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所蔵図書・資料の紹介

IV  定期刊行物


2 戦後の機関紙誌

 (5) 社会運動団体関係機関紙誌

 当研究所の社会運動団体の機関紙誌は,労働組合や政党・政治的団体のそれがメインとなっているが,他の社会運動団体の逐次刊行物についても実に豊富である。研究所が戦前以来,重点的に扱い収集量も多いのが,農民団体,婦人団体,消費組合・消費団体,救援団体,プロレタリア文化・芸術団体などである。戦後に入ってこれに反戦平和,公害反対,アナーキズム,人権救済,国際友好,学生・青年運動,海外同胞引揚促進,沖縄・小笠原返還運動,学術研究などの運動が新しく加わった。これら社会運動団体の機関紙誌について,その全部を紹介することは困難である。ここでは主な運動にかぎらざるを得ない。

 まず,反戦・平和団体の逐次文献について紹介しよう。戦後日本の平和運動は,民主主義擁護同盟(民擁同),平和擁護日本委員会,日本平和委員会,全面講和愛国運動協議会(全愛協)など,日本共産党系の団体の運動が先駆けとなっている。これに日本社会党・総評系の日本平和推進国民会議が加わって朝鮮戦争下の平和運動が展開され,のち原水爆禁止日本協議会,基地対策全国連絡会,憲法擁護国民連合,核禁会議,さらには,日本戦没学生記念会,世界連邦建設同盟などの運動の広がりをみた。これらの団体の機関紙誌は,原水協の『原水協通信』『原水爆禁止ニュース』をはじめ,かなりのタイトルを所蔵している。また最近のものでは,戦争体験を語り継ぐ会の機関紙『兵役』や,不戦兵士の会『不戦』,反原発運動全国連絡会『反原発新聞』なども集めている。

 このうち特筆されるのは,平和擁護日本委員会『世界平和』『世界へいわ』,言論弾圧反対同盟の『自由の声』(のち自由の声社発行),全愛協の『講和新聞』,平和委員会『平和日本』である。これらは,占領下日本の平和運動や講和・独立運動を研究するさいの基本文献であり,現在のところ当研究所にしか所蔵されていない。とくに『自由の声』は,ガリ版刷りで発行部数が少なく,民擁同の機関紙『民主戦線』と並んで“幻の新聞”と呼ばれていたものであった。ただし,『自由の声』については創刊号だけが現在なお収集されていない。最近,外国人研究者を含めて,占領期の社会運動文献について閲覧請求が多いのは,これらの機関紙誌であり,『自由の声』と『講和新聞』については,傷みが目立つので,現物ではなく原寸大のゼロックスコピーのもので閲覧を願っている。

 農民運動関係では,日本農民組合(日農)の『日本農民新聞』をはじめ,全日農,農民組合総同盟,全国農民総連盟などの機関紙,さらに全国農業会,全国農業会議所などの逐次刊行物が入っている。日農が解散したのち,いっさいの本部資料は当研究所に寄贈された。こうした経緯もあって,農業・農民運動関係の機関紙誌は,どちらかといえば日農および日農が参加する団体のものが多い。

 農業・農民運動関係のやや珍しい新聞として,全日本開拓者連盟の機関紙『開拓農民新聞』『開拓情報』,中国帰国者団体入植事務局『入植者新聞』などがある。また1947年6月19日,日農・全農・全国農業会などにより農業復興会議が結成された。この農業復興会議は,片山内閣期の政策をになう当時の主要な社会運動団体の一つで,農業生産の増大・食糧供給の確保・民主的農村の建設などをスローガンとしていた。研究所にはその機関紙『農業復興』も所蔵されている。ただし,バックナンバーは現在のところ完全に揃っていない。

 占領期は女性解放の時代であった。この時期,市川房枝ら戦前の婦選獲得同盟のメンバーが結成した新日本婦人同盟(機関紙『婦人有権者』)や,羽仁説子・宮本百合子らの婦人民主クラブ(機関紙『婦人民主新聞』),さらに婦人民主クラブや産別会議婦人部などが主体となっていた日本民主婦人協議会(略称・民婦協。機関紙『婦人せんせん』)などが結成された。これらの機関紙は,ほぼ完全にそろっている。婦人民主クラブ再建連絡会の『婦民新聞』も収めてある。なお,新日本婦人同盟は1950年11月に日本婦人有権者同盟と改称している。このほか,日本母親大会連絡会『母親しんぶん』,日本民主主義婦人同盟『婦人の旗』,日本婦人会館『婦人しんぶん』,婦人のこえ社『婦人のこえ』,婦人労働問題研究所の『婦人労働』などがある。

