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所蔵図書・資料の紹介

III  文 庫


1 協調会文庫

(2) 和  書

 協調会文庫の和書は,約2万3,500冊である。それは,日本十進分類表による分類にしたがえば,総記からはじまり,ほとんどの領域にまたがっている。このうち,蔵書として分量が多く内容も充実しているのは,社会科学部門,社会・労働問題および産業に関する部門である。

 a 社会科学部門  まず社会科学部門は,協調会文庫の和書の全体の4割近くを占めている。その中でも分類上,経済,財政,統計に関する図書が最も多い。社会科学一般では,改造社版のマルクス・エンゲルス全集をはじめとして,とくに社会主義・共産主義思想や運動に関する図書が多い。また,旧ソ連に関する調査研究書も目につく。たとえば,南満州鉄道株式会社編『労農露国研究叢書』全6巻(1925〜26年)などが,その例である。

 社会科学部門のうち,とくに「経済」は,経済学,経済事情,経済政策,人口,移植民,企業,経営,消費組合,経営(労務)管理,会計,貨幣,物価,恐慌,金融,銀行,保険といった「目」にまで分類されるほど所蔵量が多い。

 まず,「経済学」であるが,翻訳・紹介を含む経済理論,経済(学説)史などが中心である。たとえば,高畠素之の『資本論』全訳や河上肇・宮川實訳『資本論』第1巻上冊(1931年),高橋誠一郎『重商主義経済説研究』(1932年),住谷悦治『日本経済学史の一齣』(1934年)などが挙げられる。

 「経営(労務)管理」について見ると,人事・労務管理一般の図書のほか,職工訓練や職長養成のあり方などにふれた実務書もある。また大内経雄『職長制度』(1949年)など,戦後のものも若干ながら所蔵されている。いずれにせよ,「経済」の図書の収集範囲は多岐にわたっている。その中には,各国とくに先進資本主義諸国の経済事情に関するもの,植民地経済や戦時経済・統制に関するものも多く含まれている。

 さらに財政,統計書も多い。「財政」では,明治財政史編纂会『明治財政史』全15巻(1926〜28年),大蔵省編纂,大内兵衞・土屋喬校による『明治前期財政経済史料集成』全21巻(1931〜36年)など,きわめて大部なものもある。統計書では,『日本帝国統計年鑑』が第1回の1882(明治15)年から第58回の1939(昭和14)年まで,『国勢調査』も1920(大正9)年から1935(昭和10)年まで,それぞれ揃っている。さらに,東京市や各県統計書など地方統計もよく集められている。

 s 社会・労働問題  社会・労働問題に分類される和書も社会科学についで多く,和書全体の4分の1近くに達する。とりわけ,社会政策,社会保障,生活・消費者問題,労働経済,労働問題が中心であるが,なかでも労働経済,労働問題に関する蔵書が最も多い。分類表の「目」の内容を挙げると,労働政策,労働法,雇用,失業,労働者保護,婦人年少労働,賃金,労働条件,労使関係,労使協調,労働運動,労働組合,労働者教育,各種の労働者,労働科学などにまたがっている。

 労働問題,労働運動に関する図書のうち,たとえば,野田律太『労働運動実戦記』(1936年),協調会『本邦労働運動調査報告』全7冊(1922〜24年),富呂波巌太『再建後の左翼労働組合運動』(1931年)などは,今日では入手困難なものである。

 また,社会・労働問題の中には,中央官庁や地方などによる労働者実態や労働諸条件に関する調査報告,都市の貧困者に関する実態調査報告,社会事業に関する調査などが,実によく集められている。すでに復刻も出されているが,農商務省『職工事情』(1903年)の原本も所蔵されている。同じく農商務省『工場監督年報』も,1916(大正5)年の第1回を除いて揃っている。また,『労働統計実地報告書』の各府県版,協調会自身の行った調査パンフレットなども貴重である。

 全体として,大正中期以降,すなわち第一次大戦後の雇用・失業実態,職業紹介や労働者の状態,都市生活者,労働実態などを知る上で,きわめて有益,貴重な蔵書となっている。順不同で例を挙げると,大阪市社会部『工場労働雇傭関係』(1923年),東京市社会局『浮浪者及び残食物に関する調査』(1923年),同『内職に関する調査』(1933年),失業問題研究所『失業問題研究叢書』全4冊(解放社,1930年),失業労働者同盟『失業問題叢書』全4冊(1927〜30年)などである。

 また,社会問題に関する図書の一部として,婦人関係の図書も多いことが指摘できる。特に,大正中期の「母性保護論争」に関連して,平塚らいてう『婦人と子供の権利』(1919年),山川菊栄『現代生活と婦人』(1919年)などが所蔵されている。

 d 産業問題  産業に関する図書も多く,和書全体の2割を占める。すなわち工鉱業,建築,農(林水産)業,農業経済,商業,交通運輸,通信など,あらゆる産業分野に及んでいる。特に工鉱業,農業に関するものが多い。また,産業実態に関する調査研究書が,官庁や会社,個人のものなどきわめて丹念かつ系統的に集められている。たとえば,滝本誠一・向井鹿松『日本産業史料大系』全12巻(1926〜27年),日本工学会・啓明会共著『明治工業史』全10巻(1928〜31年)などは,大部なものである。また,八幡製鉄所のパンフレット『製鉄所資料』全3冊(1927〜32年)は,職工に関する資料として有益である。農業,農民,農家経済についての調査なども,きわめて多い。特に,協調会農村課による諸調査が,1926年から1935年頃にかけて行われており,重要な資料である。そうした産業に関する図書は,戦前の産業研究にとって今日でも有益なものが多い。

(早川征一郎)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より


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