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所蔵図書・資料の紹介

II  図 書


3 社会運動関係図書

(1) マルクス・エンゲルス関係図書

 戦前,マルクス主義研究のメッカといわれたほど研究所には多くのマルクス経済学者があつまっていた。櫛田民蔵,大内兵衞,森戸辰男,久留間鮫造などの学者は,大原社会問題研究所パンフレットに分担して『剰余価値学説史』などマルクス,エンゲルスの著作を翻訳したし,司書の内藤赳夫は研究所の「アルヒーフ」に『邦訳マルクス=エンゲルス文献[目録]』を編集した。

 久留間鮫造のマルクス研究の成果は,戦後に『マルクス経済学レキシコン』(大月書店)として世界的な注目をあびることになる。しかし,現在,研究所は特にマルクスやレーニンの文献収集に重点をおいているわけではなく,全集や資本論の各国語版をあつめることまではしていない。全集は新旧のメガをはじめ,ドイツ語,フランス語,ロシア語(初版及び2版),英語(刊行中)を所蔵している。資本論は英語,フランス語,ロシア語,日本語への翻訳も含めると60種類ばかりある。

 マルクス,エンゲルスの著作では,特にマルクスがクーゲルマン博士に贈った『資本論』第1巻の初版が貴重である(「サイン入りの図書」の項を参照)。他に『資本論』の初版として向坂逸郎,宇野弘蔵旧蔵とで計3冊所蔵している。ここでは「サイン入りの図書」の項ではふれられなかった署名入りの本を紹介してみよう。

 『共産党宣言』この本は完全に初版を模した復刻であるらしく,長く初版本と思われてきたほどである。櫛田民蔵がドイツの社会民主党文庫を訪れた時に譲り受けたもので,1921年7月15日の日付とヒンリヒセンの署名がある。この本が珍しいのはつけられている青い表紙で,同種の本は世界に2冊しか確認されていないといわれている。櫛田は「共産党宣言の研究」と題する論文を1920年頃執筆しており,「宣言」には深い関心をもっていたと思われる。なお,この論文は戦前には日の目を見る事ができないまま,所在不明になっていたが,研究所の50周年の展示会を準備しているときにたまたま「柏木の土蔵」の中から原稿がみつかり,青木書店から出版された。

 ところで丁度この年の7月27日,櫛田はおなじドイツ社会民主党文庫主任のエルンスト・ドラーンから『哲学の貧困』の初版を譲り受けた。この本にはマルクスの手による書き込みがありきわめて貴重なものであったが,ドラーンはそれに気付かなかったのか,これを贈呈してしまったのである。現在は他の櫛田蔵書とともに東北大学の文庫にはいっており,ファクシミリ版が青木書店から刊行されている(この間のいきさつについては『研究資料月報』298号参照)。

 Marx-Engels Archiv の第一巻にはマルクス・エンゲルス研究所より大原研究所へ,としてリヤザノフの署名がある。これは櫛田が1922年にモスクワへいったときに譲り受けたものであろう。リヤザノフはその前年ベルリンに滞在していて,櫛田民蔵と図書購入ではりあったといわれている。

(是枝 洋)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より


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