OISR.ORG へようこそ 法政大学大原社会問題研究所

日本労働年鑑 第74集 2004年版
The Labour Year Book of Japan 2004

特集 若年労働者の就業をめぐる諸問題


第三章 若年労働者の離職・転職および失業の状況

一 若年労働者の離職と転職

 若年労働者の離職率は、中高年労働者に比べて高い。「七・五・三問題」といわれるように、新規学卒で入社した労働者が三年以内で離職する割合は、中卒、高卒、大卒でそれぞれ(大体)七割、五割、三割であるといわれている。巻頭色刷り第4、5図は高校と大学の新規学卒者の三年以内の離職率を示している。九五〜九九年の高卒と大卒の離職率がそれぞれ五割弱、三割強であり、離職率は九〇年代前半より後半のほうが高くなっていることがわかる。

 若年労働者の離職率(一〜一二月の離職者数÷六月末日の常用労働者数)を年齢階級別でみると(巻頭色刷り第6図)、九〇年代半ば以降どの年齢階級でも離職率が上昇傾向にあるが、年齢が若くなるほど離職率が高くなる(とくに一九歳以下)。このように、平成不況による雇用機会の縮小、失業率上昇など労働市場の状況が悪化しているにもかかわらず、若年労働者の離職あるいは転職が増加している。若年労働者の離職率が高い理由として、就業機会の縮小によるミスマッチの増加、すなわち若年労働考が自分の希望している種類・内容の仕事に就ける可能性が少なくなっていることが指摘されている。また、雇用が不安定な非正規従業員の増加も、離職率上昇の要因として指摘されている(玄田、二〇〇一年、七九頁、上林、二〇〇三年、九七頁)。また第9表が示すように、ミスマッチのような「個人的理由」が若年労働者の離職理由の多くの割合を占めるが、倒産やリストラなど「経営上の都合」の割合も三〇〜三四歳の年齢層で増加している。

主な離職理由の割合(年齢階級別)& 主な転職希望理由

 総務省「就業構造基本調査」〇二年調査で転職を希望する者の有業者に対する割合(転職希望率)をみると、一五〜二四歳で男女とも二割強、二五〜三四歳で男女とも二割弱となっている。第10表は、同調査で転職を希望する若年労働者の主な理由を年齢階級と雇用形態別に示している。パート・アルバイト、派遣社員などの非正規従業員が「一時的についた仕事だから」を転職希望理由としてあげる割合は、正規の職員・従業員よりかなり高い。ただし、一五〜一九歳の正規社員でこの理由をあげる割合は約一二%で、他の年齢階級より高くなっている。「収入が少ない」をあげる割合は、正規と非正規従業員であまり差がみられない。「時間的・肉体的に負担が大きい」をあげる割合は正規従業員が非正規従業員より高い。また、「知識や技能を生かしたい」をあげる割合は、二〇〜二四歳、二五〜二九歳では非正規従業員が正規従業員を上回っているものの、正規、非正規間あるいは年齢階級間に大きな差はみられない。このように、正規の若年労働者は主に収入の低さと時間的・肉体的負担に不満をもち、非正規の若年労働者は仕事を一時的なものとみなすと同時に収入の低さに不満をもち転職を考えているといえる。

 「就業構造基本調査」(九二、九七、〇二年調査)で転職率(一年前の勤め先と現在の勤め先が違うものが一年前の有業者に占める割合)の推移を年齢階級・男女別でみると、男女とも若年層ほど転職率が高いこと(とくに一五〜二四歳)、男女とも時系列的に転職率が増加傾向にあること、そして女性の転職率は男性より高いことがわかる(巻頭色刷り第7図)。

