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所蔵図書・資料の紹介

I  所蔵図書・資料の概要


2.【定期刊行物と資料】

 当研究所が所蔵する文献で,ほかの図書館や研究所では容易に見られないものは,図書よりも定期(逐次)刊行物や〈資料〉の方に多く含まれている。戦前・戦後の日本の労働運動,社会運動関係の資料が中心だが,その基礎となったのは,『日本労働年鑑』編纂のために収集された資料である。『日本労働年鑑』は,研究所創立の翌年,1920年に第I集が刊行され,戦時中と戦争直後の中断はあるが,現在まで80年間,日本の労働運動を記録し続けてきた。年鑑という性格のため包括的・網羅的な資料収集が必要であり,また毎年収集を必要とするため資料は系統的なものとなっている。特に諸団体の機関紙誌は,年鑑編集のための基礎資料として比較的よく収集され,いわゆる「三号雑誌」の類いまで集まっている。

 定期刊行物や資料を収集・保存する上で重要な意味をもったのは,研究所が1923(大正12)年に図書室とは別に資料室を設けたことである。資料室主任となった後藤貞治は,その当時ではまだ紙屑としか考えられていなかった社会・労働運動関係の原資料を意識的に収集し,保存した。たとえば,1928年に第1回の普選による総選挙が行われた際には,無産政党各派を中心に選挙ポスターを収集している。新聞紙に赤インクでただ名前を書いただけのものから,柳瀬正夢が描いた大山郁夫のポスターのように良く知られたものまで大量に集められている。また,メーデーやプロレタリア演劇のポスター・チラシなども数多く残されている。資料室はまた,労働組合や農民組合,無産政党の所蔵資料を一括して購入し,その保存につとめた。どんなビラでも1枚5銭で買ったから,選挙の時など,組合本部の資料を研究所に売却して運動資金にしたこともあるという。予審調書など裁判関係の記録も,被告側が謄写費用を捻出するために資料室に持ち込まれた。もちろん,大原社研に渡しておけば貴重な記録が保存されるということで運び込まれた例も少なくない。

 資料のうち,各県の自治体史編纂など,一般にもっともよく利用されているのは,こうして集められた労働組合,農民組合,無産政党など社会運動諸団体関係の原資料類である。とくに日本労農党系のいわゆる「中間派」の労働組合・農民組合や政党のものは,本部所蔵資料をそのまま受け入れており,貴重なものである。内容は大会の議案書,本部から支部への通達,支部から本部への報告,争議ビラなど多様である。

 また,他の図書館,研究所にないコレクションとして貴重なものは,財団法人協調会が争議調停などの業務上の必要から日常的に収集していた資料である。これは協調会労働課が労働組合や無産政党の全国大会に係員を派遣して速記録を作成し,あるいは内務省や各県の警察部から,労働組合や争議に関する情報が送られてきたものを製本したもので,運動の側とは違った角度から集めた情報が大量に残されている。

 このほかにも,研究所独自のプロジェクトによって集められた資料,たとえば米騒動関係資料,労働組合調査資料,反社会主義団体調査の資料,月島家計調査の家計簿などはユニークな収集といえよう。

 なお,近年になって利用が激増しているものに,先にあげたポスターや写真などの「画像資料」がある。さらに適当な名称がないので,所内では「現物」と呼んでいる資料にも,高野房太郎が経営した消費組合「共栄社」の看板や,印刷工組合「信友会」や全日本鉱夫総連合会の旗など珍しいものが少なくない。

 戦後は,労働運動,社会運動が戦前とは比較にならない規模に達したため,戦前のような包括的な収集は困難になった。それでも,『日本労働年鑑』編集のために,労働組合は単産レベルまで,そのほか社会主義政党など諸団体の機関紙誌や大会記録を網羅的・系統的に収集してきたし,今も続けている。

 戦前の労働組合や農民組合の本部所蔵資料に匹敵するというより,質量的にそれらを超えているのは産別会議本部旧蔵資料と日本農民組合および全日本農民組合本部旧蔵の資料である。これとは比べられないが,総評や同盟,及び連合,全労連の資料もかなりよく揃っている。また,単位組合についても,国鉄労働組合本部の所蔵資料を一括して受け入れたほか,産別時代の東芝労連,全造船三菱長崎造船所分会などの資料も戦後労働組合運動の系統的な記録として重要である。また,これまで当研究所のほかには社会運動関係の資料を受け入れる機関が少なかったこともあって,労働運動だけでなく,松川事件,メーデー事件をはじめ,レッドパージ関係,スモン訴訟など裁判関係の資料も戦後の資料ではかなりの比重を占めている。

(二村一夫・若杉隆志)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より


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