

 三、男女の差別撤廃

 四、特別地域に特別勤務地手当五割支給

 五、不当馘首をなさざること

 六、五〇〇円の枠を撤廃すること

 七、勤労所得税基礎控除額を一、五〇〇円に引上げること

 など七項目の要求を決議し、文部、大蔵両省に提出した。

六月の教員戦線分裂によつて誕生した教員組合全国聯盟(十二万)はこの大会に参加しなかつたが、十一月四日 、全国代表者会議ではほぼ同様の要求を決議し、さらに十一月六日の第一回「最低生活獲得全国教員大会」は第一回大会の決議に対する文相の答弁は抽象的であると不満を示し、全国的に起ち上がった教員の力を背景に「最悪の場合はゼネストをも辞せぬ」旨を決議した。

 以上のような状態にあつた教員組合は、ひきつゞいて展開された官業労働者の闘争の先駆となつた。即ちその後官業労働組合は相次いで次のような要求を提出した。

(A)全逓信従業員組合の要求項目(京都大会十月廿六日− 廿八日 で決定)

 一、経済情勢に適応せる最低賃金制確立

  (イ) 本人八〇〇円、家族一人二〇〇円

  (ロ)赤字補填資金本人千円、家族二百円

 二、労働協約の即時締結

 三、すべての差別待遇是正

 四、特定局制度の撤廃促進

 五、厚生福利施設の拡充強化

(B)全国財務職員組会聯合会(寶塚大会十一月一六日決定)

 一、越年資金、本人一、五〇〇円、家族一人当り三○○円即時支給(税別)

 二、最低基本給手取り六〇〇円

 三、俸給諸手当の現金支給

 四、勤労所得税基礎控除額を一、五〇〇円に、総合所得税基礎控除額三、○○○円に引上げよ

 五、団体協約即時締結

 六、非民主分子の粛正(以上大蔵大臣に)

 一、労調法撤廃

 二、労働基準法の改正、官公吏にも適用すること

 三、官吏法要綱案の改正(以上内閣総理大臣宛)

(C) 十一月廿一日全国官公職員労働組合協議会(全官公労)

  (農林省、大蔵省、文部省各職員組合、全国財務職員労働組合連合会、全海事官庁従業員組合聯合会、全国専売職員組合、戦災復興院職員組合、全国気象職員組合、警視庁通信職員組合、全国商工職員組合聯合会、東京都教職員組合協議会、東京都勤労部職員組合、日本教育労働組合、全国公共団体職員組合聯合会、東京都職員組合、全日本国立療養所職員組合、会計検査院職員組合)が提出した要求

一、越年資金として実収本人一、二○○円、家族三〇〇円を十二月十五日まで現金で支給

 二、最低基本給月六○○円、家族手当一人当たり二〇〇円

 三、総合所得税基礎控除額の三万円への引上げ、薄給者の勤労所得税撤廃

 四、俸給、給料、諸手当の全額現金支給

 五、不当馘首反対

 六、各官庁における労働協約の即時締結

 七、労調法の廃止

(D)国鉄総連合の要求項目(戸倉学会十一月廿日―廿二日で決定)

 一、越年資金本人一、五〇〇円、家族三○○円

 二、最低基本給六五O円、家族手当三五〇円

 三、俸給諸手当の現金支給

 四、労働協約の即時締結

 五、復員者の待遇改善

 六、動力車乗務員の等級制絶対反対

 七、甲種勤労者所得税の免税点の三万円への引き上げ

 八、労調法の撤廃

 各組合の要求にみられるように、その内容には共通性が多く、又交渉の相手方がいずれも政府であるとこから、十一月廿六日全逓、国鉄、全官公労、全国公共団体職員組合連合会(全公連)、全国教員組合協議会(全教組)が参加して全官公庁共同闘争委員会(共闘)が組織され、闘争展開の基盤が強調された。共闘は十二月二日、共同闘争宜言を発し、翌三日には共同要求項目を政府に提出した。要求項目と十二月十日の政府回答は次の通りである。

 

一、越年資金の支給

 [回答〕 赤字補填金として一時金支給を考慮中。

 二、最低賃金制の確立

 〔回答〕 原則として異存ないが、官公吏待遇改善案委員会を設けて研究する。

 三、俸給諸手当の現金支給

 〔回答〕 全面的に直ちに実行することは困難

 四、勤労所得税の撤廃

 〔回答〕 撤廃は不可能だが合理化を研究中。

 五、綜合所得税の免税点を三万円に引上げ

 〔回答〕 研究中。

 六、労調法の撤廃

 〔回答〕 反対。

 七、差別待遇の撤廃

 〔回答〕 差別待遇があれば合理化する。

 八、団体協約の即時締結

 〔回答〕 異議なし。

 九、寒地手当の支給

 〔回答〕 給与の一環として考慮する。

 十、不当馘首反対

 〔問答〕 不当馘首は行わぬ。

  共闘は前記回答を諒とせず十二月十日「生活権獲得全国官公庁労働者大会」を開くなど共同闘争体系の強化につとめるとともに、給与委員会をつくつて賃金要求を研究し、それを一元化するように努力した。