 ところで,占領期において言論・出版の自由や女性参政権が認められたことを背景に,全国各地で女性雑誌の創刊・復刊が相次いだ。戦後に新しく創刊された女性雑誌は,戦前からつづく既存の雑誌と区別して“新興女性誌”と呼ばれるが,日本民主主義文化連盟の『働く婦人』にしろ,婦人問題政治研究所の『婦人政治週報』にしろ,あるいは産別会議と民婦協が編集に協力した新女性社の『新女性』にしろ,事実上,婦人運動団体の機関誌的な役割を果たしていた。欠号もあるが,研究所にはこれらの雑誌もある。社会運動に関係する占領期の女性雑誌については,今後もできるだけ収集に努めたいと思っている。

 部落解放運動に関しては,部落解放同盟の機関紙『解放新聞』,部落解放研究所の『部落』,大阪部落解放研究所『部落解放』など一通りそろっている。また,荊冠友の会『荊冠の友』,狭山裁判取消し・無実の石川一雄即時釈放要求中央闘争委員会の『狭山差別裁判』などもある。部落解放運動に関する逐次刊行物文献は,研究所においてはやや手薄となっている。それは,他に専門の研究所や機関があり,公共の図書館でも文献を収集し,閲覧サービスが可能となっているからである。

 消費組合や協同組合運動の機関紙誌については,研究所は戦前以来,重点的に収集に努めてきた。戦後についても,日本協同組合同盟機関紙『日本協同組合新聞』が現物・復刻版いずれもあり,日本生活協同組合連合会『生協運動』,全国消費者団体連合会『消費者運動』,全国商工団体連合会『全商連資料』,日本消費者連盟『消費者レポート』などがある。さらに,必ずしも運動体の機関紙ではないが,日本消費者新聞社の『ニッポン消費者』などもある。

 研究所所蔵の消費組合運動刊行物で注目されるのは,灘神戸生協に関するものであろう。この灘生協に関しては1936年の灘購買組合時代のものから,神戸生協に関してはl923年の神戸購買組合時代のものから所蔵し,戦後も引き続き収集に努めている。また灘生活協同組合月報『協同』(1950年2月創刊),神戸生活協同組合月報『新家庭』(1947年1月創刊)や,合併後の灘神戸生活協同組合月報『協同』(1962年4月創刊)も揃っている。

 アナーキズム運動・研究団体の文献では,日本アナーキズム連盟機関紙『平民新聞』『クロハタ』『自由連合』や,リベルテール会『リベルテール』,日本アナーキズム研究センター『リベーロ』『アナキズム』などを収めている。黒色戦線社の『平民新聞(戦後版)』は,これまで一部の関係者やコレクターが所蔵しているだけで,稀覯紙の扱いを受けていた。近年,『平民新聞』をはじめ,アナキスト連盟『自由共産新聞』,アナキストクラブ『日本アナキストクラブ』など,アナーキズム運動関係文献の復刻も盛んになされている。研究所にはこれらの復刻版もある。

 青年・学生運動団体の機関紙誌も多い。まず,全日本学生自治会総連合(全学連)の機関紙『青年の旗』,さらに『学生新聞』『祖国と学問のために』のほか,日本共産青年同盟(青共)『青年の旗』,民主主義青年会議『民主主義青年』,日本民主青年同盟『民主青年新聞』,日本社会主義青年同盟『社青同』『青年の夢』,日本青年団協議会『日青ニュース』『日本青年団新聞』,日本青年会議『青年戦線』,全日本学生新聞連盟『連盟通信』,日本戦没学生記念会『わだつみのこえ』など,60余のタイトルが所蔵されている。

 特筆されるのは『民主主義青年』であり,戦後日本における青年・学生運動の原点に位置している。同紙は,のち『青年新聞』と改題され,1947年までつづいたが,残念ながら欠号が多い。なお,青共は,民主主義学生同盟と合流し,1949年3月に『民主青年』を創刊,のち51年5月5日に日本民主青年団となったが,この『民主青年』についても欠号が多い。

 文化・学術団体関係の機関紙誌についても紹介しておこう。1946年1月12日,戦時中の抑圧から解放された各分野の進歩的な学者・研究者が結集し,民主主義科学の精神を確立し,科学者の共同研究を通じて国民の福祉と世界平和に寄与することを目的に民主主義科学者協会(民科)が結成された。会員は1万人近くに及んだといわれる。民科は,戦後初期における日本の学術研究をリードし,『民科学術通信』『科学文化ニュース』『科学者』『国民の科学』『民主主義科学』『社会科学』など機関紙誌を発行したが,これらはすべて所蔵してある。欠号もない。