 実際に仕事を辞めた若年労働者の離職後の状況はどのようになっているのだろうか。「就業構造基本調査」(〇二年)は、仕事を辞めた若年労働者の厳しい状況を示している(第11表)。一五〜二四歳(総数一六五万四八〇〇人)で〇一年一〇月以降前職を辞めたもののうち、〇二年一〇月の調査時点で四九・五%が転職就業者(有業者)で、五〇・五%が離職非就業者(無業者)である。すなわち、過去一年間に仕事を辞めたもののうち約半数が、少なくとも調査時点で、仕事についていないのである。離職非就業者のうち、就業希望者は七五・九%である。また、二五〜三四歳(総数二〇二万三一〇〇人)で〇一年一〇月以降前職を辞めたものをみると、五一・四%が転職就業者で、四八・六%が離職非就業者である。離職非就業者のうち、就業希望者は八四・〇%である。有業者、無業者の比率を男女別でみると、一五〜二四歳では男女の差はあまりないが、二五〜三四歳では男性の有業者の割合(六三・三%)が女性の割合(四三・七%)より二〇ポイントも高くなっている。その理由として、転職を望む女性の雇用機会が男性より少ないことに加え、女性無業者のうち就業希望者の割合が男性より低いこと(女性は七九・六%なのに対し、男性は九四・六%)をあげることができる。

2001年10月以降に前職を辞めた転職就業者および離職非就業者

 若年労働者の多くは非正規雇用から正規雇用への転職を希望している。総務省「労働力調査特別調査」(〇一年)によると、一五〜三五歳の転職を希望するパート・アルバイトのうち、約三割が安定した職業に就くことを希望している。他方、正社員の転職希望者でこの理由をあげる割合は六・一%である(内閣府、二〇〇三年、七三頁)。

 若年労働者の雇用形態は、転職によってどのように変化するのだろうか。九〇年代に急速に進んだ雇用構造の非正規化は正規雇用への転職機会の縮小につながる。他方、新規採用を新卒採用中心から中途採用重視にシフトする企業が増えれば、正規雇用の一定の拡大を期待することができる。「労働力調査特別調査」の〇一年の調査で、調査時点から一年以内で現職に就いた一五〜三五歳の転職者の雇用形態の変化のパターンをみると、「パート・アルバイトからパート・アルバイトヘ」が七五・五%と最も割合が多く、「正社員から正社員へ」(七〇・六%)、「正社員からパート・アルバイトヘ」(二九・四%)、「パート・アルバイトから正社員へ」(二四・五%)の順で続く。「労働力調査特別調査」九一年調査では、「正社員から正社員へ」が八一・六%と最も割合が多く、「パート・アルバイトからパート・アルバイトヘ」(六一・三%)、「パート・アルバイトから正社員へ」(三八・七%)、「正社員からパート・アルバイトヘ」(一八・四%)の順で続く(内閣府、二〇〇三年、七四頁)。九一年から〇一年の一〇年間で、「パート・アルバイトから正社員へ」と「正社員から正社員へ」がそれぞれ一四・二ポイント、一一・〇ポイント減少し、「パート・アルバイトからパート・アルバイトヘ」と「正社員からパート・アルバイトヘ」がそれぞれ一四・二ポイント、一一ポイント増加した。このように、九〇年代の雇用構造の変化の影響は、正規、非正規にかかわらず前の仕事を辞めた若年労働者が正規従業員に転職しにくくなる形で現れている。

二 若年労働者の失業

 若年労働者の失業者は、新規学卒者の雇用機会の縮小および離職率・転職率の上昇にともなって増加した。若年労働者の完全失業率は九〇年代を通じて上昇し、九三年から〇三年のあいだに一五〜二四歳で五・一%(四五万人)から一〇・一%(六八万人)へ、二五〜三四歳で二・九%(三七万人)から六・三%(九六万人)に上昇した。