 一方中労委への提訴は全逓が十一月廿七日、国鉄が十二月一日、全公連が十二月七日、全官公労が十二月十日、全教組が十二月七日それぞれ行ったので、中労委も小委員会を作り調停への努力をかさねていたが、全官公労、全公連、全教組の提訴は該組合が公益事業に該当しない(労働関係調整法第八條規定による公益事業の範囲及び、第三八條の規定による争議行為禁止の適用範囲に入らない)ので、関係大臣に対して「実情を調査し、可及的速やかに円満に解決」するよう建議するに止め(十二月二十三日)、全逓・国鉄に対しては十二月一八日調停案を示すに至った。しかし両組合は二十八日右調停案の受諾を拒否し、政府も亦前掲十日の回答以上に具体的方策を実施することなく、年末に赤字補填金として一人平均千円(本人一人五〇〇円、家族一人一〇〇円の現金)を支給したのみで対立状態のまゝ二二年を迎えた。

 闘争は年末から翌年にかけて、さらに幅をひろげることになった。すなわち二一年十一月四日、吉田内閣が六大政策を発表するや、社会党は政策の貧困を攻撃して、議会解散を要求し倒閣運動に乗り出したが、更に一貫して吉田内閣の反動性を攻撃していた共産党や最低生活権確保のために起ちあがった産別系各組合の闘争、官業労働攻勢、及び年末賃上げに起こった総同盟系組合昂揚ともむすびついて、敗戦後における最大の規模の闘争に発展する形勢を示した。さきに社会党組合委員会の提唱で十一月二十九日には産別・総同盟・国鉄・全官公労・都労連・東芝等の代表が参加して全国労働組合懇談会が誕生していたが、十二月十七日には同懇談会、日本農民組合、社会党組合委員会の共同提唱の下に「生活権確保吉田内閣打倒国民大会」が開かれ数十萬の労農市民が参集した。同大会の世話人会は十二月十九日倒閣実行委員会に発展的解消をなし、同会主催で年末の二九日には、各産業労働組合、中小商工業者等の代表が集つて「生産危機突破大会」が開かれ、大会は吉田内閣の即時解散を決議した。以上の動きに表れているように官業労働者の闘争を中核に廣汎な層を含めた大規模な闘争がふみ出されたのである。

 吉田首相は年頭の辞の中で、これら労働階級のたかまりを「不逞の輩」と称したゝめ、共闘から一月七日抗議文を手交された。その後一月九日の拡大闘争委員会は再要求書の提出に就て審議すると同時に、最悪の時は二月一日ゼネストを決行すべきことを決定し、一月十一日「スト態勢確立大会」を開催すると共に第二回要求を提出した。この要求書においてはじめて賃金その他給与に関する各組合の要求が数字的に調整統一されたのである。

 第二回要求書

 我々官業二百六十萬労働組合は真に産業危機を救わんがため全勤労大衆と共に一切の技倆を最高度に発揮し、新日本文化を再建せんとの意欲に燃え之が実施の前提條件として不安なき生活及民主的機構運営を望み最大の努力を払つて来た。しかるに現政府の処置如何敢えて表明を要しない。ここに最後的要求をなす。

 記

一、最低基本給の確立(最低十六歳六五○円、十二月より実施)

一、越年資金残額即時支給

一、労働協約即時締結

一、総べての差別待遇撤廃是正

一、寒冷地手当支給

一、労調法撤廃

一、勤労所得税撤廃

一、綜合所得税免税點引上げ(三萬円)

一、暴圧的勅令五九一號撤廃

一、官憲弾圧反対

一、首相年頭の辞(不逞の輩)取消及陳謝

一、不当馘首反対

一、俸給諸手当現金支給

右十三項目に対し政府の具体的誠意ある回答を一月十五日午後一時文書に依りなされ度

   一九四七年一月十七日

               全官公庁共同闘争委員会

内閣総理大臣    吉田 茂殿

日本労働年鑑 第22集/戦後特集
発行 1949年8月15日
編著 大原社会問題研究所
発行所 第一出版
2000年2月1日公開開始


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