 民科と並び,1946年2月結成の日本民主主義文化連盟(文連)の刊行物もほとんど揃っている。まず,機関紙として『週刊文化タイムス』があり,他に所蔵しているところがなく貴重である。さらに,理論誌『文化革命』や,大衆的啓蒙誌『民衆の旗』『民衆の友』,婦人部協議会の『働く婦人』などがある。このほか,文化学術団体の機関紙誌として,前進座の『月刊前進座』,勤労者音楽協議会『新音楽』『ひびき』,国民文化会議の『国民文化』などおよそ50タイトルほど収集している。学術・文化団体そのものではないが,労働組合の文化雑誌,例えば国鉄労組『国鉄文化』や全逓信労組の『全逓』もある。

 救援運動団体関係では,労農運動救援会(日本労農救援会)の『救援新聞』や,日本国民救援会(東京都本部)の『救援新聞』は,その前身の『全法協タイムス』『人権民報』『助けあい新聞』とともに揃っている。ただし自由人権協会の『人権新聞』と,自由法曹団『自由法曹団ニュース』『団報』『人権のために』は,所蔵しているものの,欠号が多いため現在その補充につとめている。治安維持法犠牲者・国家賠償要求同盟の『会報』『不屈』,青年アジア研究会『金芝河を殺すな1万人署名ニュース』,兵士を救援する会『反軍通信』,韓国民主化支援国際連帯『ともに』などもある。

 なお,裁判闘争関係では,松川事件対策協議会『松川通信』,白鳥事件中央対策協議会『白鳥事件』『白鳥事件公判ニュース』,メーデー事件対策委員会『メーデー事件公判ニュース』(のち『人民の広場』),破防法裁判闘争を支える会事務局『破防法裁判ニュース』など,1950年代の裁判闘争関係の機関紙誌については現在では貴重な逐次資料となっている。また,最近のものでは横浜事件再審裁判を支援する会の『解放』などがある。

 救援運動や裁判闘争とは直接に関係しないが,かつての社会運動家を顕彰し記録する旧友団体の機関紙誌を収集しているのも,当研究所の逐次資料の一つの特徴となっている。渡政会(会長丹野セツ)『渡政会会報』,徳田球一を偲ぶ会『徳田球一を偲ぶ会ニュース』,大杉栄らの墓前祭実行委員会『沓谷だより』,さらに東京解放運動旧友会『風雪』や石川県社会運動旧友会『会報』などがあり,今後も収集を続けていきたいと思う。

 医療・健康運動では,民医連の『民医連医療』や『民医連資料』,それに日生協医療部会『医療生協運動』,日本患者同盟『日患情報』(のち『療養新聞』)なども集めている。

 国際友好・連帯運動についても,当研究所はかなりのタイトルの機関紙誌を収集している。日中国交回復国民会議『日中国交回復ニュース』,日中友好協会『日中友好通信』,日中・日ソ国交回復国民会議『日中・日ソ国交回復ニュース』,日本と朝鮮の労働者交流連帯会議『日朝レポート』のほか,アジア連帯委員会『アジア連帯』,アジア・アフリカ連帯委員会『アジア・アフリカ』などをあげておきたい。

 社会保障・生活擁護運動では,生活相談全国事務局『生活通信』,全国労働組合生活対策協議会『生活対策ニュース』,全生連『生活と健康を守る新聞』,日本患者同盟『療養新聞』など25タイトルを所蔵している。在華同胞帰国協力会『帰国者の友』などは珍しい部類に入るだろう。

 公害反対運動の刊行物も近年しだいに増える傾向にある。ここでは水俣病を告発する会『告発』,スモン被害者の恒久対策と薬害根絶をめざす全国実行委員会『スモン全国実行委員会ニュース』などをあげておこう。

 領土返還運動では,沖縄返還要求国民運動連絡会『沖縄ニュース』,沖縄・小笠原返還同盟『沖縄・小笠原新聞』,沖縄問題解決国民運動連絡会『沖縄連』,北方領土問題対策協議会『季刊北方領土』などがある。

 このほか,特筆される社会運動団体の機関紙として経済復興会議の機関紙をあげておきたい。経済復興会議(議長鈴木茂三郎)は,1947年2月6日,経済同友会・日産協など経済団体や総同盟・産別会議など全国の主要な労資団体を集めて結成され,事実上,片山・芦田内閣における経済復興政策の実践母体となっていた。経済復興会議は,機関紙『経済復興』『経済復興会議会報』や,機関誌の『資料旬報』『調査資料』を発行した。これらの機関紙誌は,戦後初期における経済復興運動の実態や特質を分析するうえで基本資料となっており,他の学術機関には所蔵されていない。当研究所では,向坂文庫所蔵のものと合わせると,バックナンバーは完全にそろっている。なお,これらの機関紙誌は,劣化が激しく,現物での閲覧に耐え得ないので,近々のうちに復刻出版に協力して広く資料を公開したいと思っている。

(吉田健二)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より