 総務省「労働力調査」で完全失業者を求職理由別にみると、「自発的な離職によるもの」が各年齢階級合計に占める割合が減少し、「非自発的な離職によるもの」と「学卒未就職者」が占める割合が増加した。九三年から〇三年のあいだに、「自発的な離職」による完全失業者の割合は、一五〜二四歳で四四・四%から三二・四%に、二五〜三四歳で五一・四%から四四・八%に減少した。他方、「非自発的な離職」による完全失業者は、一五〜二四歳で一一・一%から一七・六%に、二五〜三四歳で二一・六%から三一・三%に増加した。また、新規学卒者の雇用機会の縮小を反映して、一五〜二四歳における学卒未就職者の割合の増加(九三年の一三・三%から〇三年の二五・〇%)も目立つ(第12表)。なお、「自発的」離職には、企業側に責がある実質的な「非自発的」離職(労働条件が採用時に提示したものと違うこと、人員削減で仕事がきつくなること、企業が一定の期間働いた非正規従業員を退職するように仕向けることなど)も含まれていることに留意する必要がある(上林、二〇〇三年、九七頁)。

求職理由別完全失業者数、割合

 就業を希望しているものの調査時点で求職活動を行っていないため完全失業者としてカウントされない、いわゆる「潜在失業者」は若年層のなかにどの程度いるのだろうか。総務省(総務庁)『労働力調査特別調査報告』により、就業希望者が非労働力人口に占める割合を九一年、九六年、〇一年で比べてみると、就業希望者の割合は一五〜二四歳(在学中のものは除く)では九一年の四二・三%から〇一年の五〇・〇%に増加した。一方、二五〜三四歳では割合は五〇%台前半で推移し、大きな変化はみられない(第13表)。また、「条件があう仕事があれば(仕事を)したいと思っている」ものは、就業希望者の七〜八割を占める。このように、九〇年代に若年層の潜在失業者が非労働力人口に占める割合の大幅な増加はみられなかった。九〇年代にフリーターが増加したといわれるが、この統計資料からは、求職活動を行っていない無業者としてのフリーターの増加はみられない。フリーターの増加は、主に労働力人口にカウントされる完全失業者や非正規雇用の労働者の間で起こったと考えられる。

非労働力人口における就業希望者

 以上の統計資料の検討から把握できた若年労働者が直面する問題は、(1)新規学卒者の正規従業員としての雇用機会の縮小(とくに高校新卒者)、(2)正規従業員とパート労働者の賃金格差が大きいこと、(3)過労死予備軍といわれる週六〇時間を上回る時間働く若年労働者が二五〜三四歳では二割を超えていること、(4)若年労働者で離職したもののうち、約半数が離職非就業者(無業者)になっていること、(5)正規あるいは非正規労働者の転職者が正規の仕事に転職できる機会が減っていること、(6)自発的な離職による完全失業者の割合が減り、非自発的な離職による完全失業者の割合が増加していること、などである。

 ここでは若年労働者問題を主に雇用構造など労働需要側の視点から考察し、若年労働者の意識については転職希望理由を触れるにとどまった。しかし、若年労働者の転職理由の検討では、「はじめに」で触れた日本経団連の報告書が指摘したような若者の意識、すなわち若者が不安定就業を「自発的選択」していることや「精神的・経済的モラトリアム」に陥っていることは確認できなかった。若年労働者は、非正規雇用を「一時的な仕事」とみなし、より安定した仕事に就くことを望んでいる。若年労働者の仕事に対するコミットメントの弱さは確認できるが、それは非正規の仕事の労働条件がよくないからであると考えられる。さらに転職を通じて知識や技能を生かすことを望んでいる労働者も少なからず存在する(第10表)。その意味で、若年労働者の意識は雇用の非正規化や雇用機会の縮小によるミスマッチ現象の反映であり、彼ら・彼女らの意識が雇用構造の変化を引き起こしているとはいえない。

日本労働年鑑 第74集
発行 2004年6月25日
編著 
法政大学大原社会問題研究所
発行所 旬報社
2006年7月28日公開開始


■←前のページ  日本労働年鑑第74集【目次】 次のページ→■
日本労働年鑑【総合案内】

法政大学大原社会問題研究所(http://oisr.org)